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午下の微睡み
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「おはよう……」
俺がブランチを食べ終えた頃、バヨネッタさんが、カッテナさんを連れて宿屋の二階から下りてきた。
「おはようございます。と言うか、もう昼過ぎてますけど」
苦言と言う程ではなかったが、チクリときたのだろう。バヨネッタさんに睨まれてしまった。
「別に私が何時に起きてきたって良いでしょう」
まあ、俺も今日は昼前まで寝ていたから、他人の事をとやかく言えないけど。
「ベイビードゥいじめは止めたんですか?」
ここのところのバヨネッタさんの朝は、ベイビードゥを仕留める事から始まる。それだと言うのに、昼過ぎに起きてくるのが珍しかったのだ。これについて思うところがあるのか、注文もせずに、バヨネッタさんの朝はこれ。とばかりにウエイトレスさんが食事を運んできたところで、溜息を吐くバヨネッタさん。
「あいつ、大ボスと言っても物量で押してくるタイプだから、個としての戦闘力はそれ程高くないから、良い経験値稼ぎが出来ていたのだけど、ここのところ周囲に護衛を置く事を覚えてね。割りに合わなくなってきたから止めたわ」
それはありがたい。ジオからも何とかしろ。と命じられていたからなあ。バヨネッタさんが自らベイビードゥ狩りを止めてくれるなら、願ったりだ。
「それにしても何? 盛り上がっているみたいだけど?」
オートミールを食べながら、バヨネッタさんの視線はアンデッドたちが集まっている方へ向けられる。ダイザーロくんが囲まれているのはいつもの事だが、それ以外に集まっているアンデッドたちがいるからだ。
「ああ、武田さんが工作した玩具が、住民たちに人気になっているんですよ」
「ふ~ん」
聞いてきたわりには、然程興味が湧かなかったらしく、果実汁を飲んだ後に、サラダに手を出すバヨネッタさん。そんなバヨネッタさんを遠巻きに、何人かのアンデッドたちがバヨネッタさんの食事が終わるのを今か今かと待っていた。きっとバヨネッタさんとドロケイがしたいのだろう。
「バヨネッタさんのドロケイって、別にバヨネッタさんに権利がある訳じゃないですよね?」
「それはねえ。地上では昔からあるゲームだし」
「なら、ここで売り出しても問題ないですよね?」
「? 売り出す?」
これにバヨネッタさんだけでなく、バヨネッタの周りで控えるアンデッドたちが反応する。
「交換所の景品にしたいんですよ。現状バヨネッタさんしかドロケイを持っていないから、ドロケイをやりたい住民たちは、バヨネッタさんの空き時間を待つしかない状態なので」
俺の説明に得心がいったのか、一つ頷くバヨネッタさん。そしてそれを固唾を飲んで見守るアンデッドたち。
「別に良いわよ。私としてもここの住民たちと少しは骨がある勝負がしたいし」
これに後ろのアンデッドたちがガッツポーズをする。怨霊や亡霊はともかく、骸骨なんて骨しかないけど。
「ありがとうございます。武田さんからもあーだこーだと意見を貰ったので、それらを反映して町作りに活かしていけたらと思って」
「…………」
何だかバヨネッタさんから何とも言えない視線を向けられてしまった。
「ハルアキ、私たちの目的はこのエキストラフィールドを脱する事であって、ここに長居して居心地を良くする事じゃないのよ」
「分かってますよ。そちらはそちらで色々あるように、こちらはこちらで色々あるんです」
「色々?」
疑惑の目を向けないで貰いたい。そして俺は周りの目を気にしてバヨネッタさんに近付き、小声で話す。
「ボッサムの一件で、ブーギーラグナ側が活発にこちらへ接触してきています」
「そのようね」
「なのでそちらさんたちと上手く交渉出来れば、ブーギーラグナのいる居城まで、最短で行けるかと」
「ふ~ん」
俺の言を聞いても、バヨネッタさんの視線は俺を疑っている。
「ハルアキがそう考えたうえで行動したところで、向こうが約束を反故にする可能性の方が高いと思うけど?」
そうなんだよねえ。向こうにとって俺たちに協力する利がないからなあ。向こうからしたら放っておくのが妥当で、下手に交渉がこじれれば、命を狙ってきてもおかしくない。ただ……、
「交渉に関してなんですけど、ここにきて向こうの出方が変化したんですよ」
「変化?」
「俺のスキル、いや、今はギフトの『超時空操作』に統合された、『記録』ってあるじゃないですか」
こくりと頷くバヨネッタさん。
「俺がその『記録』持ちだと知った途端、他国の使者を招いての会議場の雰囲気が一気に変わったんです。ジオからも、『記録』があるなら魔王軍との戦争を左右するとか言われまして」
「何それ? 『記録』って、単に日々の出来事を記憶しておくスキルじゃないの?」
「俺もそう思って、改めて『鑑定(低)』で調べてみたんですけど……」
『記録』:①その日一日に所持者に起きた出来事を記録する。眠る事でオートセーブされる。
②???
「ってな感じで、②の方が分からないんです。武田さんやダイザーロくんにも鑑定して貰っても、結果は同じでした。これ自体は俺の第三のギフトであった『清塩』も、武田さんやオルドランドの占いオババに占って貰った時にも???だったので、まだ条件が開放されていないのかと。でも他国の使者たちは、『鑑定』の名が出てから明らかに警戒していましたね」
俺の説明に、バヨネッタさんは口元に手を当てて、
「ふ~ん。確かに気になるわね。でもまあ、向こうが勝手に警戒してくれるなら、ありがたいわね。けど過度に言い触らすのは避けるべきかも。警戒はするかも知れないけど、対策をされるかも知れないもの」
とバヨネッタさんは食事を再開した。確かに。『記録』は敵さんからは警戒対象かも知れないけど、それに対する対抗策がないとは言い切れないか。『偽装』があるから、ステータスの『記録』の表記は偽装しておこう。
俺がブランチを食べ終えた頃、バヨネッタさんが、カッテナさんを連れて宿屋の二階から下りてきた。
「おはようございます。と言うか、もう昼過ぎてますけど」
苦言と言う程ではなかったが、チクリときたのだろう。バヨネッタさんに睨まれてしまった。
「別に私が何時に起きてきたって良いでしょう」
まあ、俺も今日は昼前まで寝ていたから、他人の事をとやかく言えないけど。
「ベイビードゥいじめは止めたんですか?」
ここのところのバヨネッタさんの朝は、ベイビードゥを仕留める事から始まる。それだと言うのに、昼過ぎに起きてくるのが珍しかったのだ。これについて思うところがあるのか、注文もせずに、バヨネッタさんの朝はこれ。とばかりにウエイトレスさんが食事を運んできたところで、溜息を吐くバヨネッタさん。
「あいつ、大ボスと言っても物量で押してくるタイプだから、個としての戦闘力はそれ程高くないから、良い経験値稼ぎが出来ていたのだけど、ここのところ周囲に護衛を置く事を覚えてね。割りに合わなくなってきたから止めたわ」
それはありがたい。ジオからも何とかしろ。と命じられていたからなあ。バヨネッタさんが自らベイビードゥ狩りを止めてくれるなら、願ったりだ。
「それにしても何? 盛り上がっているみたいだけど?」
オートミールを食べながら、バヨネッタさんの視線はアンデッドたちが集まっている方へ向けられる。ダイザーロくんが囲まれているのはいつもの事だが、それ以外に集まっているアンデッドたちがいるからだ。
「ああ、武田さんが工作した玩具が、住民たちに人気になっているんですよ」
「ふ~ん」
聞いてきたわりには、然程興味が湧かなかったらしく、果実汁を飲んだ後に、サラダに手を出すバヨネッタさん。そんなバヨネッタさんを遠巻きに、何人かのアンデッドたちがバヨネッタさんの食事が終わるのを今か今かと待っていた。きっとバヨネッタさんとドロケイがしたいのだろう。
「バヨネッタさんのドロケイって、別にバヨネッタさんに権利がある訳じゃないですよね?」
「それはねえ。地上では昔からあるゲームだし」
「なら、ここで売り出しても問題ないですよね?」
「? 売り出す?」
これにバヨネッタさんだけでなく、バヨネッタの周りで控えるアンデッドたちが反応する。
「交換所の景品にしたいんですよ。現状バヨネッタさんしかドロケイを持っていないから、ドロケイをやりたい住民たちは、バヨネッタさんの空き時間を待つしかない状態なので」
