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村の宿屋

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初日は、道中で日が暮れたので、近くの村で宿泊することになった。村には一件だけ宿屋があり、そこにお世話になる。

「いらっしゃい、こんな何もない村だけど、ゆっくりしていっておくれ」
そう笑顔で迎えてくれたのは40歳くらいの女将さんだった。

「女将さん……笑顔が素敵ですね……今日はよろしくお願いします……」
シュヴァルツは女性にはそういう風に接するのが当然のごとく、自然に手を握り、女将さんの耳元でそう囁いた。

まだまだ女盛りの女将さんは、色男のシュヴァルツにそんな風に言われてかなり嬉しいのか顔を真っ赤にして照れていた……

シュヴァルツの囁きが効いたのか、宿から夕食がサービスされた……手の込んだ家庭料理で、女将さんが料理上手なのがよくわかる。
「女将さん、一緒にお酒飲みましょうよ」
シュヴァルツがそう誘うと、照れながら私たちの席へとやってきた。
「まあ、こんなおばさんがいては迷惑ではないの」
「綺麗な景色はどんなに月日が経っても美しいものです、迷惑なんて思いもしないですよ」
完全にシュヴァルツの術中にハマっている女将さんはその言葉をうっとりと聞く……
「ほら、私の隣に来てください……お酒をお継ぎしますよ」
照れながらも拒否することなく、女将さんはシュヴァルツの隣に座った。
「今日は旦那さんはどうしたんですか」
「月に一度の買い出しに王都にいっているので留守です……」
「それはそれは……寂しいでしょ……」
そう言うと女将さんの手を握った。

すごいのはそんなシュヴァルツの行動を、ラーオークもアリナも何も言わないことであった……そっと聞いてみると二人とも同じようなことを言った。
「自由恋愛だからな、無理やりでもないし、俺たちが止める必要もないだろ」
確かにそうだけど……相手は既婚者なんだけど……

夕食が終わると、部屋に戻ってルーカスと会話した……まだ試作品と言うことで、水晶の映像が少し乱れているけど、ちゃんとルーカスが映ってて嬉しかった。
「ルーカス、ちゃんとご飯食べた?」
「食べたよ、赤獅子亭で定食を食べたんだ、美味しかったよ」
「そう、ならいいけど、ちゃんとご飯は食べるのよ」
「エルレーンもね」

それからたわいもない会話を2時間ほどして、通話を終わりにした。

うん、これなら一月くらいルーカスに会わないくても我慢できそうだ……そう確信した……

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