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砂漠コース(後編)
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左カーブからロングストレートに突入し、カヌスのマシンは更に加速。前を行く二台にどんどんと追い付いていく。この調子だと、ロングストレート終わりの直角カーブか、その先の連続S字カーブでダイザーロくんとリットーさんに追い付きそうだな。流石はウェポンを全て排除して、スピード特化にしてあるマシンである。
そして俺の予測は的中し、S字カーブに入ったところで、リットーさんに追い付くカヌスのマシン。そんなカヌスのマシンを追い掛けるように、武田さんのマシンからマシンガンが撃たれるが、これを魅せ付けるような華麗なドライビングテクニックで、連続S字カーブを曲がるのに合わせて、回避していくカヌス。この見事なテクニックで、連続S字カーブが終わる頃には、先頭を走るダイザーロくんに追い付いていた。
S字カーブ終わりの左へのヘアピンカーブ。だがそこで待ち受けているミカリー卿とデムレイさんのマシンが、マシンを横にしてコースを塞ぐ。しかしこれを予想していたらしいカヌスは、マシンを大きく外回りさせて、これを回避。だがそんなカヌスのマシンを待ち受けていたのは、ショートストレートの両側を塞ぐ岩棚、その右の岩棚だった。
「ぶつかる!」と闘技場の客席から悲鳴が上がる中、カヌスはこれも見事なドライビングテクニックで右の岩棚に乗り上げ、またも壁走りを披露するが、そこへ襲い掛かるバヨネッタさんのマシンのボディ側部から展開したマシンガン。
しかしこれさえもマシンを加速させる事で回避するカヌス。だが前方はバヨネッタさん、そして俺のマシンがコースを塞いでいるので、このまま右の岩棚を進めば、カヌスのマシンはショートカットのトンネルの地点で、タイヤが空を蹴る事となり、マシンのコントロールを失い、左右の岩棚かコース路面にぶつかってお陀仏だろう。
まあ、そんなものは、華麗なるドライビングテクニックを有するカヌスを妨害するには、一手足らない。右岩棚を壁走りしていたカヌスのマシンは、そこから左へと方向転換し、今度は左の岩棚を壁走りし始めたのだ。
そしてその勢いでバヨネッタさんのマシンを抜き去るカヌスのマシンだったが、それはこちらも予想済みだ。
ズンッ!
バヨネッタさんのマシン上部から展開したレーザー砲が、カヌスのマシンの上部、カウルをかすめた。これだけでカウルが半分溶解して吹き飛ぶカヌスのマシン。『慧眼』を持つバヨネッタさんが撃つ光速のレーザー砲の直撃を避けるとは、流石は魔王。
か、己たちの王のマシンに傷が付いた事に、観客席から鼓膜が割れんばかりのブーイングが降り注ぐが、今はレース中、真剣勝負の最中である。俺たちに動揺はなく、後ろからカヌスのマシンを追い掛けるダイザーロくんとリットーさんの為に、バヨネッタさんが素早くマシンを縦に戻し、その横をダイザーロくんのマシンが抜いていく。
対するカヌスはと言えば、マシンの上部が破壊された事に、こちらも動揺はなく、バッテリーなどの内部機関を露出させたマシンをそのまま操縦し、壁走りでコースを塞ぐ俺のマシンの横を通過し、二周目同様に水面を湛えるショートカットのトンネルに突入していくのだった。
しかしこれには俺の口角がほんの少しだけ上がり、悟られないように元に戻る。おやおや、魔王様ともあろう御方が、何の警戒もなく、前周と同じ罠に自ら飛び込んでいって良かったのかな? 俺は心の中でほくそ笑み、水面に突っ込んだカヌスのマシンは、目論見通り、水没した。
これにほんの一瞬身体が強張るカヌス。内心はそれなりに動揺している事だろう。ショートカットのトンネル入口の水面は、前周と変わらないように見せ掛けて、穴を掘って落とし穴にしてあったのだ。これに気付けなかったカヌスは、まんまとこの落とし穴に自ら突っ込み、水没した訳である。
