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順調そうでなによりですね

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「明日から夏休みですね」

 下校中。隣を歩く沙条さんが嬉しそうに目を細める。

 今月のはじめに俺に告白してきたクラスメイトの沙条詩織さじょうしおりさん。

 肩にかかる黒髪ボブヘアーの、少し小柄な美少女。
 
 容姿端麗、成績優秀、性格も良し、と三拍子揃った彼女は学内でも人気が高い。

 彼女と付き合い始めてから二週間になる。

 休み時間に言葉を交わし、放課後に二人肩を並べて帰路につく。 

 そんな時間が日常となり、俺たちの仲は深まりつつある。
 
「沙条さんでも嬉しいんだ、夏休み。優等生なのに」

 成績優秀で、セーラー服を着崩すこともない、真面目な彼女を少しからかう。

「嬉しいですよ、優等生でも。黒羽くんと過ごす初めての夏休みですもの」

 前半の言葉は冗談交じりに、後半は幸せそうに言って、沙条さんは幸せそうに微笑む。

「それで……で、デートのお話なのですけれど」
 
 沙条さんが少し照れながら口を開く。

 夏休みにデートをしようと前々から話していたのだが、日程が決まっていなかった。沙条さんの日程次第だった。

「来週の金曜日はいかがでしょうか?」
「ちょうど一週間後か。うん、大丈夫」
 
 俺の言葉を受けて、沙条さんは安心したように微笑む。
 それを見て俺も自然と口元が緩む。

「前話してた通り、映画を見に行く、でいいのかな?」
 
 沙条さんにデート内容を確認する。

「はい!」

 勢いよく頷きを返す沙条さん。
 
「あ、でも……」
「ん?」 
「できれば映画の後も食事をしたり、ショッピングをしたりして、黒羽くんと一緒にいられたら嬉しいです」
「もちろん。俺もそのつもりだった」

 俺の返事を訊いて、沙条さんの表情がぱあっと華やぐ。
 彼女が嬉しそうにしていると、俺も胸が温かくなる。
 デートの予定を立てるだけで心が躍り、未来から眩しい光が差す。

 ああ、これが付き合うってことか。

 一学期最後の日。
 沙条さんとのデートに思いを馳せ、幸せを感じながら、沙条さんを駅まで送り届けた。

 
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