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21 あまふわカップケーキ

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 その週の日曜日。
 綾香は夜霧の家に遊びに来ていた。
 祐一はバイト、小糸はバスケ部の練習試合があるので、今日は綾香一人だ。

「あの、綾香……」
「ん、なに、きりちゃん?」

 部屋に通され、お茶を持ってきてくれた後。
 神妙な面持ちで夜霧が話しかけてきた。
 
「えと、私、みんなにお礼がしたくて……それで、お菓子作り、教えて欲しい……」
「なんだ、そんなことか。真剣な顔だから、何言われるかと思ったよー」

 綾香は湯呑みに手を伸ばし、一口飲んだ後、

「いいよっ、私に任せて!」

 綾香の頼もしい笑顔に、夜霧も表情を緩めた。



    ♢

 
 
 そして、夕方には美味しそうなカップケーキが焼きあがっていた。

「綾香、ありがとう……おかげで上手に作れた……」
「いやいや、きりちゃん料理慣れしてるから、教えることあんまりなかったよ。でも、一緒に作れて楽しかった!」

 母親の帰りが遅いことが多いので、夜霧はよく晩ご飯を作る。そのおかげか、お菓子作りは初めてだったけれど、手際よくこなしていた。

 祐一と小糸の分を包装して、残りを綾香、夜霧、月夜、雅人の四人で食べることにした。
 夜霧が月夜と雅人をリビングに呼んできて、みんなでテーブルを囲む。

「うん! ねえねえのカップケーキおいしー!」

 一口食べた月夜がパッと笑顔を咲かせる。

「よかった……雅人くんもお食べ」

 夜霧が優しい表情で雅人にも勧める。

「うん、いただきます」

 雅人も一口食べると、笑顔を浮かべた。

「うん、すごく美味しいよ」

 雅人もだいぶ景村家に馴染んできていたようで、リビングは和やかな雰囲気だ。

 笑顔の子供たちに、優しそうなお下げのお姉ちゃん。そんな光景を見て、綾香も自然と口元が緩む。
 
 カップケーキを食べると心地良い甘さが口いっぱいに広がった。
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