先生と俺

みなと劉

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第14話

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先生の意外な趣味を知ってしまった俺。
でも、なんだかそれも良いなと思ってしまう自分がいる。
先生との距離が少し縮まった気がして、気持ちが軽くなった。
その日の放課後、家に帰ると、母親が台所で夕飯の準備をしていた。

「今日のおかずはメンチカツよ」
と母親が言った。

「メンチカツかぁ…」
俺は何気なく返事をしながら、ふと思い浮かんだ。
メンチカツって、一体どんな歴史があるんだろう?
普通に食べているけど、名前も少し変わっているし、どこから来た料理なんだろう?
それに、先生ならきっと何か知っているんじゃないかと思った。

「明日、先生に聞いてみようかな…」
俺はそうつぶやいて、メンチカツを見つめた。
普段何気なく食べているものにも、歴史があるかもしれない。
そう思うと、少し楽しみになってきた。
翌日、学校に行ったら、さっそく先生に
「メンチカツって、どんな歴史があるんですか?」
と聞いてみよう。
先生がどんな答えをくれるのか、今からちょっとワクワクしている。
それに、先生がまた意外な知識を持っていたりして――そんなことを考えると、明日が少し楽しみになってきた。

次の日、学校に登校した俺は、教室に入ると先生がいつものように椅子に座り、読書をしていた。
先生の表情は真剣で、本の内容に集中している様子が伺えた。
俺は少し迷ったけど、昨日の夜に思いついたことを先生に聞いてみたいという気持ちが勝って、先生に声をかけることにした。

「先生、おはようございます。」
俺は先生に声をかけた。
先生は顔を上げ、穏やかな笑顔を浮かべて返してくれた。
「おはようございます、正彦くん。今日は早いですね。」
「はい、ちょっと先生に聞いてみたいことがあって…」
俺は少し緊張しながら言った。
「何でしょうか?」
先生は本を閉じて、俺にしっかりと向き合ってくれた。
俺は一瞬戸惑ったけど、昨日のことを思い出しながら切り出した。
「昨日の夕飯がメンチカツだったんですけど…メンチカツって、どんな歴史があるのか知っていますか?」
先生は少し驚いた表情を見せた後、にこやかに微笑んだ。
「面白い質問ですね。メンチカツの歴史ですか…」
先生は少し考えるように目を細め、やがて答え始めた。
「メンチカツという料理は、日本の洋食文化の中で生まれたものです。名前の由来にはいくつかの説があるのですが、一説には英語の『minced meat』(ミンチした肉)から来ていると言われています。
もともとは西洋料理の影響を受けて、日本で独自に発展した料理なんです。」

俺は先生の話に引き込まれながら、うなずいた。「そうだったんですね。普通に食べてるけど、そんな背景があったなんて。」
「ええ、洋食が日本に入ってきた時代に、牛肉を使った料理が流行り始めて、その中でメンチカツのような料理も生まれたんです。
日本独自のアレンジが加わって、今の形になったんですよ。」
先生はさらに詳しく教えてくれた。
「先生、やっぱり詳しいですね。ありがとうございます。」
俺は感謝の気持ちを込めて言った。
「どういたしまして。食べ物の歴史もなかなか面白いですよ。これからも何か気になることがあれば、遠慮なく聞いてくださいね。」

先生は優しく答えてくれた。

こうして、またひとつ先生との会話が楽しいものになった。
普段の食事にも、意外な歴史があることを知って、少し賢くなった気がした。
明日もまた、何か新しいことを先生に教えてもらいたいと自然に思った。

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