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第1章
20. 伝記があるので
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あれから二日。航海三日目の朝は大荒れだった。
波が高くなって、船が大きく揺れている。
けれど魔物の攻撃にも耐えられるように頑丈に作られている船は音を上げずに、海を進んでいる。
到着まではあと五時間ほど。
「シエル、船酔いは大丈夫か?」
「ええ、大丈夫よ」
幸いにも私達は船酔いとは無縁だったみたいで、この揺れの中でも気分が悪くなったりはしていない。
でも、朝食の席では昨日のアルバトス子爵夫妻が酷い顔色で座っていた。
他の人達は無事そうなのが不思議だけれど。
「あれは船酔いにやられてるな……」
「そうみたいね」
昨日の一件をウェイトレスさんに恨まれているみたいで、無造作に桶が置かれるだけ。
私の時は甲斐甲斐しく手助けされていたから、その差がありありと分かってしまう。
けれど可哀想だとは欠片も思わない。自業自得、それだけだもの。
今日の朝食は白パンに黄色いスープ、それからフルーツで作ったゼリーというありきたりなもの。
簡素に見えても、朝はあまり食べられない私にはちょうど良い。
「「いただきます」」
クラウスは一瞬で平らげてしまって、お代わりをお願いしていたけれど……。
やっぱり胃袋がどうにかしてると思う。
運ばれてきたのは白パンと黒パン。硬くて美味しくなくても栄養が多い黒パンで満足する作戦かしら?
ふとそう思ったのだけれど、あの硬くて食べにくくて美味しくない黒パンが消えていく様子を見ていたら、もう何も考えられなくなってしまった。
「黒パン、よくそんなに早く食べられるわね……」
「牛乳と一緒に食べると、結構美味しいんだ。試してみるか?」
「私はこれで十分だから、今度試してみるわ」
黒パンには抵抗があるけれど、美味しそうに食べている様子を見ていたら、興味が湧いてしまった。
それから少しして、私が朝食を終えた頃。
ドーンという大きな音に続けて、激しい揺れが私達を襲った。
今日は海が荒れていてお皿やグラスは吸盤でテーブルに張り付いていて無事だったけれど、椅子が倒れてきて足に当たってしまう。
「大丈夫か?」
「これくらい平気よ」
ズキズキと痛むけれど、これくらい治癒魔法で治せる。
もちろん、一昨日から練習している正しい魔法式を使って魔力を巡らせる。
私の魔法は他人に使うことは出来ないけれど、自分に使うだけなら自由自在なのよね。
「魔物の気配がするな」
「ええ、そうみたいね」
魔物の気配の探り方は簡単で、魔力を感じ取ればいいだけ。
けれど魔力を隠せる魔物も居るから、気配がしなくても油断は出来ないのだけれど、それも危機感でなんとなく分かる。
ちなみに、今はまだ近くに居ないけれど、危険な気配がものすごい勢いで迫ってきているのが感じ取れる。
「今の波も魔物の攻撃だと思う。戦うぞ」
「ええ、行きましょう」
突然襲ってきた魔物の対処は冒険者の責務だから、クラウスに続けて私も甲板に出る。
すると既に他の冒険者が弓や魔法杖を構えて待機している様子が見えた。
「海に落ちたらまず助からない。必ずどこかに掴まるんだ」
「分かったわ」
クラウスに言われた通り、甲板に張り巡らせてある縄を握りながら進んでいく。
「状況は?」
「まずいですよ、リヴァイアサンが真っすぐ来てます!」
船首の方を見れば、絵画でしか見たことが無い竜のような魔物が迫ってきている。
