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来客

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 翌日の朝。ティナと二人で、朝食のクロワッサンを食べていたときのこと。
トントンと、誰かが玄関をノックした。

「はーい」

 ティナが返事をし、早足で玄関に向かった。

「おはようございます!お姉さま」

 座っている僕の背後から、女の子のはきはきとした挨拶が聞こえてくる。

「おはよう、ミア。今、朝食を食べてるところだから、あがって待ってて」
「それじゃあ、お邪魔しまーす!」

 二人分の足音とがして、部屋のドアが開いた。
 見るとティナと一緒にもう一人。小柄な女の子が入ってきた。
 薄い水色のショートヘア。身長はティナの肩くらいで、線の細い体つきだ。白地に水色のラインが入っている半袖の、女学生のセーラー服のような服装をしている。丈の短いスカートから露出している、引き締まった健康的な太ももが神々しい。

 その少女と僕の目が合った。
 途端に彼女は大きな碧い眼を見開き、口をあわあわさせたかと思うと、

「キャーッ!おおお、お姉さまの家に、男が……、男の人がいます!!!」

 と、叫び声をあげた。

「ミア、落ち着いて」

 ティナがなだめようと、ミアと呼んでいる少女の、華奢な肩に両手をのせる。

「おおお、落ち着いてなんていられるものですか!この町の若い男性は、ドラゴンの討伐に失敗して、全員死んでしまったではないですか!お姉さま、一体どこから、男の人なんてつれてきたのですか!?」

 ミアは両手をパタパタと忙しなく動かしながらそう言った。

「いやー、昨日散歩してたら路頭に迷ってるのをみつけて……」
「そんなの、拾ってきちゃダメですよ!」

 ミアに叱られ、あはは、とぎこちない笑みを浮かべるティナ。
 それを見て、ミアがため息を一つつく。

「はぁ……まあいいです。それで、そこの男!お姉さまに、何もしてないでしょうね?」

 そう言ってミアは幼い顔を精一杯しかめ、敵対心剥き出しで僕の方を向いた。

「あの、えっと……、僕がしたというより……、僕がされたというか……、でも合意の上というか、えっと、ごにょごにょごにょ……」

 僕が事の成り行きを話すと、ミアの顔は見る見る真っ赤になり、小さな手でそれを覆い隠した。
 ティナは、相変わらずぎこちない笑みで固まってしまった。

 ♢

 それから二人が落ち着きを取り戻した後、朝食を済ませ、ティナはミアとお揃いの服を着た。二人が言うには、この服は戦闘服なのだそうで、今日は二人で、ゴブリン討伐のクエストへと向かうらしい。
 当然ティナの奴隷である僕も一緒に行くものだと思っていたが、

「あんたが来ても、足手まといになるだけよ」

 と、ミアに毒づかれ、ティナにも、

「キミを危険な目に合わせるわけにはいかないよー」

 と言われてしまった。

 それじゃあ、僕は今日、何をすればいい? と聞くと、

「町で適当に買い物してていいよ。お金あげるから」

 と、諭吉を一枚渡された。つーか日本円なのかよ……。

「夕方には帰ってくるからー」

 そう言い残し、二人は僕を置いて出発してしまった。
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