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最終話 前に進むために
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「……来てくれて、ありがとう」
月曜日の放課後。
祐一は夜霧に呼び出され、屋上へと足を運んだ。
そこで、待っていた女子生徒。
お団子髪の夜霧と向かい合う。
――きりちゃんの話しをちゃんと聞いて、ちゃんと答えてあげて。
彩香にはそう言われている。
今日は雨は降っていないが、空は曇に覆われ、風も出ている。
「私……祐一くんに言わなきゃいけないことがあるんだ……」
祐一は頷いて、言葉の続きを促す。
「それはきっと……言わない方が祐一くんにとってはいいことなのかもしれないけれど……私が、前に進むために……言わせてください……」
「わかった。俺もちゃんと聞く」
「……ありがとう。それじゃ……ちゃんと言う、ね……」
そう言うと、夜霧は祐一のことをより真剣な目で見つめ、胸に手を当てて口を開いた。
「私、好きです! ……祐一くんのことが、好きなんです……! 私みたいな日陰者に親身になってくれて……優しくしてくれる祐一くんが、大好きなんですっ……! この気持ちは……兄妹だってわかった今でも、消えてくれないんです……!」
意志の籠った瞳が、言葉よりもさらに強く気持ちを伝えてくる。
本当に好きになってくれたんだと祐一に実感させる。
けど……。
「景村さん、ごめん……俺、景村さんとは付き合えない」
祐一も本当の気持ちを口にする。
「兄妹だからとか、そういうこととは関係なく……俺には綾香がいるから。綾香のことがどうしようもなく好きだから――だから、景村さんとは付き合えない」
それを聞いた夜霧の瞳に涙が浮かび上がった。
けど、口の端を少しだけあげて……。
「……それじゃ、仕方ないね」
微笑みを湛えて、そう言う。
けれど、言葉と共に、夜霧の頬を涙が伝い落ちた。
その表情のままで、夜霧は言葉を続けた。
「……真剣に答えてくれて、ありがとう……しばらく引きずると思うけど、それは許して……」
「ああ」
祐一が頷くと、夜霧は制服の袖で目元を拭った。
それからもう一度、祐一の目を見つめなおして、言葉を発した。
「……それと、ひとつお願いがあります」
「お願い?」
「私たち兄妹みんなで、パズルを作って欲しい……とびきり大きいサイズのパズルを」
「パズル?」
「はい……綾香ちゃんが提案してくれたんです。それを作り終わる頃には、きっと……私たち、本当の兄妹みたくなれるって……。私も……そんな気がするんです。だから……」
「ああ、わかった。一緒に作ろう」
――夜霧も俺と兄妹になろうとしてくれている。
祐一も、その気持ちは同じだ。
いろいろあった二人だけれど、今は同じところを目指そうとしている。
支えてくれる仲間もいる。
だから、きっと上手くいくはず。
いつの間にか雲間から差し込んだ太陽の光が、屋上で向かい合う二人を照らしていた。
月曜日の放課後。
祐一は夜霧に呼び出され、屋上へと足を運んだ。
そこで、待っていた女子生徒。
お団子髪の夜霧と向かい合う。
――きりちゃんの話しをちゃんと聞いて、ちゃんと答えてあげて。
彩香にはそう言われている。
今日は雨は降っていないが、空は曇に覆われ、風も出ている。
「私……祐一くんに言わなきゃいけないことがあるんだ……」
祐一は頷いて、言葉の続きを促す。
「それはきっと……言わない方が祐一くんにとってはいいことなのかもしれないけれど……私が、前に進むために……言わせてください……」
「わかった。俺もちゃんと聞く」
「……ありがとう。それじゃ……ちゃんと言う、ね……」
そう言うと、夜霧は祐一のことをより真剣な目で見つめ、胸に手を当てて口を開いた。
「私、好きです! ……祐一くんのことが、好きなんです……! 私みたいな日陰者に親身になってくれて……優しくしてくれる祐一くんが、大好きなんですっ……! この気持ちは……兄妹だってわかった今でも、消えてくれないんです……!」
意志の籠った瞳が、言葉よりもさらに強く気持ちを伝えてくる。
本当に好きになってくれたんだと祐一に実感させる。
けど……。
「景村さん、ごめん……俺、景村さんとは付き合えない」
祐一も本当の気持ちを口にする。
「兄妹だからとか、そういうこととは関係なく……俺には綾香がいるから。綾香のことがどうしようもなく好きだから――だから、景村さんとは付き合えない」
それを聞いた夜霧の瞳に涙が浮かび上がった。
けど、口の端を少しだけあげて……。
「……それじゃ、仕方ないね」
微笑みを湛えて、そう言う。
けれど、言葉と共に、夜霧の頬を涙が伝い落ちた。
その表情のままで、夜霧は言葉を続けた。
「……真剣に答えてくれて、ありがとう……しばらく引きずると思うけど、それは許して……」
「ああ」
祐一が頷くと、夜霧は制服の袖で目元を拭った。
それからもう一度、祐一の目を見つめなおして、言葉を発した。
「……それと、ひとつお願いがあります」
「お願い?」
「私たち兄妹みんなで、パズルを作って欲しい……とびきり大きいサイズのパズルを」
「パズル?」
「はい……綾香ちゃんが提案してくれたんです。それを作り終わる頃には、きっと……私たち、本当の兄妹みたくなれるって……。私も……そんな気がするんです。だから……」
「ああ、わかった。一緒に作ろう」
――夜霧も俺と兄妹になろうとしてくれている。
祐一も、その気持ちは同じだ。
いろいろあった二人だけれど、今は同じところを目指そうとしている。
支えてくれる仲間もいる。
だから、きっと上手くいくはず。
いつの間にか雲間から差し込んだ太陽の光が、屋上で向かい合う二人を照らしていた。
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結局、小糸の言うとおり、バカな遠回りでしたね。
ですが…せっかくこう言うタイトルと言うか設定にしたのだから、そう言う展開をもっと全面に出して欲しかったなーとか思います(^^)
最後まで目を通して頂き、ありがとうございました。
何度も感想を頂けて、大変励みになりました!
タイトルと内容のズレに関しては、心に引っかかりながら書いていたので、次回以降は気を付けたいと思います。
最新話、最後のシーン、祐一が祐一の頭を撫でてませんか?(^^)
教えてくださり、ありがとうございます!
修正しました。