誰にも邪魔させない

咲倉なこ

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気づけよバカ。

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お昼休みの時間になって、柊と坂城くんは教室を出て行った。


気になって2人の後を追いかけるようにして廊下に出ると、

「ねー、ちょっといい?」


「私?」

「聞きたいことがあるから、来てくれる?」


他のクラスの知らない女子たちに声をかけられた。


なんか嫌な予感がする…。





案の定、人気のない中庭に連れて来られたと思えば、

「あんた、柊くんと付き合ってるんだよね?」

とリーダーっぽい女子に威圧感満載で聞かれる。


そうだった、その設定忘れてた。


「う、うん…」


一応まだ付き合ってるフリは続けた方がいいのかなと思い、女子たちの言葉に頷く。


「でも昨日、坂城と一緒に帰ってたよね?」


あ…昨日の見られてたんだ。

これはまずい。


「柊くんに悪いと思わないの?」


「それには事情がありまして…」




私がちゃんと説明をしようとする前に、女の子たちが次々と口を開く。


「お前の事情なんて聞いてねーよ。
ふらふらしてるんだったら、
とっとと柊くんと別れてくれない?」

「柊くんかわいそう」

「こんなブスに裏切られるなんて、マジで最低」




耳を塞ぎたくなった。


確かに私の行動は軽率だった。


だけどなんでこんな事言われなきゃいけないの。


もう嫌だよ…。


下を向いて落ちそうな涙を必死にこらえる。




「なんとか言いなさいよ!」



何も言わない私を見て、更に女子たちはヒートアップしていく。





そんな時、


「ねー、そんなところで何やってんの?」


聞き覚えのある声がして。




顔を上げると坂城くんがいた。




坂城くん…。




「お前らさ、こんなダサいこと辞めなよ」


坂城くんは女子集団のリーダーっぽい子に話しかけている。


知り合い…なのかな?


「坂城には関係ないでしょ?」


「関係あるじゃん。
言っとくけど、一緒に帰ろうって誘ったの僕だから」


「なに言ってるの、うそでしょ?」


坂城くんは、また私をかばってくれようとしている。


何でいつもそんなに優しいの…。




「それにさ、こんなとこ黒川に見られたらどうなるかな?
女でも容赦しないって言ってなかったっけ?」


坂城くんはリーダーの子に一歩近づくと、


「なんなら僕がチクってもいいけど?」


坂城くんはドスのきいた低い声でそう言って。


女子たちは少しずつ後ずさりして、表情を歪めながら校内へ戻っていった。






女子たちがいなくなってホッとして、力が抜けて地面にしゃがみ込んだ。


「坂城くん、ありがとう…」


「いいえー」


坂城くんはそう言って私の隣に腰を下ろす。




「女子って大変だね」


「まあね…でも私の行動も軽率だったし」


「でもそれは黒川に頼まれてたからだよね?
海莉ちゃんは何も悪くないよ」


坂城くんはどこまで優しいんだろう。




「一緒に帰ろうって誘ったのは私なのに…。
いつも本当にごめんね…」


「謝んないで、僕が好きでやってる事だから」




坂城くんの優しさはとても大きくて。


私にはもったいないくらい。


感謝してもしきれない。




でも、


だからこそ、


私は坂城くんに言わなきゃいけないことがある。




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