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ステータス、お前は何なんだ

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町の人達が怖がるネッロをどうするのか決め兼ねた千秋は、パウロの誘いを断ってギルドの受付に話しかけた。が、結局パウロは後ろから付いて来てくれている。

「あの、すみません」

「は、はい! どうしましたか? 」

「宿を取りたいのですが、その前にギルド長に挨拶をしたいんです。取り次いで頂けますか? 」

「少々お待ち下さい! 」

慌てて席を立つ受付嬢。その様子をじっと見ていたパウロは、徐に口を開いた。

「やっぱり、嬢ちゃんは貴族の出なんだろうか? 」

「え? 」

「いや、話し方が丁寧だし、マジックバッグを持っているし……同じぐらい高価なジーパンも履いている」

「高価なジーパン……」

転生人がいるこの世界では、デニムも広く知られているのだろう。しかし、デニムが高価とは。

「因みに、マジックバッグはいくらぐらいですか? 」

「大体、その大きさで金貨1枚か。ジーパンは銀貨5枚ってところか? 」

(ちょっとお高いバッグとデニム……ぐらいか。マジックバッグは大きさによるかな? )

「私口悪いですよ? 」

ふふふと千秋が笑っていると、受付嬢が戻って来た。

「お待たせ致しました。お会いになるそうですので、2階へどうぞ」

「ありがとうございます」

千秋はお礼を言って、パウロと共に2階へ向かった。



✴︎



ギルド長に挨拶に行くと、やはり詳しい話は明日という事になった。そのままパウロに安宿を紹介して貰った千秋は、子供が1人なのを心配する宿の女将に隠れていたネッロを見せて気絶させたりとやっぱりスムーズに事は運ばなかったが、部屋を確保する事は出来た。世話になったお礼にと、桃に似た果実をパウロに渡すと、この近辺では取れない貴重な実らしく、大変喜ばれた。

「結構疲れた……ステータスを見ようかな」

部屋に着くなり、ベッドにごろ寝するネッロ。唯一空いたスペースにちょこんと座ると、ネッロを背凭れにして、千秋はステータスと念じた。

清水 千秋   人族(仮)

レベル15→19 /999
体力340→480 /150000
魔力1800→2100 /300000
力7→12 /100
知力12→15 /100
俊敏5→8 /100
技術力25→30 /1000
(火魔法?? 水魔法D 土魔法?? 雷魔法?? 風魔法?? 空間魔法E 光魔法?? 闇魔法?? 時魔法C 剣術E 棍棒術E )
幸運3→4 /50

スキル 鑑定A 危機回避B 自動翻訳S 擬態A 身体強化E

加護 猫(科)の盟友×8 森のネッロの従僕×1 ??? ???

(なんか増えてる……)

冒険者登録の時は擬態ステータスが表示された事により、パウロに引っ張られ体力の表記が上がっていた千秋。しかし、実際も上がっているし何より、

(時魔法が新しく誕生したんだけど。これって予め定められた力じゃないの? そもそも時魔法って何……もしかして回復魔法か! 新たに追加とかある?! いや、無ければ回復が使えてない訳だけども! 身体強化は……納得)  

などと突っ込みが止まらない。時魔法には疑問も残るが、ここまで来るのにネッロの手綱をしっかり握りしめていた千秋。身体強化だけは秒で納得した。

そうしている内にネッロの温もりに眠くなる。狭いベッドで僅かな隙間に体を伸ばすと、そのまま眠りに落ちた。




✴︎




遠巻きに騒がれていた千秋が、他の冒険者に絡まれなかったのは勿論ネッロありきだが、パウロのおかげでもあった。パウロは銀級間近の銅級冒険者である。そこそこの実績があり、ギルド長からも町の人からも信頼されている。そんなパウロが側に居ず、か弱い(見た目の)少女が1人でいるとしたら、世間はどうするだろうか?

大抵は心配したり保護したりするだろう。面倒事を避けて敢えて見て見ぬ振りをする者もいるかも知れない。だが、それらに紛れて全く違う動きをする者がいる。

誰もが寝静まる深夜。ギルドと提携なだけあって、20名程泊まれる中規模ながらも小さくはない宿の建物内に煙が充満していた。その香りは『眠り草の香』。建物や洞窟などに住み着いた魔獣を退治する為に用いられる香だが、今焚かれているのはそれらと比べようがない程に濃い。

そうして、焚かれていた香の煙が色を無くした頃、ぎっぎっと床を鳴らして男が千秋の部屋まで近付いていた。手には縄、もう片方にはナイフを持っている。


じっと部屋の様子を伺っていた男だったが、暫くしてゆっくりと部屋の扉を開けた。

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