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6. 勝負しました
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「これから昼食を用意しますので、ライアス様とエリシア様は休憩してください。
慣れない事をされていましたから、お疲れでしょう」
すっかり見慣れた部屋に戻ると、イリヤさんがそう口にする。
私は体力が戻ったからあまり疲れていないけれど、ライアス様が疲れ切った表情をしているから、大人しく待つことにした。
「ありがとうございます」
「それなら、少し釣りをしてくる」
ライアス様はそう口にすると、立てかけてある釣り竿を手に取って部屋を出ようとしていた。
このまま見送ると、私は一人で待つことになってしまうから、ライアス様を引き留める。
「ライアス様、私も一緒に行っても良いでしょうか?」
「もちろん。ただ、獲物がかかるまでは退屈だと思うが……それでも良いか?」
「はい!」
「よし、それならエリシアはこれを使って」
「えっと……私も一緒にしても良いのですか?」
差し出された釣り竿を受け取りながら、問い返す私。
この釣り竿は上質な素材で作られているから、私が触っても良いのか心配になってしまう。
「駄目だったら誘ったりしない。
もしかして、エリシアは俺と一緒に来るだけで良かったのか?」
「そのつもりでした。
でも、せっかくの機会なので私もやってみますね!」
「ありがとう。貧乏くさい趣味に着き合わせてしまって申し訳ない」
ライアス様がそう口にした時、一瞬だけ表情に陰りが見えた。
きっと周囲から酷い言葉を浴びせられたのね。
どんな趣味でも立派なのだから、誇るべきだし尊重するべきだと思う。
「釣りだって立派な趣味だと思います!
確かに平民にも楽しまれていますけれど、誰にでも出来るわけじゃないですから。ライアス様はもっと誇ってください」
「……そうだな。だが、令嬢達から見下されることに変わりはない。
男からは好感を持たれるが、どうも女性には受け入れられないらしい」
「私は見下しませんから、私の前では誇ってください!」
「出来るか分からないが、頑張ってみよう。
エリシアは本当に優しいな。俺が助けたはずだが、いつの間にか俺が助けられてばかりだ」
「ふふっ、ようやくお返しが出来て嬉しいです」
「これでは俺が貰いすぎてしまうから、困ってしまうよ」
そんな言葉を交わしながら、家の横にある川岸に向かう私達。
今日も川の流れは穏やかだから、沢山釣れそうだ。
「まずは俺が手本を見せる。
こんな感じで、出来るだけ遠くに飛ばす」
「こうですか?」
屋敷に居た頃は貴重なお肉を確保するために釣りをすることもあったけれど、ライアス様の綺麗な動きを真似たら普段よりも遠くに浮きを飛ばすことが出来た。
屋敷の横ではめったに釣れなかったのに、すぐに糸が引っ張られる感触がした。
「エリシアの方が先にかかったか。
ここからは慣れだが、糸が切れないように加減しながら、こうやって巻いていくと……上手くやれば釣れる」
「やってみますね!」
引っ張ったり、糸を巻いたり。
何度か繰り返していると、針の先にかかった魚が見えてきた。
この魚は焼いて食べると美味しいのよね。
食べられる場所は少ないけれど、私が今までに食べてきた中では一番美味しかった。
「釣れました!」
「すごいな。ずっと釣りをしている俺よりも上手いぞ。
……負けてはいられないな」
ライアス様も無事にかかったみたいで、糸を巻き始める。
けれど、今回は逃げられてしまったみたいで、宙に浮いた針の先には何も付いていなかった。
「……エリシア、イリヤが呼びに来るまで勝負しよう。
どちらが沢山釣れるか、だ」
「分かりました!
負けませんからね!」
「俺も負けない!
