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第五章 二人の行方
海デート④
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「ふんふっふーん♪」
鼻歌を弾ませながら、浜辺に横たわった僕に砂をかけていく明希。
海水の湿り気を帯びた砂の感触が僕を包んでいく。
「……まあ、これも定番だよな」
「うんっ! 一度やってみたかったんだー」
明希は大変ご機嫌なご様子。
これなら埋められがいがあるかも?
「お加減はいかがですか~?」
「大丈夫だ」
「痒いところがありましたら遠慮なくお申し付けください」
「美容室か!」
そんなやり取りをしている間にもしっかりガッチリと埋め固められていく。
そして……。
「かーんせーい!」
明希が達成感に満ちた声を上げる。
どうやら完全に埋め終わったらしい。
顔だけ出した状態の僕には自分の目で自分の姿を確認することはできないが、全身にずっしりとした重みを感じるから相当念入りに埋められているらしい。
そんな推測をしていると、明希がなにやら怪しげに笑い出した。
「ふっふっふ。これで渡はもう逃げられない」
「別に普段も逃げないだろ」
「まあそうだけど。と、とにかく、渡はもう逃げられないのだ!」
言い放って、明希は僕の上に跨ってきた。
「お、おい、明希……ん――」
突然の行動に戸惑う僕の声を、明希はキスで遮った。
それはほんの数秒の口付けだったが、僕の体は一気に熱を帯びた。
唇を離した直後の明希の蠱惑的な表情。
下から見上げる水着姿。
きめ細やかな明希の白い肌、なだらかな膨らみ。
その全てが僕を魅了し、思考を奪っていく。
「ちゅっ……んっ、んっ……」
夏空の下、明希は大胆になって僕にキスの雨を降らせる。
何度も、何度も。
息継ぎさえももどかしい程に唇を重ね合わせ、互いの存在を確認していく。
愛おしく、大切な存在。
ひたむきに頑張る背中は僕の道しるべで。
元気に話しかけてくる彼女――その笑顔はずっと隣にいて欲しい、ずっと一緒にいたいと心から願う存在。
そんな存在を、僕は一度――。
頭に何かがよぎった瞬間。
不意に、震えが伝わってきた。
合わせていた明希の唇からだった。
そして、次の瞬間、温かいものが僕の頬を濡らす。
明希の涙だった。
「明希?」
「なんでもない……なんでもないから」
震える声で、それでも気丈に言葉を繰る明希。
明らかな強がり。
だが、僕は涙の理由を訊くことができない。
心がざわつく。
訊いてはいけないような気がした。
「もう少しだけ……もう少しだけ、このままで……」
何も言えないでいる僕に、明希が静かに訴えてくる。
「あ、ああ」
僕の返答を得て、明希はもう一度唇を重ねてくる。
明希の涙が、そして僕の心が落ち着くまで、僕たちは互いの唇を優しく触れ合わせ続けた。
♢
その後、僕たちは全力で遊んだ。
思い切りはしゃぎ回って体力を使い果たし、旅館に着くとすぐに眠りに落ちてしまった。
僕と明希の初めての旅行。
明希にとって初めての海。
そんな夏が静かに終わる。
鼻歌を弾ませながら、浜辺に横たわった僕に砂をかけていく明希。
海水の湿り気を帯びた砂の感触が僕を包んでいく。
「……まあ、これも定番だよな」
「うんっ! 一度やってみたかったんだー」
明希は大変ご機嫌なご様子。
これなら埋められがいがあるかも?
「お加減はいかがですか~?」
「大丈夫だ」
「痒いところがありましたら遠慮なくお申し付けください」
「美容室か!」
そんなやり取りをしている間にもしっかりガッチリと埋め固められていく。
そして……。
「かーんせーい!」
明希が達成感に満ちた声を上げる。
どうやら完全に埋め終わったらしい。
顔だけ出した状態の僕には自分の目で自分の姿を確認することはできないが、全身にずっしりとした重みを感じるから相当念入りに埋められているらしい。
そんな推測をしていると、明希がなにやら怪しげに笑い出した。
「ふっふっふ。これで渡はもう逃げられない」
「別に普段も逃げないだろ」
「まあそうだけど。と、とにかく、渡はもう逃げられないのだ!」
言い放って、明希は僕の上に跨ってきた。
「お、おい、明希……ん――」
突然の行動に戸惑う僕の声を、明希はキスで遮った。
それはほんの数秒の口付けだったが、僕の体は一気に熱を帯びた。
唇を離した直後の明希の蠱惑的な表情。
下から見上げる水着姿。
きめ細やかな明希の白い肌、なだらかな膨らみ。
その全てが僕を魅了し、思考を奪っていく。
「ちゅっ……んっ、んっ……」
夏空の下、明希は大胆になって僕にキスの雨を降らせる。
何度も、何度も。
息継ぎさえももどかしい程に唇を重ね合わせ、互いの存在を確認していく。
愛おしく、大切な存在。
ひたむきに頑張る背中は僕の道しるべで。
元気に話しかけてくる彼女――その笑顔はずっと隣にいて欲しい、ずっと一緒にいたいと心から願う存在。
そんな存在を、僕は一度――。
頭に何かがよぎった瞬間。
不意に、震えが伝わってきた。
合わせていた明希の唇からだった。
そして、次の瞬間、温かいものが僕の頬を濡らす。
明希の涙だった。
「明希?」
「なんでもない……なんでもないから」
震える声で、それでも気丈に言葉を繰る明希。
明らかな強がり。
だが、僕は涙の理由を訊くことができない。
心がざわつく。
訊いてはいけないような気がした。
「もう少しだけ……もう少しだけ、このままで……」
何も言えないでいる僕に、明希が静かに訴えてくる。
「あ、ああ」
僕の返答を得て、明希はもう一度唇を重ねてくる。
明希の涙が、そして僕の心が落ち着くまで、僕たちは互いの唇を優しく触れ合わせ続けた。
♢
その後、僕たちは全力で遊んだ。
思い切りはしゃぎ回って体力を使い果たし、旅館に着くとすぐに眠りに落ちてしまった。
僕と明希の初めての旅行。
明希にとって初めての海。
そんな夏が静かに終わる。
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