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それが兄の役割ですよね
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キッチンから、揚げ物の音がした。
刹火が作る唐揚げはサックリジューシーでめちゃくちゃ美味い。
美味しいものを二人で食べて、刹火との間に蟠る気まずさが解消されればいいな。
淡い期待を抱きながらいったん二階へ。
スマホが着信ランプを点滅させている。
沙条さん――詩織さんがからのメッセージが届いていた。
――今日はありがとうございました。
黒羽君とのデート、とっても幸せでした。
夜になったら、電話してもいいですか?
ほんとはすぐに話したいけど、勉強もしなきゃなので、少しだけ……。
俺はすぐに返事を打った。夜の通話を楽しみにしているという言葉を添えて。
それから、詩織さんにプレゼントしてもらった帽子を取り出し、意味もなく眺めた。
人生初の彼女からのプレゼント。
締まりのない顔でそれを眺める俺は、傍から見たらさぞキモかっただろう。
そして、夕食の時間。
食卓には、唐揚げの他に、刺身の盛り合わせまで並んだ。
「……すげぇ豪華だな」
豪勢なラインナップに、思わず言葉が漏れる。
そんな俺に、刹火はおずおずと窺うような視線を向け、口を開いた。
「お兄ちゃん、あのね。あたし、お兄ちゃんと喧嘩したかったわけじゃないんだよ。ただ、好きだから……ずっとずっと大好きだから……これからも仲良しでいたいんだ。ずっと一緒にいたい……お兄ちゃんと一緒に暮らしたい。それだけ……ただそれだけなんだ」
「刹火……」
妹の素直な言葉が、兄心にグッとくる。
俺もしっかり気持ちを伝えて、刹火と仲直りしなければ……。
意を決し、刹火に語りかける。
「俺だってそうだ。刹火とはずっと仲良しでいたい。当たり前だ。今日、俺は刹火を𠮟ったけれど、それは刹火が憎かったわけじゃない。ただ、妹がしてはいけないことをしていたら、兄は叱らねばならない」
刹火は小さく頷く。
「うん……わかるよ、お兄ちゃん。これまでだって、何度もそうしてきてくれたよね」
「そうだ。だから、刹火がいけないことをしたら、俺はお前を叱る。それはいつまで経ってもそうだ」
「……ごめんなさい、面倒な役をさせて」
申し訳なさそうに俯く刹火。
俺は刹火の頭をそっと撫でた
「いいんだ。代わりに、俺が間違えたら、刹火が正してくれ。きっとそれが、兄妹ってものだ」
「お兄ちゃん……」
刹火が顔をあげる。
薄い笑みと、濡れた瞳。
零れてしまう前に、俺は刹火に声をかけた。
「さ、せっかくのご馳走だ。冷めないうちに食べようぜ」
「うんっ!」
こうして、俺たちはわだかまりを解消し、スッキリした気分で豪勢な飯を頬張った。
唐揚げと刺身の絶対的な美味さに、つい食べ過ぎてしまった。
食後、俺は少し食休みする気で、自室のベッドに横になったが、疲労感と満腹感から、とたんに眠気が襲ってきて、あっという間に眠りへと落ちて行った。
刹火が作る唐揚げはサックリジューシーでめちゃくちゃ美味い。
美味しいものを二人で食べて、刹火との間に蟠る気まずさが解消されればいいな。
淡い期待を抱きながらいったん二階へ。
スマホが着信ランプを点滅させている。
沙条さん――詩織さんがからのメッセージが届いていた。
――今日はありがとうございました。
黒羽君とのデート、とっても幸せでした。
夜になったら、電話してもいいですか?
ほんとはすぐに話したいけど、勉強もしなきゃなので、少しだけ……。
俺はすぐに返事を打った。夜の通話を楽しみにしているという言葉を添えて。
それから、詩織さんにプレゼントしてもらった帽子を取り出し、意味もなく眺めた。
人生初の彼女からのプレゼント。
締まりのない顔でそれを眺める俺は、傍から見たらさぞキモかっただろう。
そして、夕食の時間。
食卓には、唐揚げの他に、刺身の盛り合わせまで並んだ。
「……すげぇ豪華だな」
豪勢なラインナップに、思わず言葉が漏れる。
そんな俺に、刹火はおずおずと窺うような視線を向け、口を開いた。
「お兄ちゃん、あのね。あたし、お兄ちゃんと喧嘩したかったわけじゃないんだよ。ただ、好きだから……ずっとずっと大好きだから……これからも仲良しでいたいんだ。ずっと一緒にいたい……お兄ちゃんと一緒に暮らしたい。それだけ……ただそれだけなんだ」
「刹火……」
妹の素直な言葉が、兄心にグッとくる。
俺もしっかり気持ちを伝えて、刹火と仲直りしなければ……。
意を決し、刹火に語りかける。
「俺だってそうだ。刹火とはずっと仲良しでいたい。当たり前だ。今日、俺は刹火を𠮟ったけれど、それは刹火が憎かったわけじゃない。ただ、妹がしてはいけないことをしていたら、兄は叱らねばならない」
刹火は小さく頷く。
「うん……わかるよ、お兄ちゃん。これまでだって、何度もそうしてきてくれたよね」
「そうだ。だから、刹火がいけないことをしたら、俺はお前を叱る。それはいつまで経ってもそうだ」
「……ごめんなさい、面倒な役をさせて」
申し訳なさそうに俯く刹火。
俺は刹火の頭をそっと撫でた
「いいんだ。代わりに、俺が間違えたら、刹火が正してくれ。きっとそれが、兄妹ってものだ」
「お兄ちゃん……」
刹火が顔をあげる。
薄い笑みと、濡れた瞳。
零れてしまう前に、俺は刹火に声をかけた。
「さ、せっかくのご馳走だ。冷めないうちに食べようぜ」
「うんっ!」
こうして、俺たちはわだかまりを解消し、スッキリした気分で豪勢な飯を頬張った。
唐揚げと刺身の絶対的な美味さに、つい食べ過ぎてしまった。
食後、俺は少し食休みする気で、自室のベッドに横になったが、疲労感と満腹感から、とたんに眠気が襲ってきて、あっという間に眠りへと落ちて行った。
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