ーfollyー

すずめ。

文字の大きさ
上 下
1 / 1

1 

しおりを挟む
プロローグ

「こんな低い点数しか取れなかったの?」
「ご…ごめんなさ――」
「もういいわ。あなたの"ごめんなさい"聞き飽きたの。部屋に戻りなさい。」
「……はい。」

私は無意味になってしまった。


1

私は優等生らしい。テストは常に90点以上、いつも成績はA判定だ。

でも。私の家庭ではそれが"普通"だった。テストの点数も90点を下回ると勉強不足だと叱られる。友達はすごいと褒めてくれるけれど親には1度も褒められたことが無い。それから、だんだんと私は成績が下がっていった。
98点が、96点に。96点が90点に。
そして今日は―――
(テストの点数……88点になっちゃった。お母さんもお父さんも怒ってた……)
私の人生は母と父のためのものだった。私に拒否権など存在せず、2人のになるのが、私の役割なのだ。

しかし、私にはそれができなかった。そんな私には生きる意味など無い。使。役割を果たせない者は無意味なのだから。無意味を嫌う両親は私のことも嫌いだ。

自分の家なのに。居場所は無かった。
私はその場から逃げ出したくて家を出た。
「もう…いっそ死んじゃおうかな。」
ふと、口にする。自分は誰にも好かれていない。誰の役にも立てていない、この人生はなのだから。夕暮れの街。太陽はすっかり沈んでしまった。

(ここから落ちれば……)
橋の手すりから川に飛び降りようとした。しかし―――――
ガシッ
腕を掴まれて橋の上に戻される。
「命を粗末にするな!!」
突然現れた少年に怒られる。
(この子に何が分かるの?)
「………………」
「何とか言ってよ!」
疲弊しきった私の心はもはや喋る力すら残されていなかった。それに、どうでも良かった。この子がいくら私を止めてもこの子が去った後に私は死ぬ。
(早くどっか行ってくれないかな。)
「何で……死にたいの…?」
ボソボソと答える。
「別に。親の道具になりきれなかったから。そんな私に意味なんて……」
ない。そう言い切る前に彼の言葉に止められる。
「子供は親の道具じゃ無いよ。子供の人生は子供のものだ。それを奪う権利は誰にも無い。」
彼は子供ではない顔と声で話す。それに、この声は聞き覚えがある。いったい誰の―――――
「それにさ。」
彼の優しい声で思考から戻される。
「最初から生きる意味を持ってる人なんて…いないんじゃないかな?」
「え…?」
彼の言葉に自分の思考が覆された。
「だってさ!最初から生きる意味を持っている人なんてきっと、この世に1人もいない。最初から意味を持ってたらつまんないからだよ。だから、人生は自分の"意味"を探すためのモノなんじゃないかな?」
「意味を探すための…人生…?」
人生は私が思っていたモノよりそんな簡単なモノなのか。そんなわけない、と最初はそう思った。でも、私は彼の言葉を信じてみたくなったのだ。
『探すための人生』
それが正しいのなら。
「ありがとう。私……もうちょっと、ほんのちょっとだけ生きてみようかな。」
「良かった。じゃあ、またね。」
「え…!あなた、名前は―――」
強風が吹いて彼は消えてしまった。
名前の分からない、あの少年はいったい何だったのだろう。私は、名前の分からない少年に感謝した。
("生きる意味"を探すまではたくさんの人に迷惑をかけるかもしれない。それでも私は―――――)
「信じてみよう。あの子の言葉を。」
私はに向かって一歩、また一歩と歩き出した。


       **

「自分に価値がないなんて思わないで。君の価値は君自身で探し出すんだよ。」



しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

瑞木歌乃
2022.10.10 瑞木歌乃

感想&お気に入り登録失礼しますm(__)m
今回の作品好みです!この話を読んで、その通りだと思いました…!本当に、素敵な小説になりそうです(惚れた)
これからものんびり投稿、応援してます!!

すずめ。
2022.10.10 すずめ。

お気に入り登録ありがとうございます!!この小説書いた私自身も好きです……
歌乃ちゃんものんびり投稿でおけよー!

解除

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。