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二章・魔界ファーステリア編
空に咲く紅き華と大地に立つ蒼き壁
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「久々に我が本気を出す時が来たようだな!」
拘束していた鎖を強引に破ったリィールはゆらりとその身体を動かし、この争いを楽しんでいるかの如く笑みを浮かべてドラン達を睨み、紅く揺れる瞳の奥には殺意が満ちていました。
と、その同時に鋭くとても切れ味が良さそうな紅色の二本の刃〈終焉の二刃〉を軽く、しかしぐっと力強く握り直しドランに急接近して右肩をズブッと刃で貫き、そのまま生々しい音を立て彼の胴体から右肩を切り離しました。
流石に冷静沈着なドランでもその激痛には耐えることができず、耳に残るような悲鳴とともにぼたぼたと止まることを知らない溢れる血を止めようと、左手を右肩に添えて倒れ込んでしまいます。
「本当に血は裏切らぬ。我が思い通りに“華”が咲く……さぁもっと我を楽しませろ!」
一本の刃にこびりついた血をぺろっと舐めとると、ドランの息の根を止めようとしてか彼の目の前で高く一本の刃を振り上げます。
その様子を見たドランは「ここまでですか」と小さく呟き、そっと目を瞑ったその刹那。
ビシッ!!
っと氷にヒビが入ったような音が大きくなり、目を開けると目の前には分厚く、簡単には崩せそうもない氷の壁ができあがっていました。更には暴走しているリィールがその氷の中に閉じ込められています。
勿論それはドランが唱えて作った物ではなく、またスクルドの物でもありません。では一体だれがやったのか。それはただただドラン達の激しい戦いを見ていた陸斗達が一番わかっていることでした。
「の、乃亜!?」
「目が覚めたらリィールさんいないし、外が騒がしいなってみてみたら……一体どういう状況なんですか?とりあえずリィールさんの動きは止めれましたけど……」
そう、急に現れた氷の壁は乃亜の中にいるノルンという一人の魔王の力によるものなのです。ただ使用するにはやはり膨大な魔力が消費されるのか、それとも使用する時の副作用なのか艶のある髪の一部が凍りついており、身体から冷気が溢れ出ていました。
「なるほどな……とりあえず詳しい話は後で聞くとしてドラン!今のうちだ!」
と、その言葉が届いたのか痛みを耐えながら立つと、あろう事か一部分だけリィールの素肌を氷から出すため、氷に捕われた彼女の身を焦がさないよう自らの炎である程度溶かし始めます。
その後隠し持っていた注射を、薄くなった氷を砕くようにして思い切り彼女の身に刺し、中に入っている透明の液体を彼女の中に流し込みました。
しかし遠くにいる陸斗達には何をしているかなどわかるはずもありません。
そして、一滴残らず注射の中身を彼女の中へ流し込み終わったドランはスクルドと共に陸斗達の達の方へと戻ってきました。
ただ、その間もドランの肩から濁りけの無い赤く煌めく血が止まることを知らずに流れ続けています。なのにドランは先程の悲鳴や痛がっている様子は演技だと言わせんばかりに冷静な表情で。
「これで一安心でございます。乃亜殿、本当に感謝致します」
「い、いえいえ。それよりも何がどうなってこうなったんですか?それにさっきの注射とその腕は……?」
「……そうでございますね、丁度いいのでお話致します。リィール様は大量の血を見ると暴走してしまうのです。それも魔力暴走とは全く別のもの。それを抑えるために暴走した時に薬を打たなければならないのです。あとこの程度なら痛いですが、平気でこざいます。少しグロいかもしれませんが……」
と、刹那にしてゴキゴキゴキっと骨が絶たれ、ブチブチブチと肉が裂かれ、ブシャッっとされども少量の血が切断面から出るとまるでトカゲのしっぽのようにグググッと腕が生え始めました。
もはやその様子は見るに堪えないほど痛々しく、こういう怖いものが苦手な乃亜はぎゅっと目を瞑ってしまうほどグロいもの。
そして、彼が話したリィールの事はまるで以前にも体験したことのあるような言い方でした。
いや、事実、陸斗達が知らないだけでリィールが暴走し抑え込んだことは多々あること。ただ今日この日だけいつもより強敵となり、苦戦を強いられたのです。
しかしそれもそのはず、暴走する直前、乃亜の中に秘めた魔王を説得するため乃亜の魔力を取り込んでいたのですから。
「あ、乃亜殿、氷を解いてくださいますか?もうそろそろ薬が効き始める頃だと思いますので」
「あ、それがですね……咄嗟に止めて!ってリィールさん見た時に思って気づいたらできたので……あ、でもノルンちゃんに聞いてみますね!」
「ノルンって誰?」
「あ、えっと……私に力を貸してくれる魔王……ですかね?リィールさんが解放してくれて、ついさっきしりとりに勝ったのでノルンちゃんの力を使わせてもらってるんです」
「……ごめん、よくわからない……」
「ああ、俺も……いや多分この場にいる乃亜以外全員わからないと思う」
「あ、丁度ノルンちゃんが「あの氷は対象者の魔力を吸い上げて凍るものだから放っておけば時期に消える」と言ってます。なので溶けるまで詳しくお話しますね?」
彼女はそう言うとパリッと凍りついた髪を手ぐしで解しつつ、その場にちょこんと座り、気絶する直前から話し出し始めます。
拘束していた鎖を強引に破ったリィールはゆらりとその身体を動かし、この争いを楽しんでいるかの如く笑みを浮かべてドラン達を睨み、紅く揺れる瞳の奥には殺意が満ちていました。
と、その同時に鋭くとても切れ味が良さそうな紅色の二本の刃〈終焉の二刃〉を軽く、しかしぐっと力強く握り直しドランに急接近して右肩をズブッと刃で貫き、そのまま生々しい音を立て彼の胴体から右肩を切り離しました。
流石に冷静沈着なドランでもその激痛には耐えることができず、耳に残るような悲鳴とともにぼたぼたと止まることを知らない溢れる血を止めようと、左手を右肩に添えて倒れ込んでしまいます。
「本当に血は裏切らぬ。我が思い通りに“華”が咲く……さぁもっと我を楽しませろ!」
一本の刃にこびりついた血をぺろっと舐めとると、ドランの息の根を止めようとしてか彼の目の前で高く一本の刃を振り上げます。
その様子を見たドランは「ここまでですか」と小さく呟き、そっと目を瞑ったその刹那。
ビシッ!!
