誰にも邪魔させない

咲倉なこ

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気づけよバカ。

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「付き合ってるフリをしたのは、
海莉から坂城を離したかったからだよ」




へ?


どう言うこと?


柊の言葉の意味を理解するのに時間がかかっていると、柊は私の頬にそっと触れた。




「それってどういう…?」


「1回しか言わねーから、よーく聞けよ」


「う、うん」


なになになに。


改まった柊に何故かすごくドキドキする。




「俺は海莉のことが…






キーンコーン───




え…?


柊の言葉にかぶって、予鈴のチャイムが鳴って。


一番肝心なところが聞こえなかった。




こんなことってある!?


「あの、もう1回…」


恐る恐る聞いてみると案の定、

「1回しか言わないって言ったよな」

と柊は教えてくれなかった。


やっぱりダメか…。


"オレは海莉のことが…"


なんだったんだろう。


ちょっとだけ期待してしまった自分がいる。




でも、そんなはずないか。


自分に都合のいい言葉を想像して、すぐに取り消した。


諦めて教室に戻ろうとすると、柊に捕まれていた腕を引っ張られて、態勢を崩す私の耳元で声がした。






「お前のことが
好きなんだよ、バーカ!」






今度ははっきり聞こえた。


柊が私のことを好き…?




「え!?!?」


柊の口からそんな言葉を聞く日が来るなんて、思っても見なかった。


空いた口が塞がらない。




「マジで鈍感すぎなんだけど」


「いや、だって柊私のこと女として見れないって…」


言ってたよね…?


「は?いつそんなこと言ったよ?」


「中学の時、友達と話してるの聞いちゃって」


だから私はずっと諦めてたのに。


せめて幼なじみと言う立場は守ろうって、ずっとそう接してきたのに。






「あー、あんなの、
照れ隠しに決まってんじゃん」


「て、照れ隠し?」




「お前さ、こんだけ長い間一緒にいるのに俺のこと全然分かってないね」


柊はそう言って、少しずつ私に顔を近づけてきた。


柊の頬はほんのりピンクに染まっていて。


あの柊が照れるとか本当にあるんだって、なんかリアルに感じて。


すごくドキドキする。


鼓動が早くなる。




柊の目を見ると目が合って。


更に加速する鼓動。




「俺も好きなヤツ以外にキスなんてしないから」



柊は、そう言って私に唇を重ねた。






「っ…」


そっと目を開けると、柊は私の目の前にいる。


信じられない。


これは夢?


そうか私はまだ夢の中にいるのかな?




「柊、私のこと殴って」


「はあ?」


「これって、夢かな…?
柊が私のこと好きって、本当に現実?」


「まだ疑ってんの?」


柊からはぁと大きなため息が聞こえた。


「だって、柊…」


今までの色んな気持ちが入り交ざって、涙が込み上げてくるのが分かる。


本当にホント?


こんなに嬉しいことってある?






そんな泣きそうな私を見て、

「マジその顔ダメ。我慢できなくなる」




柊はそう言ってまた私にキスを落とした。


今度は軽いキスじゃなくて深くて甘くて、とろけそうで。


今までのキスとは全然違う。


何も考えられなくなる。




なにこれ、どうしよう…。


私どうなっちゃうの…?


心臓が持たないよ。




そうこうしている間に、今度は本鈴が鳴って。


授業が始まっちゃうって柊の肩を叩いて訴えかけても、やめようとしない柊。


そんな強引な柊にすごくドキドキして。


今は溺れたいと思った。




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