いとおしい

ハリネズミ

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気が付くとそこは以前誠さんが入院していた病院のようで、ベッドに寝かされて点滴が繋がっていた。
「―――誠…さん…?」
「七星っ……。よかった。気分は悪くないか?どこか痛いところとか」
「うん。平気みたい。心配かけてごめんなさい」
まだ少しぼんやりとしているが、吐き気はなかった。

「七星が無事ならいいんだ」
安心したように微笑み顔にかかった前髪をよけてくれる。
その大きくて優しい手にすりっと頬を寄せると、ぽたりと何か温かい物が頬に落ちてきた。
見ると誠さんの瞳から大粒の涙がぽろぽろと零れ落ちていた。
「ま、誠さんっ?」
慌てて誠さんの涙を拭おうと伸ばした手をとられ、祈るように額の前に持っていかれる。
「――――ダメだな。しっかりしないと。七星の意識が戻って安心したらなんだか――――」
「誠さんはダメじゃない……僕の方が―――。こんなに心配かけて。プレゼントだってこんなんじゃ買いに行けない――ごめんなさい……」
自分の不甲斐なさに涙が滲む。
誠さんは首を左右にゆっくり振ると僕の頭を撫でながら微笑んだ。

「七星はちっともダメなんかじゃないよ。それにちゃんと特別なプレゼントを貰ったよ」

「―――――へ?」

「俺たちに――子どもができたんだ。ここ最近の不調はその為だったんだよ」
ゆっくりと幸せをかみしめるように言う誠さんの優しい声が僕の心に染み渡っていく。

――――子ども…………?
僕…倒れて――。
―――あ!
「誠さん、僕倒れちゃったけど子どもは無事なの??」
慌てて起き上がろうとして誠さんに止められた。

「あぁ、大丈夫だ。大丈夫だからまだ寝ていなさい。子どもは無事だ。七星の方も寝不足と少し貧血があるみたいだから今日一日は入院しないといけないが、明日には帰れる。何の心配もない」
「そっかぁ。よかった……」
「七星、ありがとう。―――最高のプレゼントだよ」
そっと僕のお腹に手を置く。
そこから伝わる温もりがじんわりと僕を癒す。
まだ何も分からないはずの僕のお腹。
だけど確かに僕たちの子どもがそこに息づいていて。
僕の瞳からも涙が零れた。


僕が誠さんへのプレゼントの事でいっぱい悩んじゃってたから神さまがプレゼントしてくれたのかな?
すごくすごく嬉しい。
神さまありがとうございます。

誠さん、僕ねすごくすごーく幸せだよ。でもね、幸せすぎて欲張りになっちゃったみたいなんだ。
だからね、これからも僕と生れてくる子どもの事をもっともっと愛してね。
僕もそれ以上に誠さんの事を愛すから。
誠さんがくれるからんじゃなくて、僕が誠さんの事が愛おしくてたまらないから沢山の愛情をの。

誠さん、知ってた?
僕はあなたが思う以上にあなたの事が大事で、愛おしくてたまらないんだ。
沢山の愛情をあげるから覚悟しておいてね?


そんなわけで今年のバレンタインは僕が思っていたものじゃなかったけど、僕たちにとっていくつ目かのになった。




余談:体調が落ち着いて実家で母にイライラして不安だった話をすると、「それは妊娠してホルモンバランスが崩れたせいね。それにしてももう落ち着くだなんて、お母さんなんてあんたが生まれてもしばらくはダメだったのに、流石は誠さんね。確かな愛情を示してくれるからホルモンバランスの崩れもさくっと治っちゃったのよ。良かったわね七星」って言ってくれた。
だから僕も「うん!世界一素敵な旦那さまだよ」って笑顔で答えたんだ。




-終-
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