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第四章 幸せな日々
明希と初詣①
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クリスマスの翌日に行われた終業式を経て、冬休みに入った。
年末というのは忙しなく、あっという間に時間は過ぎ、年が明けた。
「あけましておめでとーっ!」
澄み渡る冬空の下、明希の元気な声が僕を出迎えてくれる。
「あけましておめでとう、明希」
僕がそう応じると、明希はお馴染みの笑顔を浮かべてくれる。
明希は外出用のコートを羽織り、その下から丈の長いスカートが覗いている。
この季節だから黒のストッキングも着用している。
そして、クリスマスに僕がプレゼントしたマフラーや手袋なんかも身に付けてくれている。
……なんか、嬉しいな。
僕も明希に貰った懐中時計を持ってきている。
片手をポケットに入れ、時計を指先でそっと撫でた。
「それじゃ、行こっか」
「ああ」
明希の言葉に頷く。
それから自然に明希の手を握り、歩き出す。
僕たちは初詣に行く約束をしていた。
明希は受験がすぐそこに迫っているからのんびりお正月デートとはいかないが、それでも合格祈願に神社を参拝しようという話しになったのだ。
「おせちの具、何が好きー? アタシは黒豆っ!」
神社への道すがら、明希が訊ねてくる。
「うーん、数の子かな」
「渡は数の子好きなんだ、数の子、おいしいよねっ!」
「ああ」
「数の子にはね、子孫繫栄っていう願掛けがされてるんだよっ」
「へえ……じゃ、黒豆は?」
「無病息災っ!」
「そうなのか。じゃ、いっぱい食べなきゃな」
「うんっ!」
正月に関する話題で盛り上がっているうちに、神社へとたどり着く。
「うわぁ、人いっぱいだね」
「だな。はぐれるなよ」
「大丈夫だよっ、手、繋いでるからっ」
そう言って、明希は嬉しそうに笑う。
手水舎で身を浄めた後、参拝客の列へと並ぶ。
「晴れ着の人けっこういる……アタシも、来年はそうしよっかな」
明希が周囲に目をやりながら口にする。
「明希の晴れ着姿か……楽しみだ」
「そ、そう!? なら、来年は晴れ着にするねっ」
「ああ、期待してる」
「来年は渡が受験生だからね。アタシの晴れ着姿でラストスパート分の元気が出るといいなっ」
言葉を弾ませる明希と共に笑い合う。
年が明けたばかりだというのに、もう来年の話をしているなんて、ちょっと可笑しい。
けど、なんかいいな。未来のことを笑って話せるのは。
前向きというか、希望にあふれてるというか。
そんな風に雑談をしているうちに、僕たちの順番がやってきた。
お賽銭を投げ込み、二礼二拍。
それから手を合わせて。
――明希の受験が上手くいきますように。
そうお願いして、最後に一礼。
明希の参拝が終わるのを待って、一緒に列を離れた。
年末というのは忙しなく、あっという間に時間は過ぎ、年が明けた。
「あけましておめでとーっ!」
澄み渡る冬空の下、明希の元気な声が僕を出迎えてくれる。
「あけましておめでとう、明希」
僕がそう応じると、明希はお馴染みの笑顔を浮かべてくれる。
明希は外出用のコートを羽織り、その下から丈の長いスカートが覗いている。
この季節だから黒のストッキングも着用している。
そして、クリスマスに僕がプレゼントしたマフラーや手袋なんかも身に付けてくれている。
……なんか、嬉しいな。
僕も明希に貰った懐中時計を持ってきている。
片手をポケットに入れ、時計を指先でそっと撫でた。
「それじゃ、行こっか」
「ああ」
明希の言葉に頷く。
それから自然に明希の手を握り、歩き出す。
僕たちは初詣に行く約束をしていた。
明希は受験がすぐそこに迫っているからのんびりお正月デートとはいかないが、それでも合格祈願に神社を参拝しようという話しになったのだ。
「おせちの具、何が好きー? アタシは黒豆っ!」
神社への道すがら、明希が訊ねてくる。
「うーん、数の子かな」
「渡は数の子好きなんだ、数の子、おいしいよねっ!」
「ああ」
「数の子にはね、子孫繫栄っていう願掛けがされてるんだよっ」
「へえ……じゃ、黒豆は?」
「無病息災っ!」
「そうなのか。じゃ、いっぱい食べなきゃな」
「うんっ!」
正月に関する話題で盛り上がっているうちに、神社へとたどり着く。
「うわぁ、人いっぱいだね」
「だな。はぐれるなよ」
「大丈夫だよっ、手、繋いでるからっ」
そう言って、明希は嬉しそうに笑う。
手水舎で身を浄めた後、参拝客の列へと並ぶ。
「晴れ着の人けっこういる……アタシも、来年はそうしよっかな」
明希が周囲に目をやりながら口にする。
「明希の晴れ着姿か……楽しみだ」
「そ、そう!? なら、来年は晴れ着にするねっ」
「ああ、期待してる」
「来年は渡が受験生だからね。アタシの晴れ着姿でラストスパート分の元気が出るといいなっ」
言葉を弾ませる明希と共に笑い合う。
年が明けたばかりだというのに、もう来年の話をしているなんて、ちょっと可笑しい。
けど、なんかいいな。未来のことを笑って話せるのは。
前向きというか、希望にあふれてるというか。
そんな風に雑談をしているうちに、僕たちの順番がやってきた。
お賽銭を投げ込み、二礼二拍。
それから手を合わせて。
――明希の受験が上手くいきますように。
そうお願いして、最後に一礼。
明希の参拝が終わるのを待って、一緒に列を離れた。
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