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呪い
しおりを挟む深夜3時頃の事だ。友人の健二が、真夜中に僕の元へとやって来た。
「一体どうしたんだこんな真夜中に…」
「…なぁ春樹…俺の話、聞いてくれるか?」
健二はいつになく真剣な顔で僕に聞いた。
「あ、あぁ…まぁとにかく入りなよ」
僕は健二を部屋に入れて、彼の話を聞く事にした。
「それで…何かあったのかい?」
「実はな、俺…幽霊に呪われちまったんだ…」
「幽霊?」
「あぁ…事の起こりはこうだ…」
健二は話し始めた…。
―数時間前―
俺は酔っぱらっていて、フラフラとアパートに向って線路沿いの道を歩いていたんだ。すると前から車が走って来て、俺のすぐ側を横切った。俺は驚いて、車を避けようとして柵にぶつかった。
『いったぁ~…いてて、あぶねぇなぁ~もぉ~…ひっく!』
その時ふと下を見ると、俺の足元に指輪が一つ落ちていたんだ。どうやら結婚指輪らしい。そしてその側に、小さな花束とぬいぐるみが添えられていた。俺はふざけてそれを左の薬指にはめて、そのまま持っていっちまったんだ…。
もうすぐアパートに着こうとしてた時だ。急に背筋に寒気が走り、俺の後ろから誰かが来ているような気がした。俺は後ろを振り向いてみた…。するとそこには、小さな少女を連れた女が俺の後をゆっくりとついてきた。見たところ親子のようだった。アパートに着いて2階に上がった俺は、あの親子がまだいるのかと思い、下を見降ろしてみた。親子はまだついて来てたよ。けど酔っぱらっていた俺は、《変な親子だな》としか思わず、そのまま部屋に入って床に寝転がった。その時、部屋のインターホンが鳴り響いた。
『なんだよまったくぅ!』
俺はドアに向って叫んだ。
『はいどなたぁ⁉』
しかし返事はない…。俺は立ち上がってドアの近くでまた叫んだ。
『どなたですかぁ⁉』
やはり返事はない。俺はドアスコープから覗いてみた。すると、あの親子がドアの前に立っていた。そしたら母親の方がこっちを見てニヤッと笑い、思わずゾッとして酔いが一気に醒めた。俺はシャワーを浴びるとサッサと眠った。
深夜1時過ぎを周った頃だろうか…突然息苦しくなって目を覚ますと、俺は暗い部屋の中で何か気配を感じたんだ。恐る恐る辺りを見回した…けれど、何もなかった…。喉がカラカラに乾いていたんで、台所へ行って水道水を一杯飲んだ。そして布団に戻ろうとした時だ。布団の上に、あの親子が立っていた。そして俺は気付いたんだ…こいつらは人間じゃないと…!
すると少女の方が俺に抱き付いて来て、顔を見上げた。少女の顔は、額から流れ出た血で真っ赤に染まっていた。俺は恐怖のあまりに少女を突き飛ばして、外階段を駆け下りアパートから飛び出した。
『はぁ…はぁ…な、なんなんだよアイツら…‼』
だが振り替えると、目の前に親子の霊が現れ、血まみれの顔でニタッと笑った。俺は必死で逃げた。けれどアイツらは何処へ逃げても現れるんだ…。逃げても逃げても俺の前に姿を見せる…。
『なんでだよ!俺が何をしたって言うんだよ!!』
俺は無我夢中で走った…。脇目も振らず、ただ走って、走って、走り続けた…。そしてようやく、幽霊達の姿をどうにか振り切った。息も絶え絶えとなった俺は安堵し、ようやく落ち着きを取り戻した…。けれど行きついたその場所は、俺が指輪を拾った場所なんだよ…。その証拠に、あの時見た花束と小さなぬいぐるみが供えてあったんだ。その時突然左の薬指が痛み出した。拾ってはめたあの指輪がグイグイと指に喰い込んでいくんだ。俺は外そうとしたが、指輪は全く外れない。すると俺の足を誰かがグッと掴んだ。足元を見ると、路面から4本の腕が這い出て両足を掴んでいた。俺は振り払おうとしたが、四本の腕は物凄い力で足を押さえつけるんだ。必死で抵抗しても、地面から足を離す事が出来ない。
『や、やめろ!!離せ!!離せ!!』
その時、俺の前から1台のトラックが走って来た。トラックは止まる事無く、俺に向って突っ込んできた。
『うわぁぁあああああ…!!』
キキキー!ドォォーン!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「…ものすごい音がしたよ…。俺はトラックに跳ねられて、そのまま死んじまったんだよ…」
「…え?」
僕は健二の言い終えた言葉に耳を疑った。
「ちょ、ちょっと待って?今なんて?死んじまった!?だ、だって今こうして君と…」と、僕が言いかけた途端、健二は身体をワナワナと震わせた。その途端に部屋の電気が消え、外の電柱の灯が僅かながら差し込み、部屋の中を薄暗く照らした。不気味に座り込む健二は、俯いていた顔をゆっくりと上げた。僕は彼の顔を見て、声にならない悲鳴を上げた。健二の額から血がドクドクと流れ落ち、彼の顔と服を赤く染めていった。健二は苦しそうに顔を抑えた。そして、指輪をはめた血まみれの左手を僕に差し伸べて言った。
「…助けてくれ…!」
すると、健二の背後から4本の腕が現れ、彼の身体にガッっとしがみついた。
「た、助けて春樹!助けてくれぇ!あああああぁ!!…」
健二は甲高い悲鳴を上げて、そのまま闇の中へと引きづり込まれていった…。その時、「ずっと一緒…」と、女の囁く声がした…。
気が付くと、僕はベッドの中で眠っていた…。
《あれは…夢だったのだろうか…?》
僕は健二に電話をかけてみた…。だが…⦅おかけになった電話番号は、現在使われておりません…⦆。
健二は、行方不明になった…。
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