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第三章 恋人になった
休日デート②
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映画が終わった後、僕と優は近くのカフェへと移動した。
落ち着いたクラシックミュージックが流れる店内。
ウェイトレスさんに案内され、角のテーブルへ。
優がワンピースのスカート部分を慣れた手つきで押さえながら着席した。
僕も向かいの席に座る。
「オシャレなお店ー」
柔らかな表情で店内を見渡しながら、優が感嘆の声をもらす。
「カフェって来慣れてないけど、落ち着く感じする。うん、いい雰囲気」
「あはは、男子はあんまりこういうとこ来ないよねー」
「だね。彼女連れじゃないと、来る機会無いよ」
「か、彼女……えへへ……」
何気なく口にした彼女というワードに、優は頬を赤らめ、視線を彷徨わせる。
どうやら照れているようだ。
その様子を微笑ましく見ていると、優の視線が脇に置かれたメニューへと留まった。
「……あ、注文しよ、注文」
言って、優はテーブルの中央にメニューを広げる。
二人でメニューをチェックし、軽食とドリンクを注文。
先にドリンクが運ばれてきて、それを飲んで一息入れる。
僕のがコーヒーで、優のは紅茶だ。
それから、先ほど観た映画の感想を交換し始めた。
映画はこういう内容だった。
順風満帆に思えたカップル。しかし、ヒロインが事故に遭ってしまう。
一命を取り留めたヒロインだが、外傷が完治してもなお目を覚まさない。
ヒロインの目覚めを切望する主人公。
けれど彼の精神力は次第にすり減っていく。
限界を迎えた彼は、気が付くと幻想的な場所にいた。
そこは夢の中。ヒロインの魂が囚われた迷宮世界だった。
苦難の末、主人公はヒロインを救い出すことに成功し、二人で迷宮から脱出。現実世界へと帰還した。
最後に目覚めたヒロインと永遠を誓うキスを交わしてハッピーエンドを迎える。
「夢の迷宮世界、あれすごくファンタスティックだったよねーああいう世界、憧れちゃうなー」
夢見心地な口調の優に、頷き、言葉を返す。
「あれだけ作り込まれてると、見てて引き込まれちゃうよね」
「うん! わたし、ハラハラドキドキしっぱなしだったもん。特に、脱出直前のとこ」
「階段のシーン?」
「そう! 二人手を取り合いながら、一気に駆け上がるっ! 心臓バクバクだったよー」
語りながら、優は胸に手を当てる。
映画館での感覚が蘇ってきたようだ。
「わかる。ほんとに間一髪だったよねっ」
「うん、二人とも無事に現実に戻れてよかったよー」
料理が運ばれてきてからも、優は映画の感想を次々と口にしていた。
楽しんでもらえたようで、何よりだ。
落ち着いたクラシックミュージックが流れる店内。
ウェイトレスさんに案内され、角のテーブルへ。
優がワンピースのスカート部分を慣れた手つきで押さえながら着席した。
僕も向かいの席に座る。
「オシャレなお店ー」
柔らかな表情で店内を見渡しながら、優が感嘆の声をもらす。
「カフェって来慣れてないけど、落ち着く感じする。うん、いい雰囲気」
「あはは、男子はあんまりこういうとこ来ないよねー」
「だね。彼女連れじゃないと、来る機会無いよ」
「か、彼女……えへへ……」
何気なく口にした彼女というワードに、優は頬を赤らめ、視線を彷徨わせる。
どうやら照れているようだ。
その様子を微笑ましく見ていると、優の視線が脇に置かれたメニューへと留まった。
「……あ、注文しよ、注文」
言って、優はテーブルの中央にメニューを広げる。
二人でメニューをチェックし、軽食とドリンクを注文。
先にドリンクが運ばれてきて、それを飲んで一息入れる。
僕のがコーヒーで、優のは紅茶だ。
それから、先ほど観た映画の感想を交換し始めた。
映画はこういう内容だった。
順風満帆に思えたカップル。しかし、ヒロインが事故に遭ってしまう。
一命を取り留めたヒロインだが、外傷が完治してもなお目を覚まさない。
ヒロインの目覚めを切望する主人公。
けれど彼の精神力は次第にすり減っていく。
限界を迎えた彼は、気が付くと幻想的な場所にいた。
そこは夢の中。ヒロインの魂が囚われた迷宮世界だった。
苦難の末、主人公はヒロインを救い出すことに成功し、二人で迷宮から脱出。現実世界へと帰還した。
最後に目覚めたヒロインと永遠を誓うキスを交わしてハッピーエンドを迎える。
「夢の迷宮世界、あれすごくファンタスティックだったよねーああいう世界、憧れちゃうなー」
夢見心地な口調の優に、頷き、言葉を返す。
「あれだけ作り込まれてると、見てて引き込まれちゃうよね」
「うん! わたし、ハラハラドキドキしっぱなしだったもん。特に、脱出直前のとこ」
「階段のシーン?」
「そう! 二人手を取り合いながら、一気に駆け上がるっ! 心臓バクバクだったよー」
語りながら、優は胸に手を当てる。
映画館での感覚が蘇ってきたようだ。
「わかる。ほんとに間一髪だったよねっ」
「うん、二人とも無事に現実に戻れてよかったよー」
料理が運ばれてきてからも、優は映画の感想を次々と口にしていた。
楽しんでもらえたようで、何よりだ。
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