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9. 遊び

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……完全に、本気で、体力使いきるほど楽しんだ。後悔はしないでもないが、反省はしない。

気が付けば大きいせなかを枕にして、子供らは俺を枕にして、大樹のそばで寝落ちていたらしい。
枕にした記憶はないのだが、もしかすると寝落ちてから動かしてくれたのかもしれない。

心地いい寝心地だったので、少しだけ目が覚めたけど寝たふりを続けたし、そのまま朝まで眠ってた。
「はー……こりゃ完全に寝過ごしたな」
クゥン……。同意のような鳴き声を聞いて苦笑が漏れる。
「お前ももう少し早く起きるんだったか?」
ぐるる、と返事があって、慰めるように撫でてやる。そう言えば何も食わずに遊び倒して寝てたんだったか。
「なあ、お前たちは……特に子供らは、ボアの肉とか食えるのか? グレートボアだっけなあ」
クゥン
首を傾げたような動作ではあるが、返事としては好物だと言っているように聞こえた。それを聞いて一つ頷く。
このまましまい込むよりは、ここで大盤振る舞いしたっていいだろう。収納の中からブロック状のグレートボアの肉を出して見せ、食うか? と前に掲げてみた。
「ウォン!」
「お、いける口か?」
興奮してきたのかかなり元気な返事をもらい、つい笑ってしまった。ちなみに子供らはまだ寝ている。数匹鼻がひくひくと動き出しているから、そのうち空腹で目が覚めそうだが。
まるまま与えて齧らせてもいいかと思うが、子供らにはまだ噛みにくいだろうと思う。まあそれを噛み千切って与えるのが親の役目と言えばそうかもしれないが。
少し考えて、生活魔法を使うことにした。EXとついているから、だいぶ協力になっているだろうし。

俺含む、大人の分。それから子供らの分は小さなサイコロ状にでもすればいいだろう。イメージを固めて、風属性のそれを使ってみる。
シュシュシュシュシュッスパパパパパッ

目視出来ない風の刃が、ブロックを一度輪切りにし、三分の一をさらにサイコロ状に裁断してく。
周囲では目が覚めた子供らがわんわんキャンキャンと大合唱だ。それに触発されて目が覚めたやつらも混ざって、俺の足回りをぐるぐるぴょんぴょん尻尾をふりふり……起き抜けに暴れまわる子供ら。
「ちょっと待てちょっと待て。味付け……は出来ないんだが、俺は自分の分焼こうと思ってる。お前らどうする?」
クゥン……?
「わからんか。じゃあ取り敢えず俺の分だけでいいな」
道中で拾ったりしていた大きな葉っぱが皿代わりに良いだろうか。肉はそよ風程度の魔法で浮かせているところだが、さすがに食事中ずっとというのも気が散る。葉に清潔を使い、肉を乗せて子供らにはサイコロ状の肉が山になったものを。親の方にはステーキ状のものを数枚乗せて目の前においてやる。
「どうぞ」
アォン
べろりと頬を舐められこそばゆい。グレートボアの口の中は臭くて不快でたまらなかったが、こいつの挨拶は悪くないな。
隣に腰を下ろして、自分の分を風魔法と火魔法で熱を通していく。風は火の強さの調整もだが、肉を浮かせるためでもある。
表面を炙っていくと、肉のいい匂いが漂い始めた。腹を膨らませてアオテンになっていた子供らも、俺を何をしてるんだという目で食事をしていた親の方も、俺のこの肉から目が離せなくなっている。
忙しなく動く鼻が、肉の匂いに気を取られていると言うことを物語っていた。
「はは、旨そうだよな?」
いい具合に炙られた肉を頬張ると、じゅわりと口の中に油が広がったが、意外としつこくない。そして肉は固くなっていないので、噛み千切りやすい。肉の味も噛めば噛むほど塩味を感じられるので、旨い。思ってたより旨い。
「ほお……」
クゥン
隣から頭をぐいぐいと押し付けてくるものだから、くくくと笑いをかみ殺しながら親用にと置いてやった肉の残っているものを同じように炙ってやる。
それを見ていた子供らも、当然ながら俺のそばに陳情しにやってきた。きゃんきゃんまろびあいながらやってくる子供らには、サイコロをさらに薄くした分をやった。さすがに消化がおいついてないだろうから、味見程度で良いだろう。まあ、すぐ暴れて消化して、腹が減ったって言いそうだけど。
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