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38 綾香のアドバイス
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祐一は綾香に連れ添ってもらいながら、家に帰宅した。今は風呂に入っている。長時間ずぶ濡れの状態でいたから、明日には風邪を引いているかもしれない。
祐一が風呂に入ってから、綾香はスマホのチャットアプリを開いた。
そこに表示されているメッセージ。
「私と祐一くん……兄妹なんだって……私、どうすればいい……?」
夜霧との個人チャット。祐一が見つかったこと、そして祐一と付き合うようになったことを夜霧に伝えた後に、そのメッセージは送られてきた。
彼女もまた、祐一と同じように困惑している。
「きりちゃんが悩んでるのは、未来のこと……これからの祐一との接し方について? それとも、祐一に対して今まで抱いていた恋心について?」
夜霧に気持ちを明かされていた綾香は、夜霧の気持ちを想像すると、胸が苦しくなる。
二人は兄妹。
夜霧にとっては、叶わない恋だった。
その残酷な真実と、夜霧はこれから向き合っていくのか、それとも逃げ出すのか。
向き合っていくのだったら、自分の恋心とはどう決着をつけるのだろうか……。
「……今はまだ、はっきりとはわからないけれど……私は……祐一くんと、ちゃんとした兄妹になれたらいいと思う……」
そのメッセージに綾香が目を通して、どう返そうか考えていると、もう一通メッセージが届いた。
「でも……これから祐一くんを兄として見れそうにない……かも。祐一くんは、初恋の人で……今もまだ、好きだから……このままだと、ずっと祐一くんは私の好きな人のまま……」
――ずっと好きな人のまま……。
わたしがきりちゃんの立場でも、きっとそうなってしまう――
ではどうすればいいのか、と綾香は考え……。
「きりちゃんも祐一に気持ちをちゃんと伝えてみるっていうのは?」
「え?」
「言わないままじゃ、ずっと辛いままかもしれない。でも言っちゃえば、きっとすっきりするし、自分の気持ちを切り替えられるんじゃないかな?」
「……切り替えるために、振られてこいってこと?」
「うん。それも辛い思いをすると思うけど……わたしはそうしたほうがいいと思う」
「でも……告白しないで、自分の気持ちを風化させていく人もたくさんいる」
性格的には、きっと夜霧もそういう人だ。
けど、これからも祐一と接していくのなら――そういう人にはならない方が、絶対いい。
「きっとそういう人たちの中には、大きい傷が残っていて……そこから一生目を逸らしていかなければならないんだよ。けど、気持ちを伝えたら、そういう傷との向き合い方はきっと全然違うと思うんだ」
「でも……これから兄妹としてやっていこうっていうのに、告白なんかしたら……」
確かに、ただ告白しただけだと、別の気まずさがうまれるかもしれない。
だったら……。
「じゃあ、こういうのはどうかな?」
綾香はある提案をした――。
祐一が風呂に入ってから、綾香はスマホのチャットアプリを開いた。
そこに表示されているメッセージ。
「私と祐一くん……兄妹なんだって……私、どうすればいい……?」
夜霧との個人チャット。祐一が見つかったこと、そして祐一と付き合うようになったことを夜霧に伝えた後に、そのメッセージは送られてきた。
彼女もまた、祐一と同じように困惑している。
「きりちゃんが悩んでるのは、未来のこと……これからの祐一との接し方について? それとも、祐一に対して今まで抱いていた恋心について?」
夜霧に気持ちを明かされていた綾香は、夜霧の気持ちを想像すると、胸が苦しくなる。
二人は兄妹。
夜霧にとっては、叶わない恋だった。
その残酷な真実と、夜霧はこれから向き合っていくのか、それとも逃げ出すのか。
向き合っていくのだったら、自分の恋心とはどう決着をつけるのだろうか……。
「……今はまだ、はっきりとはわからないけれど……私は……祐一くんと、ちゃんとした兄妹になれたらいいと思う……」
そのメッセージに綾香が目を通して、どう返そうか考えていると、もう一通メッセージが届いた。
「でも……これから祐一くんを兄として見れそうにない……かも。祐一くんは、初恋の人で……今もまだ、好きだから……このままだと、ずっと祐一くんは私の好きな人のまま……」
――ずっと好きな人のまま……。
わたしがきりちゃんの立場でも、きっとそうなってしまう――
ではどうすればいいのか、と綾香は考え……。
「きりちゃんも祐一に気持ちをちゃんと伝えてみるっていうのは?」
「え?」
「言わないままじゃ、ずっと辛いままかもしれない。でも言っちゃえば、きっとすっきりするし、自分の気持ちを切り替えられるんじゃないかな?」
「……切り替えるために、振られてこいってこと?」
「うん。それも辛い思いをすると思うけど……わたしはそうしたほうがいいと思う」
「でも……告白しないで、自分の気持ちを風化させていく人もたくさんいる」
性格的には、きっと夜霧もそういう人だ。
けど、これからも祐一と接していくのなら――そういう人にはならない方が、絶対いい。
「きっとそういう人たちの中には、大きい傷が残っていて……そこから一生目を逸らしていかなければならないんだよ。けど、気持ちを伝えたら、そういう傷との向き合い方はきっと全然違うと思うんだ」
「でも……これから兄妹としてやっていこうっていうのに、告白なんかしたら……」
確かに、ただ告白しただけだと、別の気まずさがうまれるかもしれない。
だったら……。
「じゃあ、こういうのはどうかな?」
綾香はある提案をした――。
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