本気で勝ちに行くぞ」
それからの私達はお互いに集中してしまったから、言葉は交わさずに黙々と釣りを続けた。
ライアス様も私も、勝負を始めてからは一度も取り逃がしていないけれど、私の方が早くかかるから、少しずつ差が付いていくのが分かる。
そんな状況だからライアス様は不満だったみたいで、こんなことを口にした。
「場所を交代しよう」
「分かりました」
けれど場所を変えても結果は変わらなくて、イリヤさんが呼びに来た時のライアス様はすごく悔しそうな顔をしていた。
もしも相手がお義母様だったら、癇癪を起して殴られ蹴られ鞭で打たれていたけれど、ライアス様はすぐに笑顔を浮かべた。
「勝負に付き合ってくれてありがとう。
俺の完敗だ」
「こちらこそ、ありがとうございました!
今日は沢山美味しいお魚が食べられますね!
「そうだな。
こんなに沢山は食べられないから、食べる分だけ残して残りは放そう」
「分かりました」
屋敷に居た時は、釣りすぎた分はしっかり乾かして後から食べていたのだけど、ライアス様は命を余計に奪わないように考えているみたい。
今は食べ物に困っていないから、こうするのは良いことだと思う。
だから、食べきれない魚たちを川に放してから家に戻った。
部屋に戻ると、中央に置かれている丸いテーブルの上に昼食が並べられていた。
私はまだ沢山食べられないから、私の分はお皿一枚にまとめられている。
ライアス様は沢山食べるから、お皿一枚に一品という盛り付けだ。
イリヤさんは使用人だからと一緒に食べることを遠慮していたけれど、少し前から一緒に食べるようになっていて、ライアス様の半分が盛り付けられている。
「「いただきます」」
三人揃って食事の前の挨拶をしてから、昼食をはじめる。
「明日の予定だが、朝には迎えの馬車が来ることになっている。
城に着くのは明後日になるから、泊りの用意をお願いしたい」
「畏まりました。
エリシア様の服はどうされますか?」
「事情は伝えてあるから、いつも通りで大丈夫だ」
「では、そのように準備いたします」
それからは、いつものように色々なことをお話しながら昼食を進める私達。
昼食の後は明日からの移動の準備をして、あっという間に一日が終わってしまった。
慣れない事をされていましたから、お疲れでしょう」
すっかり見慣れた部屋に戻ると、イリヤさんがそう口にする。
私は体力が戻ったからあまり疲れていないけれど、ライアス様が疲れ切った表情をしているから、大人しく待つことにした。
「ありがとうございます」
「それなら、少し釣りをしてくる」
ライアス様はそう口にすると、立てかけてある釣り竿を手に取って部屋を出ようとしていた。
このまま見送ると、私は一人で待つことになってしまうから、ライアス様を引き留める。
「ライアス様、私も一緒に行っても良いでしょうか?」
「もちろん。ただ、獲物がかかるまでは退屈だと思うが……それでも良いか?」
「はい!」
「よし、それならエリシアはこれを使って」
「えっと……私も一緒にしても良いのですか?」
差し出された釣り竿を受け取りながら、問い返す私。
この釣り竿は上質な素材で作られているから、私が触っても良いのか心配になってしまう。
「駄目だったら誘ったりしない。
もしかして、エリシアは俺と一緒に来るだけで良かったのか?」
「そのつもりでした。
でも、せっかくの機会なので私もやってみますね!」
「ありがとう。貧乏くさい趣味に着き合わせてしまって申し訳ない」
ライアス様がそう口にした時、一瞬だけ表情に陰りが見えた。
きっと周囲から酷い言葉を浴びせられたのね。
どんな趣味でも立派なのだから、誇るべきだし尊重するべきだと思う。
「釣りだって立派な趣味だと思います!
