6 / 15
Re:Memories of summer
常夏の恋-Re:Memories of Summer-⑤
しおりを挟む
「……ところで先輩。来週の花火大会の日……空いてますか?」
「来週?まぁ……空いてなくはないけど」
「なら一緒に見ませんか!?」
途中清宮は透也の顔を見ながら問いかける。
その問いかけは来週の花火大会の日は空いているかというもの。だが、その日は和香羽と約束をしている。しかしながら先程嘘をついてしまったためか、彼は再び嘘をついてしまう。
「お願いします!」
「えぇ……」
「ダメ……ですか?」
「いや、ダメとは言ってないが……」
彼女はどうしても一緒に見たいらしく、頭を下げてお願いし始める。このまま放っておけば頭を下げるに留まらず土下座もしそうな勢いだ。
流石にここまでして頼まれたら断るのに抵抗してしまい、和香羽と約束を交わしているにも関わらず、清宮と一緒に花火を見る約束を交わすことに。
「ありがとうございます!」
何度も頭を下げるため、頭を下げることをやめさせると今度は嬉しさのあまり自然と笑顔になっていた。その無邪気な笑顔を見ると再び罪悪感に襲われる彼だが、嘘だと言った後の清宮の悲しい顔が目に浮かび、結局言えなくなってしまう。
「あ、もう夜遅いし送ってくよ」
「え、いいんですか?」
「まぁ、こんな夜遅くに女一人が出歩いてたら危険だからな」
今は月明かりと街灯しか道を照らさない夜。流石に夜道を女性ひとりで歩かせるのは色々と危険だと心配し、清宮を送る。
清宮宅は、以前清宮が風邪を引き、見舞いに行ったことがあるため場所を把握済み。森からさほど離れていないが、田舎の町といえど舐めてはいけない。田舎だって夜だからこそ外をうろつく不良だっているのだから。
故に彼は彼女を送ることにしたのである。
ーー十分後、よく見るような二階建ての家へとたどり着く。その家は派手でもなくされども地味でも無い少しオシャレな家。さらに築五十年とは思えない程綺麗な家だ。しかしまだ二十時だと言うのに家の照明は付いていない。聞けば親が帰ってくるのは一時間後だという。
「なんか送ってもらってありがとうございます」
「どういたしまして。それじゃあな」
「あ、はい!おやすみなさい!」
まだそんな時間ではないが、そう言い放ち家へと戻っていった。
「さてと俺も帰るか」
彼も自宅へと帰宅すると、やることも無いためかそのまま眠りに……付けなかった。
いや、正しくは寝すぎて頭が冴えてしまい夢の中に向かうことができなかった。というのが正しいだろう。
そうなってしまうと暫くは眠りにつく事は出来ない。彼は仕方なく風呂を焚き、勉学に努め、夜食を食べる。と寝ずに普通に生活するのだった。
ーーそして朝。
いつも通りカンカンに晴れ暑い日……ではなくかなり強い雨が降っていた。テレビ予報によれば一日雨。
「ってまじかよ……」
しかし風も強く、雨を窓へと打ち付け、もはや台風並の天気。窓から外を覗けば近くの川が氾濫しかけているのがわかる程、かなりの量が降っているのが見てとれる。
また湿度により平日よりも暑さは感じ取れるが、じめっとしてるためいつもより居心地が悪く、普段外に出ない透也もさらに出たくないと思わせた。
そんな中、突然彼のの携帯の着信音ーーデフォルトの為か、ヨハネのカノンであるーーが雨の音に紛れつつも鳴り響いた。
ぱっとみると画面には『清宮』と表示さている。一体こんな天気の悪い日になんなのか。短いため息を吐きつつも電話を拒否する理由は無いため“通話”のボタンに触れる。
「もしもし?」
『あ、繋がったー!』
「初めて携帯電話持って電話かける子供じゃねぇんだから……それでなんか用か?」
『先輩!あそ……じゃなくて勉強教わりに行ってもいいですか!』
「いや、外見ろよ。てか清宮お前遊びに来たいだけだろ」
『なんでわかったんですか!?天才ですか!?』
相変わらず元気がいい清宮だが、実は成績が少し悪い。彼がある程度教えているためなんとか赤点は免れてはいるが、もし教えていなければ赤点を連続して取ってしまうほどだ。
それに勉強を教えてくださいと言われ、断ったことがあるが何故かその場で泣かれてしまったと言う過去がある。
しかし、今は状況が状況だ。こんな天気の荒れた日に外に出ようなど、戦場に死に行く兵士同然。
なのに。
『じゃあ今から向かいますね!』
外の天気など知らんとばかりに嬉しそうな声で、かつ頭に残るような透き通った声で言い清宮は電話を切った。
「来週?まぁ……空いてなくはないけど」
「なら一緒に見ませんか!?」
途中清宮は透也の顔を見ながら問いかける。
その問いかけは来週の花火大会の日は空いているかというもの。だが、その日は和香羽と約束をしている。しかしながら先程嘘をついてしまったためか、彼は再び嘘をついてしまう。
「お願いします!」
「えぇ……」
「ダメ……ですか?」
「いや、ダメとは言ってないが……」
彼女はどうしても一緒に見たいらしく、頭を下げてお願いし始める。このまま放っておけば頭を下げるに留まらず土下座もしそうな勢いだ。
流石にここまでして頼まれたら断るのに抵抗してしまい、和香羽と約束を交わしているにも関わらず、清宮と一緒に花火を見る約束を交わすことに。
