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第二幕・牙を穿て
裏の顔
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「やだなぁー、手を引くのは貴女じゃないですか九尾狐狸。私の獲物を横取りして何がしたいんです?」
獣人の首を強く握りしめたまま、鮮血で濡れた顔でにこりと笑顔を作る。獣人が大好きだと言っていたのは嘘なのかと疑いたくなるほど無慈悲で、恐怖をも感じ取らせる殺気も放っていた。
「……わかったかい。エリスはこういうやつなのさ」
「そんな事よりですよ九尾狐狸。本来の姿を戻してあげたんです。早く私に殺されてください?」
「おやおや、随分と物騒なことを言うようになったじゃないか」
「ってちょっと待ってください!エリスさん、九尾さんの本来の姿を戻してあげたってどういうこと……ですか」
悲惨な状況に彼女達の脳裏に、子供の頃に見た母親が処刑されている所がチラつき、震えが止まらなくなる。だが、エリスが放った言葉に気になることがあり、ハティは勇気を出し彼女に問う。
「簡単ですよハティ。最初から私の予定通りに進んでるのですよ。ただ、そのカバンの魔法陣を外されたことは予定外でしたが……あ、丁度いいですね。九尾狐狸の前にハティとスコルを殺して魔導書を貰いましょうか」
刹那、右手にあった獣人の死体がその場に落ちると、にこりとした不気味さえも感じる笑いを保ちつつ低い姿勢でハティに襲いかかる。
「ぐっ……」
「ハティ、私はね、貴女達獣人が嫌いなんです。貴女達と同じ人狼に親を殺されたんですから」
刹那の出来事で、生まれつきの動物由来の動体視力を持ってしてもそれは回避することができず、ギリギリギリと宙に浮くようにして首を強く締め付けられる。
エリスは本気でハティ達を殺るつもりのようだ。
「ハティ!」
「その娘から手を離しな!」
「はいわかりましたって言って離す馬鹿はいませんよ……さぁ、ここで貴女の旅は終わりです。どうぞ安らかに……いやーー」
ひと時の間が生まれたと思うと。
「私が処刑した貴女達の母親、フェンリルと一緒に天国で暮らしてください」
「ーーッ!」
更に力が加わり、逃げることは出来ない状況下。エリスの口から出てきた親の名前でハティは、ハティ達はーー
初めて人を憎んだ。
「なんですかその目は。今から死ぬというのに生意気ーー」
「エリス……早くハティを離して……」
「スコル~貴女も馬鹿ですか?さっきも言いましたけど、離す馬鹿はいません。って……あれ?力が……」
たった一言で怒りを、憎しみを殺気に変え、双子揃ってエリスを睨みつける。
それに驚いたのかエリスの力が若干弱まり、されども強めてくることも無くなった。だが未だハティの首を絞めているのは事実。故に彼女がハティを今すぐにでも絞め殺す事など容易いことだが、何故か力を強めることはできずにいた。
否、力を入れることなどできるはずもない。九尾によって影で身を縛る魔法〈影縛〉で身動きを封じられていたのだから。
「ハティ!今だ!」
「ふっ……はぁっ……!〈風……刃〉!」
そしてエリスの手から逃れるべく、覚えたての〈風刃〉を咄嗟に省略詠唱し、首を掴んでいる腕を切り裂く。それにより動揺を隠せずにいたエリスをそのまま強く蹴りつけた。
流石のエリスも超近距離攻撃には対応できなかったようで、鮮血が流れる切り裂かれた腕の痛みと蹴りでハティを離すこととなる。が、首を絞められていたからこそ、呼吸を整えるのに時間がかかり、彼女は動けそうにもない。
「痛いじゃないですかハティ……私を傷つけた代償は高くつきますよ?」
腕を切られ、更に殺気をますエリス。目の前に座り込んだハティを見下すように睨むと、赤い雫が垂れる腕を彼女の前に突き出し、魔法の詠唱が始めた。
獣人の首を強く握りしめたまま、鮮血で濡れた顔でにこりと笑顔を作る。獣人が大好きだと言っていたのは嘘なのかと疑いたくなるほど無慈悲で、恐怖をも感じ取らせる殺気も放っていた。
「……わかったかい。エリスはこういうやつなのさ」
「そんな事よりですよ九尾狐狸。本来の姿を戻してあげたんです。早く私に殺されてください?」
「おやおや、随分と物騒なことを言うようになったじゃないか」
「ってちょっと待ってください!エリスさん、九尾さんの本来の姿を戻してあげたってどういうこと……ですか」
悲惨な状況に彼女達の脳裏に、子供の頃に見た母親が処刑されている所がチラつき、震えが止まらなくなる。だが、エリスが放った言葉に気になることがあり、ハティは勇気を出し彼女に問う。
「簡単ですよハティ。最初から私の予定通りに進んでるのですよ。ただ、そのカバンの魔法陣を外されたことは予定外でしたが……あ、丁度いいですね。九尾狐狸の前にハティとスコルを殺して魔導書を貰いましょうか」
刹那、右手にあった獣人の死体がその場に落ちると、にこりとした不気味さえも感じる笑いを保ちつつ低い姿勢でハティに襲いかかる。
「ぐっ……」
「ハティ、私はね、貴女達獣人が嫌いなんです。貴女達と同じ人狼に親を殺されたんですから」
刹那の出来事で、生まれつきの動物由来の動体視力を持ってしてもそれは回避することができず、ギリギリギリと宙に浮くようにして首を強く締め付けられる。
エリスは本気でハティ達を殺るつもりのようだ。
「ハティ!」
「その娘から手を離しな!」
「はいわかりましたって言って離す馬鹿はいませんよ……さぁ、ここで貴女の旅は終わりです。どうぞ安らかに……いやーー」
ひと時の間が生まれたと思うと。
「私が処刑した貴女達の母親、フェンリルと一緒に天国で暮らしてください」
「ーーッ!」
更に力が加わり、逃げることは出来ない状況下。エリスの口から出てきた親の名前でハティは、ハティ達はーー
初めて人を憎んだ。
「なんですかその目は。今から死ぬというのに生意気ーー」
「エリス……早くハティを離して……」
「スコル~貴女も馬鹿ですか?さっきも言いましたけど、離す馬鹿はいません。って……あれ?力が……」
たった一言で怒りを、憎しみを殺気に変え、双子揃ってエリスを睨みつける。
それに驚いたのかエリスの力が若干弱まり、されども強めてくることも無くなった。だが未だハティの首を絞めているのは事実。故に彼女がハティを今すぐにでも絞め殺す事など容易いことだが、何故か力を強めることはできずにいた。
否、力を入れることなどできるはずもない。九尾によって影で身を縛る魔法〈影縛〉で身動きを封じられていたのだから。
「ハティ!今だ!」
「ふっ……はぁっ……!〈風……刃〉!」
そしてエリスの手から逃れるべく、覚えたての〈風刃〉を咄嗟に省略詠唱し、首を掴んでいる腕を切り裂く。それにより動揺を隠せずにいたエリスをそのまま強く蹴りつけた。
流石のエリスも超近距離攻撃には対応できなかったようで、鮮血が流れる切り裂かれた腕の痛みと蹴りでハティを離すこととなる。が、首を絞められていたからこそ、呼吸を整えるのに時間がかかり、彼女は動けそうにもない。
「痛いじゃないですかハティ……私を傷つけた代償は高くつきますよ?」
腕を切られ、更に殺気をますエリス。目の前に座り込んだハティを見下すように睨むと、赤い雫が垂れる腕を彼女の前に突き出し、魔法の詠唱が始めた。
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