駅の果てで

3話: 冒険者ギルドへ

ライオネルの案内に従って、聡はバルナス平原を越え、異世界で初めての街にたどり着いた。街の名前は「カリサン」。聡の想像通り、中世のヨーロッパを彷彿とさせる石造りの建物が立ち並んでいた。街の入口には大きな門があり、そこには鋭い目をした衛兵が立っている。

「ここがカリサンだ。エルシル王国の中でも比較的小さい街だが、冒険者ギルドがあって便利だぞ」
ライオネルは自信満々に言った。聡は少し緊張しながらも、街の中に足を踏み入れた。

「ここが俺の新しい生活の始まりか…」

街に入ると、賑やかな市場の音や人々の喧騒が聡の耳に飛び込んできた。屋台で売られている品々は見たこともないような果物や武具、そして魔法の書物まである。通りを行き交う人々は、騎士や商人、そして冒険者らしき者たちが混じり合っている。装備を身にまとった屈強な男や、ローブに身を包んだ魔法使いのような人物もちらほら見かけた。

「おい、あれが冒険者ギルドだ。行ってみよう」

ライオネルが指さす先には、他の建物よりも一際大きく、重厚な造りをした建物があった。その看板には剣と盾のエンブレムが描かれており、一目でギルドだと分かる。


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ギルドの中に入ると、聡はさらに圧倒された。内部は大勢の冒険者たちで賑わっており、カウンターには受付嬢が忙しそうに対応している。壁には討伐依頼や探索任務が貼られており、様々なランクが振り分けられていた。

「これが冒険者ギルドか…思った以上に本格的だな」
聡は驚きの声を漏らした。

「ここで君も冒険者として登録すれば、仕事を請け負えるようになる。君の力を試してみる絶好の機会だろう」

ライオネルは聡を受付に連れて行き、優しそうな受付嬢に声をかけた。

「すみません、新人の登録をお願いしたいんですが」

受付嬢はにこやかに微笑み、聡に視線を向けた。「冒険者登録ですね。それでは、簡単な手続きがありますので、こちらにお名前といくつかの質問にお答えください」

聡は緊張しながらも、用紙に自分の名前を書き込んだ。「北原聡」と書き込んだ瞬間、少しだけ懐かしい気持ちが込み上げてきたが、彼はそれをすぐに振り払った。

「さて、最後にスキルの確認をさせていただきますね」
受付嬢がそう言って、聡に手を差し出す。何かの魔法具のような装置が机の上に置かれ、聡の手をその上に乗せるように促された。

「スキル…？俺、何か特別なスキルなんて持ってないけど…」

彼が手を装置に乗せると、瞬時に淡い光が走った。そして、受付嬢の目の前にある紙に、文字が浮かび上がっていく。聡はドキドキしながらその結果を待った。

「えーと…『なし』、ですか？」

「なし？」
聡は予想外の結果に目を丸くした。何のスキルも持っていない。そう思っていたが、本当に「なし」とは。自分には魔法の才能も、剣術の才能もないということだろうか。

ライオネルも少し驚いたようだったが、すぐに気を取り直した。「まあ、スキルがなくても冒険者としてやっていけるさ。経験を積めば、何かの才能が開花するかもしれない」

受付嬢も優しく微笑んで言葉を添えた。「確かにスキルはありませんが、冒険者としての活躍は経験次第です。無理をせず、少しずつ頑張ってくださいね」

「そ、そうだな…とにかくやってみるしかないか」

聡は少し気後れしながらも、冒険者登録を完了させた。彼の冒険者としての新しい人生が、これで正式にスタートしたのだ。


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ギルドから出ると、夕方の空がオレンジ色に染まり始めていた。聡はライオネルと共に街を歩きながら、これからどうするかを考えていた。

「まずは簡単な依頼から始めるのがいいな。最初は無理せず、小さな仕事から積み重ねていくことだ」
ライオネルがアドバイスしてくれた。

「そうだな。まずは俺にできることから始めよう」
聡は自分に言い聞かせるように答えた。これまでの会社員生活とは全く違う冒険者としての人生。それがどんなものになるのか、彼はまだ想像もつかなかったが、新たな一歩を踏み出す決意を固めた。

「よし、明日から本格的に冒険者として活動するぞ！」


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北原聡の異世界での冒険者としての生活は、こうして幕を開けた。しかし、彼にはまだ知る由もなかった。これから待ち受ける数々の試練と、出会うべき仲間たちが、彼の運命を大きく変えていくことを。