確かに平民にも楽しまれていますけれど、誰にでも出来るわけじゃないですから。ライアス様はもっと誇ってください」
「……そうだな。だが、令嬢達から見下されることに変わりはない。
男からは好感を持たれるが、どうも女性には受け入れられないらしい」
「私は見下しませんから、私の前では誇ってください!」
「出来るか分からないが、頑張ってみよう。
エリシアは本当に優しいな。俺が助けたはずだが、いつの間にか俺が助けられてばかりだ」
「ふふっ、ようやくお返しが出来て嬉しいです」
「これでは俺が貰いすぎてしまうから、困ってしまうよ」
そんな言葉を交わしながら、家の横にある川岸に向かう私達。
今日も川の流れは穏やかだから、沢山釣れそうだ。
「まずは俺が手本を見せる。
こんな感じで、出来るだけ遠くに飛ばす」
「こうですか?」
屋敷に居た頃は貴重なお肉を確保するために釣りをすることもあったけれど、ライアス様の綺麗な動きを真似たら普段よりも遠くに浮きを飛ばすことが出来た。
屋敷の横ではめったに釣れなかったのに、すぐに糸が引っ張られる感触がした。
「エリシアの方が先にかかったか。
ここからは慣れだが、糸が切れないように加減しながら、こうやって巻いていくと……上手くやれば釣れる」
「やってみますね!」
引っ張ったり、糸を巻いたり。
何度か繰り返していると、針の先にかかった魚が見えてきた。
この魚は焼いて食べると美味しいのよね。
食べられる場所は少ないけれど、私が今までに食べてきた中では一番美味しかった。
「釣れました!」
「すごいな。ずっと釣りをしている俺よりも上手いぞ。
……負けてはいられないな」
ライアス様も無事にかかったみたいで、糸を巻き始める。
けれど、今回は逃げられてしまったみたいで、宙に浮いた針の先には何も付いていなかった。
「……エリシア、イリヤが呼びに来るまで勝負しよう。
どちらが沢山釣れるか、だ」
「分かりました!
負けませんからね!」
「俺も負けない!
本気で勝ちに行くぞ」
それからの私達はお互いに集中してしまったから、言葉は交わさずに黙々と釣りを続けた。
ライアス様も私も、勝負を始めてからは一度も取り逃がしていないけれど、私の方が早くかかるから、少しずつ差が付いていくのが分かる。
そんな状況だからライアス様は不満だったみたいで、こんなことを口にした。
「場所を交代しよう」
「分かりました」
けれど場所を変えても結果は変わらなくて、イリヤさんが呼びに来た時のライアス様はすごく悔しそうな顔をしていた。
もしも相手がお義母様だったら、癇癪を起して殴られ蹴られ鞭で打たれていたけれど、ライアス様はすぐに笑顔を浮かべた。
「勝負に付き合ってくれてありがとう。
俺の完敗だ」
「こちらこそ、ありがとうございました!
今日は沢山美味しいお魚が食べられますね!
「そうだな。
こんなに沢山は食べられないから、食べる分だけ残して残りは放そう」
「分かりました」
屋敷に居た時は、釣りすぎた分はしっかり乾かして後から食べていたのだけど、ライアス様は命を余計に奪わないように考えているみたい。
今は食べ物に困っていないから、こうするのは良いことだと思う。
だから、食べきれない魚たちを川に放してから家に戻った。
部屋に戻ると、中央に置かれている丸いテーブルの上に昼食が並べられていた。
私はまだ沢山食べられないから、私の分はお皿一枚にまとめられている。
ライアス様は沢山食べるから、お皿一枚に一品という盛り付けだ。
イリヤさんは使用人だからと一緒に食べることを遠慮していたけれど、少し前から一緒に食べるようになっていて、ライアス様の半分が盛り付けられている。
「「いただきます」」
三人揃って食事の前の挨拶をしてから、昼食をはじめる。
「明日の予定だが、朝には迎えの馬車が来ることになっている。
城に着くのは明後日になるから、泊りの用意をお願いしたい」
「畏まりました。
エリシア様の服はどうされますか?」
「事情は伝えてあるから、いつも通りで大丈夫だ」
「では、そのように準備いたします」
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