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第十五話:ダンジョンでの買い物
しおりを挟む翌日、俺は約束通りダンジョンの探索を手伝うことになった。しかし、どうにも腑に落ちない点が多すぎる。あのローブの男が言っていた「護衛」という言葉、そして俺に対しての過信のようなものは一体何なのか…正直、どうしてこんなことになったのか自分でも理解できないままだ。
「さて、ダンジョンに着いたな。」
男の案内で、ダンジョンの入り口に到着した。大きな岩でできた入り口からは、どこか不気味な気配が漂っている。俺は少し身構えながらも、男の後を追った。
「店主、ここの魔物たちは少し特殊だ。物理的な攻撃だけでは対処できないかもしれないから、できるだけ冷静に行動してくれ。」
男はそう言いながら、俺にいくつかのアイテムを渡してきた。どうやらダンジョンの中には、単なる魔物以外にも、妙な性格の魔物がいるらしい。
「了解。でも、冷静って言ってもさ、何が出てくるのか分からないんじゃ…」
俺がそう言うと、男は少しニヤリと笑った。
「それはそれで楽しいだろう。」
その言葉に、ますます不安が募る。しかし、今さら引き返せるわけでもない。俺は息を整え、ダンジョンの奥へ進んでいった。
だが、進むたびに不安と緊張は高まるばかりだった。そして、ついにダンジョン内に足を踏み入れた瞬間、予想もしない光景が広がった。
「おっと、待ってくれ!」
突然、前方から声が聞こえた。俺たちが進む先には、まるで店の店員のような魔物が待ち構えていた。その姿は、ウサギのような耳を持った小柄な魔物で、なぜか店員の制服を着ている。
「新商品が入荷しましたよ! ぜひご覧ください!」
その魔物は元気よく声をかけてきた。
「こ、この魔物…何を言ってるんだ?」
俺は思わず呆然とした。その魔物は、全く異常な姿勢で、普通の敵のように襲いかかってくるのではなく、商品の紹介を始めたのだ。
「これが当店の最新商品、魔法の回復薬! お試しください!」
そのウサギ型魔物は、魔法の回復薬を持ち出してきた。どうやら、ここでは魔物たちが普通に買い物をしているらしい。俺は状況が掴めず、男を見つめた。
「おい、これ…どういうことだ?」
「言っただろう? このダンジョンの魔物たちは、ただの敵じゃなくて、買い物をしてくるんだ。」
男は呆れるような顔をして、さらに言葉を続けた。
「ここの魔物たちは、戦う前に一度買い物をしないと戦ってくれないんだ。こっちも、買い物をしたらそのまま通り過ぎることが多い。」
「つまり、戦わずに買い物だけして帰ることができるってことか?」
俺はあまりの展開に驚き、さらに男を見つめる。
「そうだ。まぁ、あまりにも高価な商品を求められたら、断ることもあるけどな。」
男は少し笑いながら、再び先に進む。
俺は無意識にため息をついた。どうやら、このダンジョンでは物理的な戦闘よりも、魔物たちとの交渉や買い物が重要らしい。しかし、それでも緊張感は薄れない。だが、これ以上何か起こるとしたら、どう対処すべきかも分からない。
その後、さらに進んでいくと、また別の魔物が現れた。それは今度は大きなドラゴンだった。
「いらっしゃい、いらっしゃい! 当店の最新ラインナップをお試しあれ!」
ドラゴンは自慢げに商品棚を指さす。俺は目を丸くしてその棚を見ると、そこには「高級火炎放射器」や「ドラゴン専用骨磨きセット」など、何とも奇妙なアイテムが並んでいた。
「う、うーん…」
俺は口ごもりながら、ドラゴンに向かって言った。
「その火炎放射器って、どんな効果があるんですか?」
ドラゴンは得意げに笑って答えた。
「これさえあれば、敵を焼き尽くせる! ちなみに、火力調整もできるから、控えめにしたければそれで。」
「それって…店でも買えるのか?」
「もちろん! 当店は魔法のアイテム、ダンジョン特産品、すべて取り扱っております!」
ドラゴンは胸を張って言った。その姿に、俺は思わず吹き出しそうになった。
「す、すごいな…」
男は微笑んでから言った。
「そうだろう? ここは実質、ダンジョン内に存在する巨大なショッピングモールみたいなものだ。」
その言葉に、俺はもう一度ため息をつきながら、少しずつダンジョン内の魔物たちと交渉しながら進んでいった。
結局、戦うことなく無事にダンジョンの出口にたどり着いたが、どうやらここでは戦うよりも、いかに魔物たちと上手く交渉するかが重要なようだ。俺は心の中で、こんなダンジョンがあっていいのかと思いつつも、無事に依頼を完了させたのだった。
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