11 / 18
初めてのクエスト①
しおりを挟む
筋肉痛が治った僕は、今日も特訓場でリコさんに稽古をつけてもらっていた。
リコさんの怒涛の連撃を、僕は木の短剣を使って受けていく。全ての攻撃を受けきり、リコさんが攻撃を止める。
「なかなか良い動きになってきたじゃないか。これなら簡単なクエストくらいは問題なくこなせるよ」
さっぱりとした笑顔を見せた後、リコさんはこう付け加えた。
「今から行ってみるかい?」
♢
マッチョ門番のいる南の門から町を出て、緩やかな上り坂を数十分程歩いた。道中、スライムが数匹いたが襲ってくるようなことはなかったのでスルーして進んだ。
今回のクエストはゴブリン討伐。ゲームなんかだと雑魚キャラとして登場することが多いが、リコさんが教えてくれた情報によると、小さくてすばしっこく、ナイフや斧などの武器を持っていることもあるので、戦闘訓練をしていないと倒すのは難しいらしい。
しばくして森に辿り着くと、リコさんは、
「ここからは周囲をよく警戒して。木陰から敵が襲ってくることもあるから」
と、僕に忠告した。普段と違って真剣な面持ちのリコさんを見て、緊張感がこみあげてくる。恐らくこの森で戦闘になるのだろう。気を引き締めていかなくては。
♢
どれだけ歩いただろうか。背の高い木々が生い茂る、薄暗い道。どれだけ歩いてもほとんど変わり映えしない足場の悪い道を、セミの鳴き声を聞きながら進んだ。リスやウサギなどの小動物や普通の虫なんかはたくさん見る一方で、ゴブリンや、その他の敵となるような生物とは1匹も出会わなかった。
「……。いませんね、ゴブリン」
そう尋ねた僕の声は、疲れが溜まった声だった。
「これは誰かが狩りまくってるんだろうね」
そう言って、短い茶髪を指でくるくると弄るリコさん。疲れたような、というか、退屈そうな表情だ。
「もう少し行くと湖があるんだ。そこで一旦休憩しようか」
♢
森が開けたところに大きな湖があった。周囲を森に囲まれた湖は、太陽の光を反射してきらきらと光っていた。近づいて覗き込んでみると、よく澄んだ水の中に小さな魚が数匹泳いでいるのが見えた。リコさんも近づいてきて、空になった水筒に水を汲んだ。僕も水筒に残っていた水を飲み干し、新たに水を汲み入れた。
「弁当を持ってきているのだけど、食べるかい?」
いつもの明るい表情で、リコさんが尋ねてくる。
「ありがとうございます!いただきます」
と、返事をしたところで、ふと尿意を感じた。
「その前に、用を足してきますね」
席を立って森の方へ向かう。
リコさんは、「遠くには行かないようにね」とだけ忠告した。
♢
森に戻ってすぐのことだ。奥から何か来る気配を感じた。
僕は慌てて木陰に身を隠した。そして、息を潜めてそこから様子を窺った。
ごそごそと茂みをかき分けて、姿を現したのは、薄水色のショートヘアの小柄な女の子。朝、いつもティナを迎えに来るミアだった。
リコさんの怒涛の連撃を、僕は木の短剣を使って受けていく。全ての攻撃を受けきり、リコさんが攻撃を止める。
「なかなか良い動きになってきたじゃないか。これなら簡単なクエストくらいは問題なくこなせるよ」
さっぱりとした笑顔を見せた後、リコさんはこう付け加えた。
「今から行ってみるかい?」
♢
マッチョ門番のいる南の門から町を出て、緩やかな上り坂を数十分程歩いた。道中、スライムが数匹いたが襲ってくるようなことはなかったのでスルーして進んだ。
今回のクエストはゴブリン討伐。ゲームなんかだと雑魚キャラとして登場することが多いが、リコさんが教えてくれた情報によると、小さくてすばしっこく、ナイフや斧などの武器を持っていることもあるので、戦闘訓練をしていないと倒すのは難しいらしい。
しばくして森に辿り着くと、リコさんは、
「ここからは周囲をよく警戒して。木陰から敵が襲ってくることもあるから」
と、僕に忠告した。普段と違って真剣な面持ちのリコさんを見て、緊張感がこみあげてくる。恐らくこの森で戦闘になるのだろう。気を引き締めていかなくては。
♢
どれだけ歩いただろうか。背の高い木々が生い茂る、薄暗い道。どれだけ歩いてもほとんど変わり映えしない足場の悪い道を、セミの鳴き声を聞きながら進んだ。リスやウサギなどの小動物や普通の虫なんかはたくさん見る一方で、ゴブリンや、その他の敵となるような生物とは1匹も出会わなかった。
「……。いませんね、ゴブリン」
そう尋ねた僕の声は、疲れが溜まった声だった。
「これは誰かが狩りまくってるんだろうね」
そう言って、短い茶髪を指でくるくると弄るリコさん。疲れたような、というか、退屈そうな表情だ。
「もう少し行くと湖があるんだ。そこで一旦休憩しようか」
♢
森が開けたところに大きな湖があった。周囲を森に囲まれた湖は、太陽の光を反射してきらきらと光っていた。近づいて覗き込んでみると、よく澄んだ水の中に小さな魚が数匹泳いでいるのが見えた。リコさんも近づいてきて、空になった水筒に水を汲んだ。僕も水筒に残っていた水を飲み干し、新たに水を汲み入れた。
「弁当を持ってきているのだけど、食べるかい?」
いつもの明るい表情で、リコさんが尋ねてくる。
「ありがとうございます!いただきます」
と、返事をしたところで、ふと尿意を感じた。
「その前に、用を足してきますね」
席を立って森の方へ向かう。
リコさんは、「遠くには行かないようにね」とだけ忠告した。
♢
森に戻ってすぐのことだ。奥から何か来る気配を感じた。
僕は慌てて木陰に身を隠した。そして、息を潜めてそこから様子を窺った。
ごそごそと茂みをかき分けて、姿を現したのは、薄水色のショートヘアの小柄な女の子。朝、いつもティナを迎えに来るミアだった。
0
お気に入りに追加
135
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
エクササイズマシン発表会
リビドー360
恋愛
ひょんなことから新型のエクササイズマシンのプレゼンをすることになった女子大生のリホと、リホの幼馴染でちょっとエッチな発明家のワタル。 プレゼン会場では大勢の観衆が見守る中、ワタルがマシンに細工した数々のエロエロな仕掛けがリホを襲う。 80年代のちょっとエッチな少年漫画をオマージュし、そこに少し過激度を加えたお話です。 パクリじゃないよ!インスパイアだよ!
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
オークションで競り落とされた巨乳エルフは少年の玩具となる。【完結】
ちゃむにい
恋愛
リリアナは奴隷商人に高く売られて、闇オークションで競りにかけられることになった。まるで踊り子のような露出の高い下着を身に着けたリリアナは手錠をされ、首輪をした。
※ムーンライトノベルにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる