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講義
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「カヌスはどうやって、化神族に生命を与えているんでしょう?」
俺が首を傾げると、オルさんから当然とばかりの答えが返ってくる。
『向こうは勇者コンソールを持っているからねえ』
「それが大事なんですか?」
首肯するオルさん。まあ、世界を改変出来るような代物なんだから、魔力生命体だって生み出せるんだろう。
『恐らく勇者コンソールは、七次元の代物なんだと僕は推測しているよ』
「七次元?」
それがどれだけ凄いのかが分からない。そもそも五次元や六次元がどんなものか知らないのだ。
「七次元だと何が出来るんですか?」
『情報の編集や改変だね』
ん? 曖昧な答えにまた首をひねる。と言うか、この場でこの話に付いてこれるのは、きっちり魔法を習ったバヨネッタさんや魔女島のジンジン婆様くらいだろう。
「それは凄い事なんですよね?」
おずおずとオルさんに尋ねる。俺の反応が芳しくないのを察してか、オルさんが丁寧に答えてくれた。
『そうだねえ、ハルアキ宰相は、次元に関してどのくらいの知識を持ち合わせているんでしょう?』
どのくらいかあ。
「多分、地球の一般的な知識としては、縦・横・奥行きの三次元に、時間を加えた四次元までですね」
「そんなものなの?」
俺の答えに、バヨネッタさんが驚く。
『いや、逆に十分ですよ。こちらの世界だと、そこら辺の知識自体持ち合わせていない者も少なくないですから』
オルさんの返答に、更に驚くバヨネッタさん。きっと魔女にしてみたら、知っていて当然。と言うか、五次元、六次元は基礎知識なんだろう。
『我々の知識になるから、地球と必ずしも同一ではない。と前置きしてから話すけど、こちらの世界では、五次元は『色』。六次元は『情報』とされているね』
五次元が『色』で六次元が『情報』。…………いや、『色』って何?
「し、『色』ですか?」
『うん。確か地球だと仏教用語になると、立花女史が言っていたねえ』
仏教用語で『色』? …………あ!
「色即是空、空即是色の『色』ですか?」
『そうそう、そんな事を呟いていたねえ』
成程。となると、『色』とは実在の事を指す用語だろう。
『二次元空間ではそのもの色や、または図形などを表し、三次元空間になると、そこに質量や光、音と言ったものが加わるね』
うんうん。何となく想像出来る……か?
「光は二次元じゃないんですね?」
『光の受け取り手は三次元になるからねえ』
ああ、そうか。二次元を見ている俺たちは三次元の存在なんだから、光は三次元方向に向かっているのか。
「で、六次元が『情報』……ですか?」
これも意味が分かるような、分からないような。
『例えば、三次元空間で朝から昼に掛けて山に登る。と言った場合、必要になるのは三次元空間の山の正確な情報。これには空間座標に加えて、五次元の『色』の情報を加えないと、それを山とは言えませんよね? 更に朝から昼に掛けて山を登る。となると、四次元の時間情報も必要になります。このように、『情報』と言う次元は、それよりも低位の次元を包含し、それをそれと決定付ける性質があるんです』
ああ。オルさんが言わんとしている事が何となく分かるな。でも、そうなると逆に理解出来ない事柄が出てくる。
「六次元が『情報』なのに、その次元で情報の編集や改変は出来ないんですか?」
『一般には、出来ない。とされていますね。我々が考える六次元『情報』は、過去から未来へ向かって、一方向に書き連ねられていく性質を持っていると考えられているので、それを六次元のレベルで編集したりは出来ない。と考えられているんです』
んん? どう言う事?
「例えば、二次元を真っ黒に塗り潰したとして、それを真っ白に変えるのに、編集や改変は必要ないのよ」
バヨネッタさんはさも当然と言い切るが、
「必要でしょう?」
これには首肯出来ない。
「オルが言っていたでしょう。六次元『情報』は、過去から未来へ向かって、書き連ねられていくと。過去に二次元を真っ黒にしたとしても、現在で二次元は真っ白と情報を追加すれば、未来の二次元情報では、二次元は真っ白になるのよ。六次元の『情報』はその繰り返しね」
「ああ!」
成程。法律の改め文みたいなものか。◯◯法第◯条中「△△」を「✕✕」に改める。みたいな。確かにその方式でいけるなら、六次元の『情報』を編集や改変する必要はない。
「良く出来ていますね」
「まあ。抜け道はあるのだけど」
「抜け道、ですか?」
バヨネッタさんの発言には、本人だけでなく、オルさんもにんまり顔だ。これは俺が知っているものなのだろうなあ。何なのか、見当も付かないけど。
「…………分かりません」
この場であまり時間を食う訳にもいかないので、早々にギブアップする。これに笑みを深めるバヨネッタさん。
「魔力よ」
「はあ?」
いや、ドヤ顔だけど、魔力が何?