「ありがとうございます!」
何度も頭を下げるため、頭を下げることをやめさせると今度は嬉しさのあまり自然と笑顔になっていた。その無邪気な笑顔を見ると再び罪悪感に襲われる彼だが、嘘だと言った後の清宮の悲しい顔が目に浮かび、結局言えなくなってしまう。
「あ、もう夜遅いし送ってくよ」
「え、いいんですか?」
「まぁ、こんな夜遅くに女一人が出歩いてたら危険だからな」
今は月明かりと街灯しか道を照らさない夜。流石に夜道を女性ひとりで歩かせるのは色々と危険だと心配し、清宮を送る。
清宮宅は、以前清宮が風邪を引き、見舞いに行ったことがあるため場所を把握済み。森からさほど離れていないが、田舎の町といえど舐めてはいけない。田舎だって夜だからこそ外をうろつく不良だっているのだから。
故に彼は彼女を送ることにしたのである。
ーー十分後、よく見るような二階建ての家へとたどり着く。その家は派手でもなくされども地味でも無い少しオシャレな家。さらに築五十年とは思えない程綺麗な家だ。しかしまだ二十時だと言うのに家の照明は付いていない。聞けば親が帰ってくるのは一時間後だという。
「なんか送ってもらってありがとうございます」
「どういたしまして。それじゃあな」
「あ、はい!おやすみなさい!」
まだそんな時間ではないが、そう言い放ち家へと戻っていった。
「さてと俺も帰るか」
彼も自宅へと帰宅すると、やることも無いためかそのまま眠りに……付けなかった。
いや、正しくは寝すぎて頭が冴えてしまい夢の中に向かうことができなかった。というのが正しいだろう。
そうなってしまうと暫くは眠りにつく事は出来ない。彼は仕方なく風呂を焚き、勉学に努め、夜食を食べる。と寝ずに普通に生活するのだった。
ーーそして朝。
いつも通りカンカンに晴れ暑い日……ではなくかなり強い雨が降っていた。テレビ予報によれば一日雨。
「ってまじかよ……」
しかし風も強く、雨を窓へと打ち付け、もはや台風並の天気。窓から外を覗けば近くの川が氾濫しかけているのがわかる程、かなりの量が降っているのが見てとれる。
また湿度により平日よりも暑さは感じ取れるが、じめっとしてるためいつもより居心地が悪く、普段外に出ない透也もさらに出たくないと思わせた。
そんな中、突然彼のの携帯の着信音ーーデフォルトの為か、ヨハネのカノンであるーーが雨の音に紛れつつも鳴り響いた。
ぱっとみると画面には『清宮』と表示さている。一体こんな天気の悪い日になんなのか。短いため息を吐きつつも電話を拒否する理由は無いため“通話”のボタンに触れる。
「もしもし?」
『あ、繋がったー!』
「初めて携帯電話持って電話かける子供じゃねぇんだから……それでなんか用か?」
『先輩!あそ……じゃなくて勉強教わりに行ってもいいですか!』
「いや、外見ろよ。てか清宮お前遊びに来たいだけだろ」
『なんでわかったんですか!?天才ですか!?』
相変わらず元気がいい清宮だが、実は成績が少し悪い。彼がある程度教えているためなんとか赤点は免れてはいるが、もし教えていなければ赤点を連続して取ってしまうほどだ。
それに勉強を教えてくださいと言われ、断ったことがあるが何故かその場で泣かれてしまったと言う過去がある。
しかし、今は状況が状況だ。こんな天気の荒れた日に外に出ようなど、戦場に死に行く兵士同然。
なのに。
『じゃあ今から向かいますね!』
外の天気など知らんとばかりに嬉しそうな声で、かつ頭に残るような透き通った声で言い清宮は電話を切った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
夫の幼馴染が毎晩のように遊びにくる
ヘロディア
恋愛
数年前、主人公は結婚した。夫とは大学時代から知り合いで、五年ほど付き合った後に結婚を決めた。
正直結構ラブラブな方だと思っている。喧嘩の一つや二つはあるけれど、仲直りも早いし、お互いの嫌なところも受け入れられるくらいには愛しているつもりだ。
そう、あの女が私の前に立ちはだかるまでは…
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
愛されていないはずの婚約者に「貴方に愛されることなど望んでいませんわ」と申し上げたら溺愛されました
海咲雪
恋愛
「セレア、もう一度言う。私はセレアを愛している」
「どうやら、私の愛は伝わっていなかったらしい。これからは思う存分セレアを愛でることにしよう」
「他の男を愛することは婚約者の私が一切認めない。君が愛を注いでいいのも愛を注がれていいのも私だけだ」
貴方が愛しているのはあの男爵令嬢でしょう・・・?
何故、私を愛するふりをするのですか?
[登場人物]
セレア・シャルロット・・・伯爵令嬢。ノア・ヴィアーズの婚約者。ノアのことを建前ではなく本当に愛している。
×
ノア・ヴィアーズ・・・王族。セレア・シャルロットの婚約者。
リア・セルナード・・・男爵令嬢。ノア・ヴィアーズと恋仲であると噂が立っている。
アレン・シールベルト・・・伯爵家の一人息子。セレアとは幼い頃から仲が良い友達。実はセレアのことを・・・?
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる