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外伝・キャラクターストーリー(ハティVer)(完)
ハティ⑤
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この話から察するに壁の向こうに行くには何やら合言葉が必要らしい。しかし彼女は依頼人の家のなかから聞こえる動物の悲鳴を確認するため合言葉は知るわけがない。
そのためか合言葉について聞かれても即答で知らないと答えるしかなかったのだろう。
しかしながら外れてもいいからと開けごまだの開けドアだのを言うことはなく即答で真面目に返事を返してきたことに妖精も壁の向こうにいるであろう男も驚いてしまっていた。
『あ、合言葉を知らないなら帰れ』
「なら壊します」
『いや、壊すなよ!?……はぁわかった今回は開けてやる。次からは合言葉言ってくれよ?これ壊されたら困るからな……』
帰れと言って返ってきた言葉で壁の向こうにいるであろう男は呆れてしまったようだ。
だが呆れて壁を開けてくれるというのは彼女にとっては好都合、魔法を使わずして通ることができるからだ。
直後、ゴゴゴと重い扉が引きずられるような音を出して目の前の壁が横にずれて開いていく。どうやら機械でできた扉だったようだ。
だが壁に見える扉は重く完全に開くまで時間が掛かる。その間に彼女は念の為フードを着用し自身の耳を隠すことにした。
「ほら通っていいぞ。合言葉無しで通したのは内緒だからな。合言葉は招待したやつに聞いてくれ」
「わかりました。ありがとうございます」
扉の向こう側には案の定人がいた。それも想像通り至って普通の男性だった。
扉を開けてくれたことに彼女は感謝しつつ奥へを進んでいく。扉の奥からは明かりもあったため展開している〈集束する光〉は消し妖精はいつの間にか彼女のローブの中に入っていた。
しばらく進んでいくと今度は普通の扉が行く手を阻む。しかしどう見ても鍵はかかっていないようだった。
扉のノブに手をかけ開けようとするもの緊張しているのか一瞬手を引いてしまう。だがここまで来ては後戻りはもちろんできないためノブに手を掛け手前に開けた。
そして彼女はその先の光景を見て唖然としてしまう。
「いらっしゃ……お前はさっきの!なんでここに」
「こ、ココは……?」
「見てわからないか?“動物カフェ”だ。まぁ会員制ではあるが」
扉の先に広がっていたのは動物用品が揃っていて、カウンターもある空間。その空間からは香ばしいコーヒー豆の匂いが漂いいかにもカフェという雰囲気がある。そしてそこに居たのは彼女たちが怪しんでいた依頼人だった。
そしてその依頼人の肩には玄関先にいた時にはいなかったフクロウが乗っかっていた。
「え、でもさっき動物達の声が聞こえ……あれ?」
「あー、あれの事か。動物の体洗ってたんだ、今さっき終わったがな。あとは下っ端が動物の声の音声取った時のを流してたりするからそれだろう……それで?あとは何を疑うんだ?」
「も、申し訳ございません!早とちりでした!……でもなんで眠そうなフリなんかしたんですか?」
「ここまで来たからには洗いざらい言うが、眠そうにしておけば普通は疲れてるんだって捉えられるだろ?まあそれ以外何も無いが。んで多分気にしてるだろう会員制。許可をとって絶滅寸前の動物を飼ってるんだ、そんな簡単に会わせるわけいかないだろ、なんかあったら困るんだからな。依頼金の高さはあれだ、高くしてれば依頼受けに来るやつ増えるだろ?」
依頼人はカウンターに立ち、こうして来た彼女にもてなしをするためかコーヒー豆をゆっくりゆっくり挽く。その間にここが会員制の理由、そして玄関先の時に演技していた理由などを述べていた。
余裕を持って話しているが嘘は付いていないようだ。
「ちなみに依頼した猫、ここじゃあ凄く臆病なんだ。人見知りならぬ動物見知りなんだよ」
「あの、そういうの早く言ってもらえませんか!?外を堂々と歩いてるのに臆病って何かあるとしか思えませんでしたよ!?」
「まあまあ、そうカッカするな。あん時はここの奴らが心配だったからな説明不足だったんだ。それによくよく考えればーー」
コーヒー豆を挽き終わりトポポポとコーヒーを入れ始めたその瞬間、部屋の奥にあった扉の下、動物用の小扉から捕まえてほしいと依頼されていた猫が入ってきた。
一体どういうことなのか、それは直ぐに知ることとなる。
「そいつよくそこの部屋から上手いこと換気口に入って抜け出して戻ってくるんだ」
「……え?」
「え?って何だよ」
「い、いや、それじゃあ依頼した意味はと思いまして」
「しばらく経っても戻ってこないから依頼したんだ」
嘘は全く付いていない。それだけ動物を愛しているのだろうが、なんとも釈然としない。
未だに臆病だと言うことも謎に満ちており、その上依頼人の態度も先程とは違って捉えれるからだ。
「不思議そうな顔してるな、そんなに疑うならしばらくここにいたらどうだ?丁度コーヒー淹れたからな」
「あ、はい……あ、あの他にも気になるんですが、さっきと口調変わってませんか……?」
「そりゃここでそんな態度とったら動物たちが驚くからな仕方ねぇだろ。ほら」
良い香りを醸し出すコーヒーがカウンターに置かれる。とにかく座れという意味だろう。
それが合図のようになり彼女はカウンター席へとゲストとして座る。
その後暫くすると開店したのか会員であろう客人が一人また一人と押し寄せ直ぐに八人分しかない椅子が埋まった。聞けば毎日満席になるらしく会員制とはいえ相当な人気を誇るようだ。