「ハルアキは、魔力がどんなものか正確に理解しているかしら?」
「正確に、ですか? 確か、世界は時空と魔力のみで存在し、魔力が時空に作用する事で、次元が形成されるとか何とか」
俺の説明に嘆息をこぼすバヨネッタさん。いや、魔女の従僕なのに不勉強ですみません。
「まあ、簡単に言えば、魔力とは次元を捻じ曲げる力ね」
「次元を捻じ曲げる力、ですか?」
俺は首を傾げる。
「そう。例えば、一次元と言うと、魔力は一方向へ真っ直ぐ進んでいるだけ。と想像しがちだけど、実際の魔力は捻れる性質を持っている為に、右や左へぐねぐねとうねるのよ」
「はあ?」
またも溜息を漏らされてしまった。いや、分からんて。
「では想像しなさい。0次元と言う始点からぐねぐね曲がりながら、一次元の魔力が始点の0次元へ戻ってきた場合、人はそれを歪んだ円と呼ぶでしょう。するとそこには一次元ではあり得ないはずの、面が出来上がるのよ」
「あ……! つまり魔力には低次元のものを高次元に押し上げる力がある。と言う事ですか?」
「そう言う事」
とバヨネッタさんは鷹揚に頷いてみせる。しかし成程。そうなってくると話が変わってくるな。一次元は二次元に、二次元は三次元に。そうやって魔力によって次元を上げられるなら、六次元の『情報』も魔力で捻じ曲げ、より高位の、七次元の編集や改変が出来るようになる。
そうなると、朝から昼に掛けて山へ登る。の意味合いも違ってくる。編集、改変が出来るなら、わざわざ朝っぱらから山を登らず、昼間一瞬にして山の頂上に行けるのだから。それって、
「それって、魔法やスキルみたい……」
「みたいじゃなくて、それが魔法やスキルなのよ」
おお! 何か鳥肌立ったんですけど!
俺が首を傾げると、オルさんから当然とばかりの答えが返ってくる。
『向こうは勇者コンソールを持っているからねえ』
「それが大事なんですか?」
首肯するオルさん。まあ、世界を改変出来るような代物なんだから、魔力生命体だって生み出せるんだろう。
『恐らく勇者コンソールは、七次元の代物なんだと僕は推測しているよ』
「七次元?」
それがどれだけ凄いのかが分からない。そもそも五次元や六次元がどんなものか知らないのだ。
「七次元だと何が出来るんですか?」
『情報の編集や改変だね』
ん? 曖昧な答えにまた首をひねる。と言うか、この場でこの話に付いてこれるのは、きっちり魔法を習ったバヨネッタさんや魔女島のジンジン婆様くらいだろう。
「それは凄い事なんですよね?」
おずおずとオルさんに尋ねる。俺の反応が芳しくないのを察してか、オルさんが丁寧に答えてくれた。
『そうだねえ、ハルアキ宰相は、次元に関してどのくらいの知識を持ち合わせているんでしょう?』
どのくらいかあ。
「多分、地球の一般的な知識としては、縦・横・奥行きの三次元に、時間を加えた四次元までですね」
「そんなものなの?」
俺の答えに、バヨネッタさんが驚く。
『いや、逆に十分ですよ。こちらの世界だと、そこら辺の知識自体持ち合わせていない者も少なくないですから』
オルさんの返答に、更に驚くバヨネッタさん。きっと魔女にしてみたら、知っていて当然。と言うか、五次元、六次元は基礎知識なんだろう。
『我々の知識になるから、地球と必ずしも同一ではない。と前置きしてから話すけど、こちらの世界では、五次元は『色』。六次元は『情報』とされているね』
五次元が『色』で六次元が『情報』。…………いや、『色』って何?
「し、『色』ですか?」
『うん。確か地球だと仏教用語になると、立花女史が言っていたねえ』
仏教用語で『色』? …………あ!
「色即是空、空即是色の『色』ですか?」
『そうそう、そんな事を呟いていたねえ』
成程。となると、『色』とは実在の事を指す用語だろう。
『二次元空間ではそのもの色や、または図形などを表し、三次元空間になると、そこに質量や光、音と言ったものが加わるね』
うんうん。何となく想像出来る……か?