っと氷にヒビが入ったような音が大きくなり、目を開けると目の前には分厚く、簡単には崩せそうもない氷の壁ができあがっていました。更には暴走しているリィールがその氷の中に閉じ込められています。
勿論それはドランが唱えて作った物ではなく、またスクルドの物でもありません。では一体だれがやったのか。それはただただドラン達の激しい戦いを見ていた陸斗達が一番わかっていることでした。
「の、乃亜!?」
「目が覚めたらリィールさんいないし、外が騒がしいなってみてみたら……一体どういう状況なんですか?とりあえずリィールさんの動きは止めれましたけど……」
そう、急に現れた氷の壁は乃亜の中にいるノルンという一人の魔王の力によるものなのです。ただ使用するにはやはり膨大な魔力が消費されるのか、それとも使用する時の副作用なのか艶のある髪の一部が凍りついており、身体から冷気が溢れ出ていました。
「なるほどな……とりあえず詳しい話は後で聞くとしてドラン!今のうちだ!」
と、その言葉が届いたのか痛みを耐えながら立つと、あろう事か一部分だけリィールの素肌を氷から出すため、氷に捕われた彼女の身を焦がさないよう自らの炎である程度溶かし始めます。
その後隠し持っていた注射を、薄くなった氷を砕くようにして思い切り彼女の身に刺し、中に入っている透明の液体を彼女の中に流し込みました。
しかし遠くにいる陸斗達には何をしているかなどわかるはずもありません。
そして、一滴残らず注射の中身を彼女の中へ流し込み終わったドランはスクルドと共に陸斗達の達の方へと戻ってきました。
ただ、その間もドランの肩から濁りけの無い赤く煌めく血が止まることを知らずに流れ続けています。なのにドランは先程の悲鳴や痛がっている様子は演技だと言わせんばかりに冷静な表情で。
「これで一安心でございます。乃亜殿、本当に感謝致します」
「い、いえいえ。それよりも何がどうなってこうなったんですか?それにさっきの注射とその腕は……?」
「……そうでございますね、丁度いいのでお話致します。リィール様は大量の血を見ると暴走してしまうのです。それも魔力暴走とは全く別のもの。それを抑えるために暴走した時に薬を打たなければならないのです。あとこの程度なら痛いですが、平気でこざいます。少しグロいかもしれませんが……」
と、刹那にしてゴキゴキゴキっと骨が絶たれ、ブチブチブチと肉が裂かれ、ブシャッっとされども少量の血が切断面から出るとまるでトカゲのしっぽのようにグググッと腕が生え始めました。
もはやその様子は見るに堪えないほど痛々しく、こういう怖いものが苦手な乃亜はぎゅっと目を瞑ってしまうほどグロいもの。
そして、彼が話したリィールの事はまるで以前にも体験したことのあるような言い方でした。
いや、事実、陸斗達が知らないだけでリィールが暴走し抑え込んだことは多々あること。ただ今日この日だけいつもより強敵となり、苦戦を強いられたのです。
しかしそれもそのはず、暴走する直前、乃亜の中に秘めた魔王を説得するため乃亜の魔力を取り込んでいたのですから。
「あ、乃亜殿、氷を解いてくださいますか?もうそろそろ薬が効き始める頃だと思いますので」
「あ、それがですね……咄嗟に止めて!ってリィールさん見た時に思って気づいたらできたので……あ、でもノルンちゃんに聞いてみますね!」
「ノルンって誰?」
「あ、えっと……私に力を貸してくれる魔王……ですかね?リィールさんが解放してくれて、ついさっきしりとりに勝ったのでノルンちゃんの力を使わせてもらってるんです」
「……ごめん、よくわからない……」
「ああ、俺も……いや多分この場にいる乃亜以外全員わからないと思う」
「あ、丁度ノルンちゃんが「あの氷は対象者の魔力を吸い上げて凍るものだから放っておけば時期に消える」と言ってます。なので溶けるまで詳しくお話しますね?」
彼女はそう言うとパリッと凍りついた髪を手ぐしで解しつつ、その場にちょこんと座り、気絶する直前から話し出し始めます。
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