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最終話 告白
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翌日。
いつものようにまひるさんの家まで迎えにいき、まひるさんを自転車の後ろへ乗せる。
いつも通り他愛のない会話をしながら、学校へと向かう。
そして、学校が近くなったところで、僕は重要な話題を切り出した。
「今日の放課後、時間あるかな?」
「うん。家の手伝いがあるけど、少しくらいなら」
その返事をもらって、僕は覚悟を決めた。自転車のハンドルを強く握る。
「大事な話があるんだ。放課後、屋上に来てくれないかな?」
数秒の空白。ペダルを漕ぐ音だけが静かに響いた後。
「……うん、わかった」
背後から小さな声でそう返事があった。
それから僕たちは校舎に入って自分の席に着くまで、一言も言葉を交わさなかった。
♢
授業には全く身が入らず、告白のセリフを頭の中でひたすら唱え続けて過ごした。
そして、放課後。
掃除が終わると、僕はすぐに屋上へと向かった。
これからすることを思うと、心臓がドキドキして仕方がない。
深呼吸をして、どうにか心を落ち着かせようとする。
ふと、空を見上げた時。
青と白が綺麗な夏の空が目に入った。
それを見つめていると、心が少し落ち着いた。
部活に勤しむ生徒の声。
吹奏楽部が楽器を演奏する音。
遠くから聞こえるセミの声。
それらに耳を澄ませながら、まひるさんを待つ。
そして――。
扉が開き、小柄な女の子が入ってきた。
その女の子――まひるさんは扉を閉めると、茶色がかった少し癖のある髪を静かに揺らしながら、少し早足で僕の前まで歩いてきた。
「ごめん、遅くなっちゃった」
「ううん、大丈夫」
「それで、話ってなにかなー?」
笑顔で問いかけてくるまひるさん。けれど、まひるさんの声にも、緊張の色が窺えた。
場の雰囲気に、胸の鼓動が再び速度を上げていく。
けれど――伝えるって決めたんだ。
体の脇で両手をぐっと握り締め、まひるさんの目をしっかりと見据える。
そして、息を吸いこんで――。
「大空まひるさん。出会ってから今まで、まひるさんと一緒に過ごすうちに、僕はまひるさんのことが大好きになりました。これから、もっと一緒に過ごしたい――そういう気持ちでいっぱいです。だから……まひるさん、僕とお付き合いしてください!」
そう言い切ってまひるさんの様子を窺う。
まひるさんの顔はだんだん赤くなり、まばたきの回数が多くなる。
それでも、僕を見上げるような彼女の視線は、僕の視線と重なり続けている。
少しして、まひるさんが大きく息を吸いこんだ。
そして――。
「わたしも……わたしも、りょーすけと一緒にいたい。りょーすけのこと、大好き」
その返事とともに、まひるさんは勢いよく僕に抱き着いてきた。
その瞬間、嬉しさが湧き上がってきて……。
僕もまひるさんの背中に腕を回した。
えへへ、とまひるさんが僕の腕の中で笑う。
大切な人が腕の中にいる幸せに満たされていく。
「まひるさんのこと、ずっと、大事にするから」
「わたしも、りょーすけのこと、ずっと大事にする」
「これから、いっぱい一緒に過ごそう」
「うん! 夏休みは海とか花火大会とか一緒に行ってー……その後も、たくさん楽しいことして過ごそうねー」
抱き合いながら僕たちは、これから紡ぐ二人の未来について語り合う。
そして、その未来が実現するように、僕たちは新しい一歩を踏み出していく――。
いつものようにまひるさんの家まで迎えにいき、まひるさんを自転車の後ろへ乗せる。
いつも通り他愛のない会話をしながら、学校へと向かう。
そして、学校が近くなったところで、僕は重要な話題を切り出した。
「今日の放課後、時間あるかな?」
「うん。家の手伝いがあるけど、少しくらいなら」
その返事をもらって、僕は覚悟を決めた。自転車のハンドルを強く握る。
「大事な話があるんだ。放課後、屋上に来てくれないかな?」
数秒の空白。ペダルを漕ぐ音だけが静かに響いた後。
「……うん、わかった」
背後から小さな声でそう返事があった。
それから僕たちは校舎に入って自分の席に着くまで、一言も言葉を交わさなかった。
♢
授業には全く身が入らず、告白のセリフを頭の中でひたすら唱え続けて過ごした。
そして、放課後。
掃除が終わると、僕はすぐに屋上へと向かった。
これからすることを思うと、心臓がドキドキして仕方がない。
深呼吸をして、どうにか心を落ち着かせようとする。
ふと、空を見上げた時。
青と白が綺麗な夏の空が目に入った。
それを見つめていると、心が少し落ち着いた。
部活に勤しむ生徒の声。
吹奏楽部が楽器を演奏する音。
遠くから聞こえるセミの声。
それらに耳を澄ませながら、まひるさんを待つ。
そして――。
扉が開き、小柄な女の子が入ってきた。
その女の子――まひるさんは扉を閉めると、茶色がかった少し癖のある髪を静かに揺らしながら、少し早足で僕の前まで歩いてきた。
「ごめん、遅くなっちゃった」
「ううん、大丈夫」
「それで、話ってなにかなー?」
笑顔で問いかけてくるまひるさん。けれど、まひるさんの声にも、緊張の色が窺えた。
場の雰囲気に、胸の鼓動が再び速度を上げていく。
けれど――伝えるって決めたんだ。
体の脇で両手をぐっと握り締め、まひるさんの目をしっかりと見据える。
そして、息を吸いこんで――。
「大空まひるさん。出会ってから今まで、まひるさんと一緒に過ごすうちに、僕はまひるさんのことが大好きになりました。これから、もっと一緒に過ごしたい――そういう気持ちでいっぱいです。だから……まひるさん、僕とお付き合いしてください!」
そう言い切ってまひるさんの様子を窺う。
まひるさんの顔はだんだん赤くなり、まばたきの回数が多くなる。
それでも、僕を見上げるような彼女の視線は、僕の視線と重なり続けている。
少しして、まひるさんが大きく息を吸いこんだ。
そして――。
「わたしも……わたしも、りょーすけと一緒にいたい。りょーすけのこと、大好き」
その返事とともに、まひるさんは勢いよく僕に抱き着いてきた。
その瞬間、嬉しさが湧き上がってきて……。
僕もまひるさんの背中に腕を回した。
えへへ、とまひるさんが僕の腕の中で笑う。
大切な人が腕の中にいる幸せに満たされていく。
「まひるさんのこと、ずっと、大事にするから」
「わたしも、りょーすけのこと、ずっと大事にする」
「これから、いっぱい一緒に過ごそう」
「うん! 夏休みは海とか花火大会とか一緒に行ってー……その後も、たくさん楽しいことして過ごそうねー」
抱き合いながら僕たちは、これから紡ぐ二人の未来について語り合う。
そして、その未来が実現するように、僕たちは新しい一歩を踏み出していく――。
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