カウルが溶解して上部が丸出しのマシンでは、水で満たされた落とし穴を抜け出すのも難しかろう。しかもマシンは水没すると、一定確率でバッテリーかモーターがショートして、走行不能になる。ここで更に駄目出しだ。
『ダイザーロくん』
『はい!』
俺の合図で、縦にした俺のマシンの横を通り過ぎていったダイザーロくんのマシン後部のボディから、ワイヤーネットが射出される。これが落とし穴にフタをして、更にカヌスのマシンを身動き取れないものへと変えた。
そして正規コースの右カーブを曲がりながら、カヌスのマシンを置き去りにしていくダイザーロくんのマシン。その先の180度ヘアピンカーブからの、左カーブ、そして最後のロングストレートを突っ切れば、こちらの勝利である。
「させないよ」
しかし相手は初代魔王。そう甘くはいかないらしい。カヌスの言葉に応じるように、水面が爆ぜ、カヌスのマシンを捕らえていたワイヤーネットと、カヌスのマシンの残っていたカウルが上方へ吹っ飛んだ。成程。捕まった時の緊急脱出用に、カウルをパージする仕掛けをマシンに組み込んでいたのか。
完全に上部のなくなったカヌスのマシンは、二台のモーターをフル回転させて、水面から飛び出すと、ダイザーロくんのマシンを追走する。どうやらバッテリーもモーターもショートしなかったようだ。しかし余程ゲームで負けるのが嫌いなのかねえ、この初代魔王様は。泥臭いゲーム展開でも、勝利を諦めないな。
先頭を行くダイザーロくんのマシン。それを追走するカヌスのマシンに、二台に遅れて三番手を走るリットーさんのマシン。レースは最終盤となり、この三台を残して俺たちはレースから辞退して、三台の行方を見守る事に。そして三台は左への180度ヘアピンカーブを抜け、最後のロングストレートへと続く、左カーブを走っていた。
しかしカーブとなると、ドライビングテクニックの差が出るな。ダイザーロくんのマシンはどうしても外側に広がるような走りになってしまい、それがロスを生んで、徐々にカヌスのマシンとの差が縮まってきている。カヌスのマシンがカウルをパージして、軽量化したのも大きいか。それにシャーシの形状も、カウルに似せた形状をしていて、風を後方に流している。
レースは最後のロングストレートへと突入する左カーブの終わりへと差し掛かっていた。ここを上手く乗り越えれば、たとえカヌスに並ばれたとしても、バッテリー残量を考えれば、ダイザーロくんが出せる最高速度で、ロングストレートを突っ切って俺たちの勝ちだ。
だがレースと言うものは、何が起こるか分からない。最後のロングストレートに入ろうと言うところで、ダイザーロくんのマシンが砂でタイヤを滑らせてしまい、スピン。ギュルギュルと回転しながら明後日の方へ向かっていくダイザーロくんのマシンを横目に、カヌスは見事なコーナリングを見せて、ロングストレートへと突入した。
これに勝利を確信した観客たちが、歓声の大雨を闘技場の舞台へ降らせるが、こちらも策を用意していなかった訳じゃないんだよ。
先頭を走るカヌスのマシンに続いて、リットーさんのマシンがロングストレートへと突入した。そしてここで初披露するのが、リットーさんのマシンの奥の手だ。
ガシャンとリットーさんのマシン後方のボディがパージされ、中から展開したのはジェットエンジンだ。これに火が灯り、タービンが高速回転を始めて、周囲の空気を取り込みながら、噴流が勢い良く後方へと噴き出す。
これによってどんどん加速していくリットーさんのマシン。追い立てられるカヌスも、出来得る限りマシンを速く走らせるが、ここまでに散々俺たちから嫌がらせを受けたせいで、マシンのバッテリー残量はもう残っていなかった。
