[完結]ナナシズswitch

深山ナオ

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13 もうダイエットしなくてもいいんだ!

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「……。元に戻ったんだ?」
 
 試着室の前。
 ナナは一度自分の手のひらを見て、それから思い出したように試着室の鏡を見た。

 そこに映る自分の姿は、確かにナナのもの。
 癖毛で小柄で、静流が選んでくれた黒い水着を着たナナだった。

「……戻ったわね」

 微睡みから目覚めた直後のようにぼんやりした静流の声。
 目の前にいた静流も試着室の鏡を覗き込んで、そう呟いた。
 
「……なんだか、あっさり戻ったんだ」
「そう、ね。階段から落ちる過程、必要なかったわね……」
「本当に無駄に痛かっただけなんだ……」

 言って、ナナは考える。
 戻れた理由はたぶん、ナナが自分の魅力に気付いたから。
 若干コンプレックスだった背丈の小ささや見た目の幼さを、静流が強みに変えてみせてくれたから。
 ナナはさっき、ナナの身体に戻ってあの水着を着てみたいって、そう思ったんだ。

 そしてきっと、静流も同じように感じてくれたんだと思う。
 ナナが選んだ水着を、いいなあ、着てみたいなあって思ってくれたんだと思う。

「……これ買って帰りましょうか」
「そだな」


 頷き合ってそれぞれ試着室に戻り、制服に着替え直す。
 それからお会計を済ませ、ショッピングモールをあとにした。

「静流が選んでくれた水着、ずっと大切にするんだ……」

 外はすっかり夕日色。
 ちょっとくらい恥ずかしいことを言っても、顔色だけは隠してくれる……。
 
「奈々……。私も、奈々が選んでくれた水着、大切にするわ」
「……静流はきっと、来年にはサイズが変わってるんだ」
「さすがにそろそろ止まるわよ……たぶん」
「まあ、変わってたらナナがもう一度選んであげるんだ」
「そうね。そのときはお願いするわ」

 こうしてナナたちの不思議な入れ替わり生活は終わりを迎えたんだ。
 
 
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