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25 一緒に登校①

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 小雨が降っているので自転車には乗らず、傘をさしてまひるさんの家へと向かう。
 女の子の家に迎えに行って一緒に登校する――そんな慣れないシチュエーションに、緊張してしまう。
 学校まで何を話そうとか、寝ぐせはついていないかとか、必要以上に気を回しながら歩いていたら、あっという間にまひるさんの家付近に来ていた。
 曲がり角を折れてすぐ。
 大空書店の軒下に、僕を待っているまひるさんの姿を見つけた。
 小柄な体躯――前にはピンクの枕を抱え、後ろには水色のリュックを背負っている。
 まひるさんは小柄だから、その二つのアイテムがやたらと大きく見えるなあ。
 そんなことを思っていたら、茶色がかったくせっ毛が揺れた。
 そして、まひるさんと目が合う。その目はぱっちりとしており、眠気は感じられない。
 
「あ、りょーすけ。おはよー」
 
 はにかんで、小さく手を振ってくるまひるさん。その仕草にドキッとしてしまう。
 
「お、おはよう」

 僕も挨拶を返す。たった四音の言葉なのに、上手く口が回らなかった。
 それをごまかすように早足でまひるさんの元に近寄る。
 まひるさんの枕が透明な袋に入っていることに気がついた。雨に濡れないようにしているのだろう。

「雨の日はそうしてるんだね」

 そう言って、僕は枕を指差す。

「うん。濡れたら困るからねー」

 答えながら、まひるさんは枕を大事そうにギュッと抱いてみせた。

「そっか。でも、いつも持ち運んでるよね、それ。学校で使うのは、学校に置いてったりしないの?」

 学校で使う枕。
 言ってて、あれ? ってなったけど、まあそこはスルーしよう。

「いやー、枕って放置すると変なことされるかもしれないからー」
「変なこと?」
「匂い嗅がれたりとか、盗まれたりとかー」
「なるほど」

 確かに、そういう嗜好の人もいるだろう。

「昔ね……」
 
 ふと、まひるさんの表情に影が落ちる。

「ま、まさか、すでにそういう被害にあったことが!?」
「あ、いや、そういうわけじゃないんだけどねー……小学生のとき、メグがねー、スンスンしてたの」
「スンスン」
「そー、スンスン」

 つまり、匂いを嗅いでいたと。何をやってるんだ、熊谷さん……。
 確かに、彼女、まひるさんに対する愛が行き過ぎてるところあるからなあ。まひる褒めを始めたら止まらないし。

「まー、メグだったからよかったんだけどねー。他の人にされる危険性もあるなーって思って……それからは肌身離さず持ち歩くようにしてるんだー」

 一応は気を使ってるんだよー、とまひるさんは笑って見せた。
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