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初めてのクエスト①

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 筋肉痛が治った僕は、今日も特訓場でリコさんに稽古をつけてもらっていた。
 リコさんの怒涛の連撃を、僕は木の短剣を使って受けていく。全ての攻撃を受けきり、リコさんが攻撃を止める。
「なかなか良い動きになってきたじゃないか。これなら簡単なクエストくらいは問題なくこなせるよ」
 さっぱりとした笑顔を見せた後、リコさんはこう付け加えた。
「今から行ってみるかい?」

 ♢

 マッチョ門番のいる南の門から町を出て、緩やかな上り坂を数十分程歩いた。道中、スライムが数匹いたが襲ってくるようなことはなかったのでスルーして進んだ。
 今回のクエストはゴブリン討伐。ゲームなんかだと雑魚キャラとして登場することが多いが、リコさんが教えてくれた情報によると、小さくてすばしっこく、ナイフや斧などの武器を持っていることもあるので、戦闘訓練をしていないと倒すのは難しいらしい。
 しばくして森に辿り着くと、リコさんは、
「ここからは周囲をよく警戒して。木陰から敵が襲ってくることもあるから」
 と、僕に忠告した。普段と違って真剣な面持ちのリコさんを見て、緊張感がこみあげてくる。恐らくこの森で戦闘になるのだろう。気を引き締めていかなくては。

 ♢

 どれだけ歩いただろうか。背の高い木々が生い茂る、薄暗い道。どれだけ歩いてもほとんど変わり映えしない足場の悪い道を、セミの鳴き声を聞きながら進んだ。リスやウサギなどの小動物や普通の虫なんかはたくさん見る一方で、ゴブリンや、その他の敵となるような生物とは1匹も出会わなかった。
「……。いませんね、ゴブリン」
 そう尋ねた僕の声は、疲れが溜まった声だった。
「これは誰かが狩りまくってるんだろうね」
 そう言って、短い茶髪を指でくるくると弄るリコさん。疲れたような、というか、退屈そうな表情だ。
「もう少し行くと湖があるんだ。そこで一旦休憩しようか」

 ♢

 森が開けたところに大きな湖があった。周囲を森に囲まれた湖は、太陽の光を反射してきらきらと光っていた。近づいて覗き込んでみると、よく澄んだ水の中に小さな魚が数匹泳いでいるのが見えた。リコさんも近づいてきて、空になった水筒に水を汲んだ。僕も水筒に残っていた水を飲み干し、新たに水を汲み入れた。
「弁当を持ってきているのだけど、食べるかい?」
 いつもの明るい表情で、リコさんが尋ねてくる。
「ありがとうございます!いただきます」
 と、返事をしたところで、ふと尿意を感じた。
「その前に、用を足してきますね」
 席を立って森の方へ向かう。
 リコさんは、「遠くには行かないようにね」とだけ忠告した。

 ♢

 森に戻ってすぐのことだ。奥から何か来る気配を感じた。
 僕は慌てて木陰に身を隠した。そして、息を潜めてそこから様子を窺った。
 ごそごそと茂みをかき分けて、姿を現したのは、薄水色のショートヘアの小柄な女の子。朝、いつもティナを迎えに来るミアだった。
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