徐々にカヌスのマシンはそのスピードを落としていき、それとは対照的に、リットーさんのマシンが差を縮めていく。そしてゴールラインの手前、あと数メートルでゴールと言うところで、リットーさんのマシンがカヌスのマシンを追い抜き、一位でゴールラインを切ったのだった。
そして俺の予測は的中し、S字カーブに入ったところで、リットーさんに追い付くカヌスのマシン。そんなカヌスのマシンを追い掛けるように、武田さんのマシンからマシンガンが撃たれるが、これを魅せ付けるような華麗なドライビングテクニックで、連続S字カーブを曲がるのに合わせて、回避していくカヌス。この見事なテクニックで、連続S字カーブが終わる頃には、先頭を走るダイザーロくんに追い付いていた。
S字カーブ終わりの左へのヘアピンカーブ。だがそこで待ち受けているミカリー卿とデムレイさんのマシンが、マシンを横にしてコースを塞ぐ。しかしこれを予想していたらしいカヌスは、マシンを大きく外回りさせて、これを回避。だがそんなカヌスのマシンを待ち受けていたのは、ショートストレートの両側を塞ぐ岩棚、その右の岩棚だった。
「ぶつかる!」と闘技場の客席から悲鳴が上がる中、カヌスはこれも見事なドライビングテクニックで右の岩棚に乗り上げ、またも壁走りを披露するが、そこへ襲い掛かるバヨネッタさんのマシンのボディ側部から展開したマシンガン。
しかしこれさえもマシンを加速させる事で回避するカヌス。だが前方はバヨネッタさん、そして俺のマシンがコースを塞いでいるので、このまま右の岩棚を進めば、カヌスのマシンはショートカットのトンネルの地点で、タイヤが空を蹴る事となり、マシンのコントロールを失い、左右の岩棚かコース路面にぶつかってお陀仏だろう。
まあ、そんなものは、華麗なるドライビングテクニックを有するカヌスを妨害するには、一手足らない。右岩棚を壁走りしていたカヌスのマシンは、そこから左へと方向転換し、今度は左の岩棚を壁走りし始めたのだ。
そしてその勢いでバヨネッタさんのマシンを抜き去るカヌスのマシンだったが、それはこちらも予想済みだ。
ズンッ!
バヨネッタさんのマシン上部から展開したレーザー砲が、カヌスのマシンの上部、カウルをかすめた。これだけでカウルが半分溶解して吹き飛ぶカヌスのマシン。『慧眼』を持つバヨネッタさんが撃つ光速のレーザー砲の直撃を避けるとは、流石は魔王。
か、己たちの王のマシンに傷が付いた事に、観客席から鼓膜が割れんばかりのブーイングが降り注ぐが、今はレース中、真剣勝負の最中である。俺たちに動揺はなく、後ろからカヌスのマシンを追い掛けるダイザーロくんとリットーさんの為に、バヨネッタさんが素早くマシンを縦に戻し、その横をダイザーロくんのマシンが抜いていく。
対するカヌスはと言えば、マシンの上部が破壊された事に、こちらも動揺はなく、バッテリーなどの内部機関を露出させたマシンをそのまま操縦し、壁走りでコースを塞ぐ俺のマシンの横を通過し、二周目同様に水面を湛えるショートカットのトンネルに突入していくのだった。
しかしこれには俺の口角がほんの少しだけ上がり、悟られないように元に戻る。おやおや、魔王様ともあろう御方が、何の警戒もなく、前周と同じ罠に自ら飛び込んでいって良かったのかな? 俺は心の中でほくそ笑み、水面に突っ込んだカヌスのマシンは、目論見通り、水没した。
これにほんの一瞬身体が強張るカヌス。内心はそれなりに動揺している事だろう。ショートカットのトンネル入口の水面は、前周と変わらないように見せ掛けて、穴を掘って落とし穴にしてあったのだ。これに気付けなかったカヌスは、まんまとこの落とし穴に自ら突っ込み、水没した訳である。
カウルが溶解して上部が丸出しのマシンでは、水で満たされた落とし穴を抜け出すのも難しかろう。しかもマシンは水没すると、一定確率でバッテリーかモーターがショートして、走行不能になる。ここで更に駄目出しだ。