それに船を飲み込みそうな大波も迫っている。
「クソ、死にたくないが、勝ち目が無いぞ……」
「ああ。AランクとSランクのパーティーが全滅したくらいだからな。だが何もせずに死んでたまるか!」
絶望に染まっている会話をする彼らの指にはAランクの証が輝いている。
高位と言われる人達が十人いるのに、状況は絶望的みたい。
誰も恐怖を露わにしていないけれど、私は魔石を握る手が震えてしまう。
「リヴァイアサンの弱点は火魔法だ。水魔法は奴を強化するから絶対に使うなよ!」
そんな声が聞こえてきて、私は以前読んだ伝記を思い出す。
聖女様が船での移動中にリヴァイアサンを倒すお話も描かれていて、その時は闇の幻惑魔法で攻撃を逸らして、そこから火魔法を集中浴びせたらしい。
多少の脚色もあるお話だけれど、戦闘描写は後世に残すために事実だけが描かれている。
だから私もそれに倣って、闇魔法の準備をする。
「シエル、それは闇の魔石だぞ?」
「これで大丈夫よ。試したいことがあるの」
「分かった。期待してる」
まだ距離は離れているけれど、幻惑魔法なら届く範囲。
だから私は幻惑魔法の詠唱を始めた。
普段は頭の中に魔法を浮かべるだけで発動出来るけれど、今回使うのは高位の魔法かつ相手は強大なリヴァイアサン。
失敗は出来ないから、魔法式を順番に組み立てるための詠唱をしていく。
一度成功すれば自由に動かせるから、最初が肝心なのよね。
「あんたSランクだよな? なんでCランクの子供に任せてる?」
「彼は優秀な魔法の使い手だ。複数の魔法を同時に、しかも無詠唱で扱えている。
今も防御魔法を維持したまま詠唱しているだろう?」
「ああ、確かにそのようだな……言われるまで気付かなかった」
後ろからクラウスを怒るような声が聞こえて来たけれど、今は詠唱に集中しなくちゃいけない。
だから気にしないで、魔法語を発していく。
「詠唱省略だけでも高等技術だぞ? 使い手なんて数えるほどしか会ったことが無いが、その上多重起動まで……」
「まあ、魔力が極端に少ないのが玉に瑕だがな」
「ああ、なるほど。それでCランクなのか」
「いや、今週冒険者になったばかりだ」
「は? おかしいだろ。昇格なんて普通一ヶ月はかかるぞ?」
やっと詠唱が終わったから、魔力を込めて魔法の形にする私。
直後、リヴァイアサンに魔法が効いた手応えが返ってきた。
波が高くなって、船が大きく揺れている。
けれど魔物の攻撃にも耐えられるように頑丈に作られている船は音を上げずに、海を進んでいる。
到着まではあと五時間ほど。
「シエル、船酔いは大丈夫か?」
「ええ、大丈夫よ」
幸いにも私達は船酔いとは無縁だったみたいで、この揺れの中でも気分が悪くなったりはしていない。
でも、朝食の席では昨日のアルバトス子爵夫妻が酷い顔色で座っていた。
他の人達は無事そうなのが不思議だけれど。
「あれは船酔いにやられてるな……」
「そうみたいね」
昨日の一件をウェイトレスさんに恨まれているみたいで、無造作に桶が置かれるだけ。
私の時は甲斐甲斐しく手助けされていたから、その差がありありと分かってしまう。
けれど可哀想だとは欠片も思わない。自業自得、それだけだもの。
今日の朝食は白パンに黄色いスープ、それからフルーツで作ったゼリーというありきたりなもの。
簡素に見えても、朝はあまり食べられない私にはちょうど良い。
「「いただきます」」
クラウスは一瞬で平らげてしまって、お代わりをお願いしていたけれど……。
やっぱり胃袋がどうにかしてると思う。
運ばれてきたのは白パンと黒パン。硬くて美味しくなくても栄養が多い黒パンで満足する作戦かしら?
