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chapter.1 [静寂と騒音]
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しおりを挟む次に外が見れたのはそれから十分後だった。
黒々とした煙に覆われた空は透き通るほどの鮮やかな青空が広がり、上がっていた火の手はすっかり消えて焼け焦げた家の残骸をぼんやりと眺めていた。
「なんだったんだ、アイツは……」
はぁ、と疲れきった様子で地面に座り込んだガルビス。そんな彼を見て労うスタン達を見る事なく、クランジェーはただ空をぼんやりと仰ぎ見ていた。
「────様……、クランジェー様?」
すぐそこからだというのに、すごく遠くから呼ばれているな気さえするほど何度も何度も声を掛けられてはクランジェーはハッと我に返ってスタンを見上げる。
「ど、どうしたの!?」
「……いえ、心ここにあらずと言わんばかりの状態でしたので…。なにかありましたか?」
「え、あー……」
心配そうに見つめる青き二つの眼。それを見てクランジェーは少し申し訳なさそうに笑みをこぼしつつ、再び空を見上げると静かな青空に息を飲む。
「……ライ・クランジェー……似たような姿で似た名前。そんな偶然、あるのかなって……」
不安をぽつり、と吐き出せば傍らで見上げていたスタンは微笑みながら同じように青い空を見上げてからクランジェーの顔を覗き込む。
「そうですね、気になるのでしたら捜してみませんか?あのお方はどうやら魔界からいらしたようですし……」
クランジェーの黒い瞳にまるで天の川のような赤い色が差し込んだ瞳は吸い込まれるような神秘さを秘めている。
それを見つめながらスタンは微笑んでいるとしばらく休憩していたガルビスが立ち上がって辺りを見渡し、なにやらその場の異変を測り始めてすぐにクランジェーへと視線を向けられる。
「ここから南側……およそ街道を四つ跨いだ先に移動したと思われる。今から行けば夜になる前に辿り着ける、どうする?」
まだ太陽は真上に昇って間もない。
今からかぁ、と少し躊躇してしまったのか、ぽつりと声を漏らしたクランジェーの背を押すように「ついていきますよ」とスタンは囁いた。
元からこの旅路は魔界へと至る道を模索することだった。それ以外の大きな目的や今すぐ行かなくてはいけない重大な用事もない。
今から向かっても間に合わないかもしれない、それでも不思議にもよく似た青年を追いかけるべく、クランジェーは
「じゃあ、行こっか!」
と片手をあげて歩み出せばスタンとガルビスはその足取りを追いかけるように、真昼間の透き通る青空の下を歩いていく。
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