『ダイザーロくん』
『はい!』
俺の合図で、縦にした俺のマシンの横を通り過ぎていったダイザーロくんのマシン後部のボディから、ワイヤーネットが射出される。これが落とし穴にフタをして、更にカヌスのマシンを身動き取れないものへと変えた。
そして正規コースの右カーブを曲がりながら、カヌスのマシンを置き去りにしていくダイザーロくんのマシン。その先の180度ヘアピンカーブからの、左カーブ、そして最後のロングストレートを突っ切れば、こちらの勝利である。
「させないよ」
しかし相手は初代魔王。そう甘くはいかないらしい。カヌスの言葉に応じるように、水面が爆ぜ、カヌスのマシンを捕らえていたワイヤーネットと、カヌスのマシンの残っていたカウルが上方へ吹っ飛んだ。成程。捕まった時の緊急脱出用に、カウルをパージする仕掛けをマシンに組み込んでいたのか。
完全に上部のなくなったカヌスのマシンは、二台のモーターをフル回転させて、水面から飛び出すと、ダイザーロくんのマシンを追走する。どうやらバッテリーもモーターもショートしなかったようだ。しかし余程ゲームで負けるのが嫌いなのかねえ、この初代魔王様は。泥臭いゲーム展開でも、勝利を諦めないな。
先頭を行くダイザーロくんのマシン。それを追走するカヌスのマシンに、二台に遅れて三番手を走るリットーさんのマシン。レースは最終盤となり、この三台を残して俺たちはレースから辞退して、三台の行方を見守る事に。そして三台は左への180度ヘアピンカーブを抜け、最後のロングストレートへと続く、左カーブを走っていた。
しかしカーブとなると、ドライビングテクニックの差が出るな。ダイザーロくんのマシンはどうしても外側に広がるような走りになってしまい、それがロスを生んで、徐々にカヌスのマシンとの差が縮まってきている。カヌスのマシンがカウルをパージして、軽量化したのも大きいか。それにシャーシの形状も、カウルに似せた形状をしていて、風を後方に流している。
レースは最後のロングストレートへと突入する左カーブの終わりへと差し掛かっていた。ここを上手く乗り越えれば、たとえカヌスに並ばれたとしても、バッテリー残量を考えれば、ダイザーロくんが出せる最高速度で、ロングストレートを突っ切って俺たちの勝ちだ。
だがレースと言うものは、何が起こるか分からない。最後のロングストレートに入ろうと言うところで、ダイザーロくんのマシンが砂でタイヤを滑らせてしまい、スピン。ギュルギュルと回転しながら明後日の方へ向かっていくダイザーロくんのマシンを横目に、カヌスは見事なコーナリングを見せて、ロングストレートへと突入した。
これに勝利を確信した観客たちが、歓声の大雨を闘技場の舞台へ降らせるが、こちらも策を用意していなかった訳じゃないんだよ。
先頭を走るカヌスのマシンに続いて、リットーさんのマシンがロングストレートへと突入した。そしてここで初披露するのが、リットーさんのマシンの奥の手だ。
ガシャンとリットーさんのマシン後方のボディがパージされ、中から展開したのはジェットエンジンだ。これに火が灯り、タービンが高速回転を始めて、周囲の空気を取り込みながら、噴流が勢い良く後方へと噴き出す。
これによってどんどん加速していくリットーさんのマシン。追い立てられるカヌスも、出来得る限りマシンを速く走らせるが、ここまでに散々俺たちから嫌がらせを受けたせいで、マシンのバッテリー残量はもう残っていなかった。
徐々にカヌスのマシンはそのスピードを落としていき、それとは対照的に、リットーさんのマシンが差を縮めていく。そしてゴールラインの手前、あと数メートルでゴールと言うところで、リットーさんのマシンがカヌスのマシンを追い抜き、一位でゴールラインを切ったのだった。
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