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28. 苦味がしました②

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「サーシャ? 何かあったの?」
「ただの水のはずなのに、少し苦くて……」

 違和感を感じて固まっていると、ヴィオラが声をかけてくれた。
 隠すことでも無いから正直に伝える私。

 その直後、ヴィオラの表情が険しくなって、こんなことを口にした。

「毒よ。今すぐに吐き出して」
「毒!? それなら心配しなくて大丈夫よ。私、毒には強いから」

 王家の血の影響かは分からないけれど、私の家族や王家の方々は殆どの毒が効かない。
 唯一効く毒は、アルコールと呼ばれているお酒に含まれている成分だけなのだけど、これは匂いで分かるから死ぬような量を口にすることは無いのよね。

 アルコール以外の毒を飲んでしまっても、少しだけ頭がやお腹が痛くなるだけ。
 そのお陰で、今のところ毒殺された人は居ないらしい。

 ちなみに、毒って美味しいものも多いから、たまに食べたくなるのよね……。
 頭が痛くなっても癒しの力で治せるから、我慢しよって思うこともあまり無い。

 お父様は毒に強くないから、毒味はされている。
 仮に毒に倒れたとしてもお母様の癒しの力で治せるのだけど。

「そういえば、王家の血を引いていると毒は効かなかったわね……」
「ええ、だから大丈夫よ」
「学院の中で毒殺未遂、大騒ぎになりそうね」

 王家の血を引いていると毒に強い理由は分かっていないけれど、私は癒しの力が影響していると思っている。
 だから、疲れ切っている時に毒を盛られたら、どうなるか分からない。

 今は元気だから問題無いのだけど。
 なんて思っていたら、少し頭が痛くなってきた。

「そうね。でも、騒ぐのは犯人が捕らえられてからにして欲しいわ」
「逃げられたら元も子も無いものね。……顔色悪いけど、本当に大丈夫?」
「大丈夫、死にはしないから。とりあえず、警備の人に伝えないと」
「呼んで来るわね」

 そう口にして、教室を後にするヴィオラ。
 入れ違いで次の授業の先生が入ってきてしまったけれど、そのまま警備の人を呼びに行ってくれた。

 そのまま授業が始まってしまったから、私はヴィオラのためにも授業のメモを書いていく。

「もう始まってたみたいね」
「知らせてくれてありがとう。ノート、取ってあるわ」
「いいのよ、気にしないで」

 小声でそんな言葉を交わす私達。
 直後に先生に視線を向けられてしまったから、慌てて口を閉じた。



 それから一時間が過ぎて講義が終わった時、私の気分は最悪なものになっていた。
 ずっと吐き気と頭痛に襲われているから。

 癒しの力を使えば一瞬で治せる程度のものだけれど、学院では授業中に魔法などを無許可に使うことは許されていない。
 だから、この弱い頭痛と吐き気には堪えないといけないのよね。

 でも、これは悪阻に比べればずっと楽なものだから、我慢は出来る。

「そろそろ面白くなるわね」
「そうみたいね……」

 良い姿勢のままこの体調に耐えるのは辛いから、あまり目立たないように姿勢を崩す。
 そんな時、教室から出ようとした人たちの目の前に、警備担当の騎士さんが行く手を阻んでいる様子が目に入った。

 ヴィオラからの知らせを聞いて、犯人捜しのためにこの教室から出られないようにしているのよね……。
 中庭に面している側にも騎士さんが待機していて、天井か床に穴を空けないと脱出は出来なさそうになっている。

「なんだなんだ?」
「まさかとは思うが、ここに犯罪を犯した馬鹿でも居るのか?」
「誰も倒れてないから、違うだろう」
「いや、しかしこの様子は……」

 みんな何が起きているのかは理解したみたいで、一気に騒がしくなっている。
 でも、全員悪いことをしていないみたいで、周囲に目を配って犯人捜しを始めていた。

 リリア様も一瞬だけ焦ったような表情を見せていたけれど、何も無いかのように平然と振舞っている。
 他の人達と同じように犯人探しに走れば完璧だったのに、自分が犯人だと分かっているみたいでずっと動いていない。

 だから、逆に目立っていた。
 それはこうなる原因を作った私達も同じだけれど、ここの騎士さん達は貴族の名前と顔が一致しているから、私達が被害者だと分かっている様子。

「目立つわね」
「ええ。でも、お陰ですぐに終わりそうね」

 私達の視線の先では、騎士さん2人がリリア様の方に真っすぐ向かっていた。
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