異世界でフレンドリーな騎士と怠け者の神様

5話

次の日、俺とグルドラは街の外れにある「冒険者ギルド」に向かっていた。どうやら、ギルドに登録すれば、簡単なクエストをこなして経験値や報酬を得られるらしい。ただし、その道のりで面白い出来事が起きることは、俺たち二人とも予測していなかった。

ギルドの建物は巨大で、まるで城のような立派な造りをしていた。その前には、たくさんの冒険者たちが集まっていて、賑やかな雰囲気が漂っている。

「おお、ここか！ ここに入れば、俺も冒険者として一歩踏み出すってわけだな！」

「まあ、急ぐ必要はないけどな。異世界には面白い奴らがいっぱいだから、少しは慣れてからでも遅くない。」

グルドラが言う通り、俺も少しは落ち着いてから行動するべきだと思いつつも、ギルドの門をくぐると、そこにはすでにいろんな種類の冒険者たちがひしめき合っていた。

「おお、こんなに人がいるのか……」

その中には、ギラギラとした目をした盗賊風の奴や、無駄に大きな剣を肩にかけた騎士、そして怪しい魔物風の冒険者まで、様々なキャラクターが揃っていた。しかも、その一部が、まるでバラエティ番組のセットみたいに騒がしく、どこかバカバカしい空気を醸し出していた。

「ほら、あそこだ、受付は。」

グルドラに促されて、俺はその方向へと歩き出した。受付のカウンターには、疲れた様子の女性が一人、座っている。彼女の顔は、少し怒りを含んだ表情をしており、何かイライラしている様子だ。

「ようこそ、冒険者ギルドへ……。登録ですか？」

「はい、登録をお願いしたいんですけど。」

「……わかりました、書類を書いてください。」

そう言って、女性は無言で書類を手渡してきた。俺がその書類に目を通していると、後ろから声がかかる。

「おいおい、あんたも新顔か？ 俺も昨日転生してきたばっかなんだよ！」

振り返ると、そこには異世界とは思えないくらい普通の格好をした男が立っていた。ジーパンにTシャツ、そしてスニーカー。どう見ても異世界の住人とは思えない、まさに現代の地球から来たようなスタイルだ。

「え？ あ、はい、俺も転生してきたばかりです。」

「そうか、俺もだ。いやぁ、この世界ってすごいよな！何でもありだし、魔物とも話せるし。」

その男はにこやかに話しかけてくるが、どうもテンションが高すぎて、俺は少し戸惑った。

「うーん、確かにすごいですけど、まだ全然慣れてないんですよね。」

「おお、それなら一緒にクエストでも行こうぜ！この辺、すぐ近くにドラゴンの巣があるんだ。やったことないか？」

「……いや、いきなりドラゴンですか？」

「安心しろ！ 俺がいれば余裕さ！ それに、あのドラゴン、実はすごい甘えん坊なんだよ。何も怖くない！」

俺が目を丸くしていると、その男はにこっと笑って、「ほら、行くぞ！」と走り出した。俺はとりあえず、グルドラに目を向けると、グルドラは肩をすくめて言った。

「うーん、まあ、行ってみてもいいかもしれんな。あんな奴が一緒なら、ドラゴンも問題ないだろう。」

そして、俺たちはその男と一緒に、冒険の第一歩を踏み出すことに決めた。

――数分後、ドラゴンの巣があるという森の入り口に到着した。そこには、予想通りドラゴンの姿が見える。しかし、そのドラゴンは……。

「うわ、なんだあれ……」

ドラゴンは確かに巨大だったが、見た目がまるで子供のようにぬいぐるみっぽくて、顔がどこか困ったように見える。さらに、ドラゴンは小さな声で「だれか、抱っこして～」と呟いている。

「……これは、ドラゴンですか？」

「おお、これがそのドラゴンだ！ ちょっとね、甘えん坊なんだよ。まあ、抱っこしてやってくれ！」

その男はドラゴンの頭を撫でて、「お前、可愛いなぁ」と言っている。しかし、ドラゴンはさらに甘えてきて、俺に向かって「だっこ～」とおねだりしてきた。

「え、えええ！？ こんなドラゴン、初めて見たんですけど！」

グルドラが大きく笑う。「まあ、この世界にはこういうこともあるんだ。いろいろと不思議なことがいっぱいだよな。」

その後、俺は恐る恐るドラゴンを抱きかかえた。まるでぬいぐるみのように柔らかくて、意外に気持ちよかったが、その瞬間、ドラゴンは満足げな顔をして「ありがとう」と一言。

「いや、なんだか変な冒険になりそうだな……。」

俺はただただ苦笑いを浮かべるしかなかった。