カレカノごっこ。

咲倉なこ

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最後のデート。

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伊吹くんと2人で学校の校門を出る。

もう、こうやって伊吹くんの隣を歩くこともないと思ってたから、不思議な感覚だった。


「どこ行くの?」

「えー、どこにしよう」


伊吹くんは眉を下げて笑った。


「ノープラン?」

「ノープラン!」

「開き直らないで」

「あはは」


大丈夫。

私、普通にいつもみたいに喋れてるよね?


「じゃあ私から提案!クレープ食べにいきたい」

「お、いいね」

「確かショッピングモールに新しくできたんだよねー」


そう言いながらショップを検索する。

そんな私を見て、伊吹くんは「食いしん坊」って言って笑った。


「もう、そこはいいでしょ!」


伊吹くんといつもみたいに言い合いながら、学校の近くにあるショッピングモールについた。

さっそく注文して、外の見晴のいいベンチでクレープを食べる。


「おいしい!」

「うまいな、これ」


甘さ控えめのクリームにもちもち生地のクレープは、何個でも食べれそうなくらい美味しかった。

つい食べるのに夢中になっていると、伊吹くんは不意に笑った。


「え、なに?」

「ん?何でもないけど?」

「今笑ってたー」

「そうかな?元々こんな顔だけど」


そう言ってクレープを頬張る伊吹くん。

そしてわざとらしく、唇の横にクリームをつけて私と目線を合わせた。


「わざとやったでしょ?」

「なんのこと?」


伊吹くんはしらばっくれているけど、明らかに私に気づいて欲しそうにニコニコしている。

これ、”クリームついてる”って言ったら”取って”って言われるやつじゃん。

そんなの私には難しすぎるんだけど。

何よりクリームを付けてる伊吹くんもさまになってるから、イケメンって怖い。


私はポケットからティッシュを取り出して、何も言わずに伊吹くんの口元についたクリームを取った。

今の私にはここまでが限界。

すると伊吹くんはキョトンとした顔をした。

超至近距離でイケメンが目をまんまるさせている。


なぜ?


「いや、取ってくれると思ってなくって」


何だそれ。

取ってほしくて付けたんじゃないの?

ずっとクリームついたままでもよかったわけ?


「新奈もクリーム付けてよ」

「さすがに意味分かんない」

「俺も取ってみたい」

「無理」

「えー何でー」


そんなの恥ずかしいからに決まってるでしょ。

伊吹くんはイケメンだから何してもいいよ。

私がクリーム付けてるとか、ただの食べ方汚い女子じゃん。

意地でもクリームを付けない私をまじまじと見ている伊吹くん。

や、やめてほしい…。

そんなに見られると緊張してうまく食べれなくなる。

口を開けるのすら恥ずかしくなるんだけど…。


「そんなに見ないで」

「じゃあク…「クリームはつけない!」


伊吹くんの言葉に重ねてそう言った私に、痺れを切らした伊吹くんはまさかの強制突破。


「クリームついてるよ」


そう言って私の唇を親指で拭った。


「あれ、やっぱついてなかったや」


皆藤くんは悪い顔で私にそう言った。

まさかの行動と頬張っているクレープのせいで言葉が出てこない。

そんな動揺した私を見て、伊吹くんは満足そうに笑った。


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