ふとそう思ったのだけれど、あの硬くて食べにくくて美味しくない黒パンが消えていく様子を見ていたら、もう何も考えられなくなってしまった。
「黒パン、よくそんなに早く食べられるわね……」
「牛乳と一緒に食べると、結構美味しいんだ。試してみるか?」
「私はこれで十分だから、今度試してみるわ」
黒パンには抵抗があるけれど、美味しそうに食べている様子を見ていたら、興味が湧いてしまった。
それから少しして、私が朝食を終えた頃。
ドーンという大きな音に続けて、激しい揺れが私達を襲った。
今日は海が荒れていてお皿やグラスは吸盤でテーブルに張り付いていて無事だったけれど、椅子が倒れてきて足に当たってしまう。
「大丈夫か?」
「これくらい平気よ」
ズキズキと痛むけれど、これくらい治癒魔法で治せる。
もちろん、一昨日から練習している正しい魔法式を使って魔力を巡らせる。
私の魔法は他人に使うことは出来ないけれど、自分に使うだけなら自由自在なのよね。
「魔物の気配がするな」
「ええ、そうみたいね」
魔物の気配の探り方は簡単で、魔力を感じ取ればいいだけ。
けれど魔力を隠せる魔物も居るから、気配がしなくても油断は出来ないのだけれど、それも危機感でなんとなく分かる。
ちなみに、今はまだ近くに居ないけれど、危険な気配がものすごい勢いで迫ってきているのが感じ取れる。
「今の波も魔物の攻撃だと思う。戦うぞ」
「ええ、行きましょう」
突然襲ってきた魔物の対処は冒険者の責務だから、クラウスに続けて私も甲板に出る。
すると既に他の冒険者が弓や魔法杖を構えて待機している様子が見えた。
「海に落ちたらまず助からない。必ずどこかに掴まるんだ」
「分かったわ」
クラウスに言われた通り、甲板に張り巡らせてある縄を握りながら進んでいく。
「状況は?」
「まずいですよ、リヴァイアサンが真っすぐ来てます!」
船首の方を見れば、絵画でしか見たことが無い竜のような魔物が迫ってきている。
それに船を飲み込みそうな大波も迫っている。
「クソ、死にたくないが、勝ち目が無いぞ……」
「ああ。AランクとSランクのパーティーが全滅したくらいだからな。だが何もせずに死んでたまるか!」
絶望に染まっている会話をする彼らの指にはAランクの証が輝いている。
高位と言われる人達が十人いるのに、状況は絶望的みたい。
誰も恐怖を露わにしていないけれど、私は魔石を握る手が震えてしまう。
「リヴァイアサンの弱点は火魔法だ。水魔法は奴を強化するから絶対に使うなよ!」
そんな声が聞こえてきて、私は以前読んだ伝記を思い出す。
聖女様が船での移動中にリヴァイアサンを倒すお話も描かれていて、その時は闇の幻惑魔法で攻撃を逸らして、そこから火魔法を集中浴びせたらしい。
多少の脚色もあるお話だけれど、戦闘描写は後世に残すために事実だけが描かれている。
だから私もそれに倣って、闇魔法の準備をする。
「シエル、それは闇の魔石だぞ?」
「これで大丈夫よ。試したいことがあるの」
「分かった。期待してる」
まだ距離は離れているけれど、幻惑魔法なら届く範囲。
だから私は幻惑魔法の詠唱を始めた。
普段は頭の中に魔法を浮かべるだけで発動出来るけれど、今回使うのは高位の魔法かつ相手は強大なリヴァイアサン。
失敗は出来ないから、魔法式を順番に組み立てるための詠唱をしていく。
一度成功すれば自由に動かせるから、最初が肝心なのよね。
「あんたSランクだよな? なんでCランクの子供に任せてる?」
「彼は優秀な魔法の使い手だ。複数の魔法を同時に、しかも無詠唱で扱えている。
今も防御魔法を維持したまま詠唱しているだろう?」
「ああ、確かにそのようだな……言われるまで気付かなかった」
後ろからクラウスを怒るような声が聞こえて来たけれど、今は詠唱に集中しなくちゃいけない。
だから気にしないで、魔法語を発していく。
「詠唱省略だけでも高等技術だぞ? 使い手なんて数えるほどしか会ったことが無いが、その上多重起動まで……」
「まあ、魔力が極端に少ないのが玉に瑕だがな」
「ああ、なるほど。それでCランクなのか」
「いや、今週冒険者になったばかりだ」
「は? おかしいだろ。昇格なんて普通一ヶ月はかかるぞ?」
やっと詠唱が終わったから、魔力を込めて魔法の形にする私。
直後、リヴァイアサンに魔法が効いた手応えが返ってきた。
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