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本編
25. 意のままに ※セレスティアside
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ソフィアにトラウマを植え付けることに成功した日の翌朝。
学院に来たばかりのセレスティアは笑みを浮かべていた。
(やっと、あの憎い女が消えましたわ)
同じ講堂にいるはずのソフィアが講義開始時間になっても姿を見せなかったから。
けれども、相変わらずレオン王子とアリス楽しそうに会話している。
ついさっき、アリスに呼び出されて「ソフィアに嫌がらせをしないで欲しい」と文句を言われもした。
そんなことがあったから、セレスティアはいつも以上に不快感を募らせていた。
「いけませんわ……」
余計な事を考える暇はなかったと思い返し、レオンに魔法をかける準備を始める。
もっとも、不審に思われないように魔法の実習中に詠唱するタイミングを見計らっているだけだ。
それから少しして周囲で魔法が飛び交い始めたころ、セレスティアはレオン王子を見つめたまま詠唱を始めた。
(抵抗感が強すぎますわ……)
相手は王族。このような魔法に耐性があるのは不思議なことではなかった。
けれども、根気よく魔法を使い続けると、少しずつ手応えを感じるようになっていた。
そんな状況でも、レオン王子は異変に気付いた様子はない。
最初に魔力の流れの認識を阻害する魔法をかけたのだから、気付く方が難しい。
けれども異変が起きない訳ではなかった。
「はぁ……はぁ……」
セレスティアは息を切らしていた。
魔力が枯渇してしまい、息が上がってしまっている。
(魔力が切れてしまいましたわ……。でも、成功しましたわね)
そんなことを思いながら、不審がられないように実習を再開しようとする。
けれども、もう魔法を使うことは出来なかった。
「セレスティア様、大丈夫ですか?」
「魔力を使いすぎてしまったみたいですの。少し休憩したら戻りますわ」
誤魔化してその場を離れるセレスティア。
魔力は休息で回復するというのは常識だから、彼女もそれを狙っている。
☆
しばらくして、昼休みの時間になった。
「レオン様とアリス様が喧嘩したって本当ですの?」
「ええ」
今はすっかりレオン王子とアリスが喧嘩したという噂で持ちきりだった。
実際のところはレオン王子がアリスと距離を置いているだけなのだが……。
ついに、事態が動いた。
「アリス、話がある」
セレスティアと共にアリスの前に来たレオン王子がそう言い放つ。
その言葉を告げられたアリスは表情を歪めた。
「話とは、どのようなご用件でしょうか?」
「もう君を愛することは出来ない。セレスティア嬢を好いてしまったのだ。
だから、婚約をなかったことにしたい」
騒ぎを聞きつけた人達が集まってくるものの、幸いなことにレオン王子の声を聞き取れた者はいなかった。
ただ、レオンに密着するセレスティアの様子に疑問を覚える者は多かった。
「そう、ですのね……」
涙を浮かべながら、そう口にするアリス。
そんな様子を見たセレスティアは勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
そして……。
「レオン、お前は馬鹿か!? 目を覚ませ!」
異変を嗅ぎ付けたアルトがそう声を上げた。
「僕は至って正気だよ? 本当の愛に気付いたんだ」
「ああ、その言い方はいつものレオンじゃないね。いい加減に目を覚ませ!」
アルトはそう言い放つと、拳を握りしめてレオン王子の頬を殴った。
「「な……」」
絶句する周囲の様子などお構いなしに、床に倒れたレオンを見下ろすアルト。
そして……。
学院に来たばかりのセレスティアは笑みを浮かべていた。
(やっと、あの憎い女が消えましたわ)
同じ講堂にいるはずのソフィアが講義開始時間になっても姿を見せなかったから。
けれども、相変わらずレオン王子とアリス楽しそうに会話している。
ついさっき、アリスに呼び出されて「ソフィアに嫌がらせをしないで欲しい」と文句を言われもした。
そんなことがあったから、セレスティアはいつも以上に不快感を募らせていた。
「いけませんわ……」
余計な事を考える暇はなかったと思い返し、レオンに魔法をかける準備を始める。
もっとも、不審に思われないように魔法の実習中に詠唱するタイミングを見計らっているだけだ。
それから少しして周囲で魔法が飛び交い始めたころ、セレスティアはレオン王子を見つめたまま詠唱を始めた。
(抵抗感が強すぎますわ……)
相手は王族。このような魔法に耐性があるのは不思議なことではなかった。
けれども、根気よく魔法を使い続けると、少しずつ手応えを感じるようになっていた。
そんな状況でも、レオン王子は異変に気付いた様子はない。
最初に魔力の流れの認識を阻害する魔法をかけたのだから、気付く方が難しい。
けれども異変が起きない訳ではなかった。
「はぁ……はぁ……」
セレスティアは息を切らしていた。
魔力が枯渇してしまい、息が上がってしまっている。
(魔力が切れてしまいましたわ……。でも、成功しましたわね)
そんなことを思いながら、不審がられないように実習を再開しようとする。
けれども、もう魔法を使うことは出来なかった。
「セレスティア様、大丈夫ですか?」
「魔力を使いすぎてしまったみたいですの。少し休憩したら戻りますわ」
誤魔化してその場を離れるセレスティア。
魔力は休息で回復するというのは常識だから、彼女もそれを狙っている。
☆
しばらくして、昼休みの時間になった。
「レオン様とアリス様が喧嘩したって本当ですの?」
「ええ」
今はすっかりレオン王子とアリスが喧嘩したという噂で持ちきりだった。
実際のところはレオン王子がアリスと距離を置いているだけなのだが……。
ついに、事態が動いた。
「アリス、話がある」
セレスティアと共にアリスの前に来たレオン王子がそう言い放つ。
その言葉を告げられたアリスは表情を歪めた。
「話とは、どのようなご用件でしょうか?」
「もう君を愛することは出来ない。セレスティア嬢を好いてしまったのだ。
だから、婚約をなかったことにしたい」
騒ぎを聞きつけた人達が集まってくるものの、幸いなことにレオン王子の声を聞き取れた者はいなかった。
ただ、レオンに密着するセレスティアの様子に疑問を覚える者は多かった。
「そう、ですのね……」
涙を浮かべながら、そう口にするアリス。
そんな様子を見たセレスティアは勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
そして……。
「レオン、お前は馬鹿か!? 目を覚ませ!」
異変を嗅ぎ付けたアルトがそう声を上げた。
「僕は至って正気だよ? 本当の愛に気付いたんだ」
「ああ、その言い方はいつものレオンじゃないね。いい加減に目を覚ませ!」
アルトはそう言い放つと、拳を握りしめてレオン王子の頬を殴った。
「「な……」」
絶句する周囲の様子などお構いなしに、床に倒れたレオンを見下ろすアルト。
そして……。
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