そして依頼人が満席になったのを確認したあと部屋の奥から動物をカウンターのある部屋へと解放した。
そのためか合言葉について聞かれても即答で知らないと答えるしかなかったのだろう。
しかしながら外れてもいいからと開けごまだの開けドアだのを言うことはなく即答で真面目に返事を返してきたことに妖精も壁の向こうにいるであろう男も驚いてしまっていた。
『あ、合言葉を知らないなら帰れ』
「なら壊します」
『いや、壊すなよ!?……はぁわかった今回は開けてやる。次からは合言葉言ってくれよ?これ壊されたら困るからな……』
帰れと言って返ってきた言葉で壁の向こうにいるであろう男は呆れてしまったようだ。
だが呆れて壁を開けてくれるというのは彼女にとっては好都合、魔法を使わずして通ることができるからだ。
直後、ゴゴゴと重い扉が引きずられるような音を出して目の前の壁が横にずれて開いていく。どうやら機械でできた扉だったようだ。
だが壁に見える扉は重く完全に開くまで時間が掛かる。その間に彼女は念の為フードを着用し自身の耳を隠すことにした。
「ほら通っていいぞ。合言葉無しで通したのは内緒だからな。合言葉は招待したやつに聞いてくれ」
「わかりました。ありがとうございます」
扉の向こう側には案の定人がいた。それも想像通り至って普通の男性だった。
扉を開けてくれたことに彼女は感謝しつつ奥へを進んでいく。扉の奥からは明かりもあったため展開している〈集束する光〉は消し妖精はいつの間にか彼女のローブの中に入っていた。
しばらく進んでいくと今度は普通の扉が行く手を阻む。しかしどう見ても鍵はかかっていないようだった。
扉のノブに手をかけ開けようとするもの緊張しているのか一瞬手を引いてしまう。だがここまで来ては後戻りはもちろんできないためノブに手を掛け手前に開けた。
そして彼女はその先の光景を見て唖然としてしまう。
「いらっしゃ……お前はさっきの!なんでここに」
「こ、ココは……?」
「見てわからないか?“動物カフェ”だ。まぁ会員制ではあるが」
扉の先に広がっていたのは動物用品が揃っていて、カウンターもある空間。その空間からは香ばしいコーヒー豆の匂いが漂いいかにもカフェという雰囲気がある。そしてそこに居たのは彼女たちが怪しんでいた依頼人だった。
そしてその依頼人の肩には玄関先にいた時にはいなかったフクロウが乗っかっていた。
「え、でもさっき動物達の声が聞こえ……あれ?」
「あー、あれの事か。動物の体洗ってたんだ、今さっき終わったがな。あとは下っ端が動物の声の音声取った時のを流してたりするからそれだろう……それで?あとは何を疑うんだ?」
「も、申し訳ございません!早とちりでした!……でもなんで眠そうなフリなんかしたんですか?」
「ここまで来たからには洗いざらい言うが、眠そうにしておけば普通は疲れてるんだって捉えられるだろ?まあそれ以外何も無いが。んで多分気にしてるだろう会員制。許可をとって絶滅寸前の動物を飼ってるんだ、そんな簡単に会わせるわけいかないだろ、なんかあったら困るんだからな。依頼金の高さはあれだ、高くしてれば依頼受けに来るやつ増えるだろ?」
依頼人はカウンターに立ち、こうして来た彼女にもてなしをするためかコーヒー豆をゆっくりゆっくり挽く。その間にここが会員制の理由、そして玄関先の時に演技していた理由などを述べていた。
余裕を持って話しているが嘘は付いていないようだ。
「ちなみに依頼した猫、ここじゃあ凄く臆病なんだ。人見知りならぬ動物見知りなんだよ」
「あの、そういうの早く言ってもらえませんか!?外を堂々と歩いてるのに臆病って何かあるとしか思えませんでしたよ!?」
「まあまあ、そうカッカするな。あん時はここの奴らが心配だったからな説明不足だったんだ。それによくよく考えればーー」
コーヒー豆を挽き終わりトポポポとコーヒーを入れ始めたその瞬間、部屋の奥にあった扉の下、動物用の小扉から捕まえてほしいと依頼されていた猫が入ってきた。
一体どういうことなのか、それは直ぐに知ることとなる。
「そいつよくそこの部屋から上手いこと換気口に入って抜け出して戻ってくるんだ」
「……え?」
「え?って何だよ」
「い、いや、それじゃあ依頼した意味はと思いまして」
「しばらく経っても戻ってこないから依頼したんだ」
嘘は全く付いていない。それだけ動物を愛しているのだろうが、なんとも釈然としない。
未だに臆病だと言うことも謎に満ちており、その上依頼人の態度も先程とは違って捉えれるからだ。
「不思議そうな顔してるな、そんなに疑うならしばらくここにいたらどうだ?丁度コーヒー淹れたからな」
「あ、はい……あ、あの他にも気になるんですが、さっきと口調変わってませんか……?」
「そりゃここでそんな態度とったら動物たちが驚くからな仕方ねぇだろ。ほら」
良い香りを醸し出すコーヒーがカウンターに置かれる。とにかく座れという意味だろう。
それが合図のようになり彼女はカウンター席へとゲストとして座る。
その後暫くすると開店したのか会員であろう客人が一人また一人と押し寄せ直ぐに八人分しかない椅子が埋まった。聞けば毎日満席になるらしく会員制とはいえ相当な人気を誇るようだ。
そして依頼人が満席になったのを確認したあと部屋の奥から動物をカウンターのある部屋へと解放した。
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