「光は二次元じゃないんですね?」
『光の受け取り手は三次元になるからねえ』
ああ、そうか。二次元を見ている俺たちは三次元の存在なんだから、光は三次元方向に向かっているのか。
「で、六次元が『情報』……ですか?」
これも意味が分かるような、分からないような。
『例えば、三次元空間で朝から昼に掛けて山に登る。と言った場合、必要になるのは三次元空間の山の正確な情報。これには空間座標に加えて、五次元の『色』の情報を加えないと、それを山とは言えませんよね? 更に朝から昼に掛けて山を登る。となると、四次元の時間情報も必要になります。このように、『情報』と言う次元は、それよりも低位の次元を包含し、それをそれと決定付ける性質があるんです』
ああ。オルさんが言わんとしている事が何となく分かるな。でも、そうなると逆に理解出来ない事柄が出てくる。
「六次元が『情報』なのに、その次元で情報の編集や改変は出来ないんですか?」
『一般には、出来ない。とされていますね。我々が考える六次元『情報』は、過去から未来へ向かって、一方向に書き連ねられていく性質を持っていると考えられているので、それを六次元のレベルで編集したりは出来ない。と考えられているんです』
んん? どう言う事?
「例えば、二次元を真っ黒に塗り潰したとして、それを真っ白に変えるのに、編集や改変は必要ないのよ」
バヨネッタさんはさも当然と言い切るが、
「必要でしょう?」
これには首肯出来ない。
「オルが言っていたでしょう。六次元『情報』は、過去から未来へ向かって、書き連ねられていくと。過去に二次元を真っ黒にしたとしても、現在で二次元は真っ白と情報を追加すれば、未来の二次元情報では、二次元は真っ白になるのよ。六次元の『情報』はその繰り返しね」
「ああ!」
成程。法律の改め文みたいなものか。◯◯法第◯条中「△△」を「✕✕」に改める。みたいな。確かにその方式でいけるなら、六次元の『情報』を編集や改変する必要はない。
「良く出来ていますね」
「まあ。抜け道はあるのだけど」
「抜け道、ですか?」
バヨネッタさんの発言には、本人だけでなく、オルさんもにんまり顔だ。これは俺が知っているものなのだろうなあ。何なのか、見当も付かないけど。
「…………分かりません」
この場であまり時間を食う訳にもいかないので、早々にギブアップする。これに笑みを深めるバヨネッタさん。
「魔力よ」
「はあ?」
いや、ドヤ顔だけど、魔力が何?
「ハルアキは、魔力がどんなものか正確に理解しているかしら?」
「正確に、ですか? 確か、世界は時空と魔力のみで存在し、魔力が時空に作用する事で、次元が形成されるとか何とか」
俺の説明に嘆息をこぼすバヨネッタさん。いや、魔女の従僕なのに不勉強ですみません。
「まあ、簡単に言えば、魔力とは次元を捻じ曲げる力ね」
「次元を捻じ曲げる力、ですか?」
俺は首を傾げる。
「そう。例えば、一次元と言うと、魔力は一方向へ真っ直ぐ進んでいるだけ。と想像しがちだけど、実際の魔力は捻れる性質を持っている為に、右や左へぐねぐねとうねるのよ」
「はあ?」
またも溜息を漏らされてしまった。いや、分からんて。
「では想像しなさい。0次元と言う始点からぐねぐね曲がりながら、一次元の魔力が始点の0次元へ戻ってきた場合、人はそれを歪んだ円と呼ぶでしょう。するとそこには一次元ではあり得ないはずの、面が出来上がるのよ」
「あ……! つまり魔力には低次元のものを高次元に押し上げる力がある。と言う事ですか?」
「そう言う事」
とバヨネッタさんは鷹揚に頷いてみせる。しかし成程。そうなってくると話が変わってくるな。一次元は二次元に、二次元は三次元に。そうやって魔力によって次元を上げられるなら、六次元の『情報』も魔力で捻じ曲げ、より高位の、七次元の編集や改変が出来るようになる。
そうなると、朝から昼に掛けて山へ登る。の意味合いも違ってくる。編集、改変が出来るなら、わざわざ朝っぱらから山を登らず、昼間一瞬にして山の頂上に行けるのだから。それって、
「それって、魔法やスキルみたい……」
「みたいじゃなくて、それが魔法やスキルなのよ」
おお! 何か鳥肌立ったんですけど!
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