俺の説明に得心がいったのか、一つ頷くバヨネッタさん。そしてそれを固唾を飲んで見守るアンデッドたち。
「別に良いわよ。私としてもここの住民たちと少しは骨がある勝負がしたいし」
これに後ろのアンデッドたちがガッツポーズをする。怨霊や亡霊はともかく、骸骨なんて骨しかないけど。
「ありがとうございます。武田さんからもあーだこーだと意見を貰ったので、それらを反映して町作りに活かしていけたらと思って」
「…………」
何だかバヨネッタさんから何とも言えない視線を向けられてしまった。
「ハルアキ、私たちの目的はこのエキストラフィールドを脱する事であって、ここに長居して居心地を良くする事じゃないのよ」
「分かってますよ。そちらはそちらで色々あるように、こちらはこちらで色々あるんです」
「色々?」
疑惑の目を向けないで貰いたい。そして俺は周りの目を気にしてバヨネッタさんに近付き、小声で話す。
「ボッサムの一件で、ブーギーラグナ側が活発にこちらへ接触してきています」
「そのようね」
「なのでそちらさんたちと上手く交渉出来れば、ブーギーラグナのいる居城まで、最短で行けるかと」
「ふ~ん」
俺の言を聞いても、バヨネッタさんの視線は俺を疑っている。
「ハルアキがそう考えたうえで行動したところで、向こうが約束を反故にする可能性の方が高いと思うけど?」
そうなんだよねえ。向こうにとって俺たちに協力する利がないからなあ。向こうからしたら放っておくのが妥当で、下手に交渉がこじれれば、命を狙ってきてもおかしくない。ただ……、
「交渉に関してなんですけど、ここにきて向こうの出方が変化したんですよ」
「変化?」
「俺のスキル、いや、今はギフトの『超時空操作』に統合された、『記録』ってあるじゃないですか」
こくりと頷くバヨネッタさん。
「俺がその『記録』持ちだと知った途端、他国の使者を招いての会議場の雰囲気が一気に変わったんです。ジオからも、『記録』があるなら魔王軍との戦争を左右するとか言われまして」
「何それ? 『記録』って、単に日々の出来事を記憶しておくスキルじゃないの?」
「俺もそう思って、改めて『鑑定(低)』で調べてみたんですけど……」
『記録』:①その日一日に所持者に起きた出来事を記録する。眠る事でオートセーブされる。
②???
「ってな感じで、②の方が分からないんです。武田さんやダイザーロくんにも鑑定して貰っても、結果は同じでした。これ自体は俺の第三のギフトであった『清塩』も、武田さんやオルドランドの占いオババに占って貰った時にも???だったので、まだ条件が開放されていないのかと。でも他国の使者たちは、『鑑定』の名が出てから明らかに警戒していましたね」
俺の説明に、バヨネッタさんは口元に手を当てて、
「ふ~ん。確かに気になるわね。でもまあ、向こうが勝手に警戒してくれるなら、ありがたいわね。けど過度に言い触らすのは避けるべきかも。警戒はするかも知れないけど、対策をされるかも知れないもの」
とバヨネッタさんは食事を再開した。確かに。『記録』は敵さんからは警戒対象かも知れないけど、それに対する対抗策がないとは言い切れないか。『偽装』があるから、ステータスの『記録』の表記は偽装しておこう。
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