世界⇔異世界 THERE AND BACK!!

西順

文字の大きさ
上 下
497 / 639

罠だらけ

しおりを挟む
 ドシャン! ドシャン! ドシャン!


 階段を下りていった先で俺たちを待っていたのは、リズム良く上から下へ落ちてくる天井だった。思わず俺は武田さんを振り返った。


「言ってなかったか? アルティニン廟は罠が多いんだよ」


 多いとかのレベルじゃなくない? 初手これって、死に戻り前提じゃないか。


「とりあえず、タイミングを測って、あの中間地点まで進もう」


 と武田さんが天井が落ちてくる部屋の先を指差す。確かにセーフポイント的に空間があるが、その先では左右の壁がガシャンガシャンとぶつかり合っていた。


「こんなのがずっと続くんですか?」


「ああ。しかもローグライクだから、入る度にダンジョンの構造が変わるんだよ」


 罠だらけで、ローグライクで、しかも出てくる魔物はレベル四十オーバー。ダンジョンの設定がナイトメアなんですけど? ペッグ回廊の方が万倍マシなんだけど?


「問題ないわ」


 そう口にしたのは、キーライフルに横座りして浮かぶバヨネッタさんだ。


「それはまあ、俺の『時間操作』タイプAで時間の流れを遅くすれば、この部屋を突破するのは容易いですけど」


「そんな事しなくても大丈夫よ。デムレイ」


 とバヨネッタさんは俺の発言を否定して、デムレイさんを振り返る。


「へいへい」


 やれやれと言った感じでデムレイさんは俺たちの先頭に出ると、その場にしゃがみこんで両手を床に当てた。すると、


 バギギギギギ…………ッ!!


 とドシャンドシャンと落ちてきていた天井が止まった。


「俺の『岩鎧』は岩石を生み出したり操ったりするスキルだ。こう言う罠なら、止める事は訳ない」


 へえ。岩の鎧を着込むスキルじゃなかったのか。いや、本来は岩の鎧を着込むスキルなんだろうけど、それを拡大解釈して、こう言う使い方をしているのかも知れない。


 デムレイさんが同行してくれたのはありがたい。と思ったのも束の間、今度は部屋の床がところどころ光りだした。それは魔法陣で、中からゾンビやスケルトン、怨霊などのアンデット系魔物が現れる。


「次から次へと」


 と俺たちはそれぞれ武器を構える。


「ハルアキは怨霊たちを重点的に狙いなさい!」


 とのバヨネッタさんの指示に従い、俺は怨霊を『清塩』と『聖結界』で作った白い曲剣で斬り刻んでいく。実態のあるゾンビやスケルトンは、物理で倒せるが、魔力体である怨霊は、そうはいかない。なので聖属性を持っている俺が相手をするのだ。


 とは言え、デウサリウス教の教皇にまで上り詰めたミカリー卿は、その魔導書に聖属性の魔法を持っているし、バヨネッタさんのキーライフルや武田さんのヒカルによる熱光線や、ダイザーロくんの電気なら効くが、物理系であるデムレイさんとカッテナさんは対処が難しい。まあ、対策はしてあるけど。


 デムレイさんは『空間庫』から、俺が渡した『清塩』をどさりと出してそれを鎧にしてアンデット系魔物に対抗していく。カッテナさんの短機関銃リペルのマガジンも、このダンジョンに入る前に聖属性の魔弾を生成するものにしてある。


 こうやって次々湧き出るアンデット系魔物たちを倒す事五分。やっと床の光は収まり、魔物は出現しなくなった。


「初手からこれは、結構悪い流れを引いているな」


 武田さんが肩で息をしながら、そう愚痴る。武田さんだけではない。ダイザーロくんやカッテナさんなども初戦で結構へとへとだ。相手は格上なのだからそれもやむなしだが。そこは俺やバヨネッタさん、ミカリー卿、デムレイさんでカバーすれば良いだろう。


 そんな中でも魔石回収は忘れずに。と武田さんとデムレイさんが掃除機を取り出したところで、


「何あれ!?」


 とバヨネッタさんが弾んだ声を上げた。その声に釣られてバヨネッタさんの方を見遣ると、左の壁面に祭壇があり、そこに二十センチ程のエメラルドと思しき像が祀られていた。


「おお! これは逆に運が良かったかも知れない」


 そのエメラルドの像を見た武田さんが、そんな事を口にする。


「言ったろ、ワープゲートを作動させるのにギミックが必要だって。あの像がそれだよ。あの像を五つ集めると、ワープゲートが起動するんだ」


 へえ、そうなのか。しかしこんなドシャンドシャン天井が落ちてくる部屋にエメラルドの像を仕込んでおくなんて、意地が悪いな。デムレイさんがいなければ素通りしていた。


「タケダ」


 なんて考えていたら、真剣な顔をしたバヨネッタさんが、武田さんを見詰めていた。


「もしかして、この翠玉の像はそのワープゲート分しか存在しないのかしら?」


 ああ。バヨネッタさん的にはワープゲートを起動させるのではなく、己の懐に入れておきたい訳か。


「良い事を教えてやる。一階に一つは必ずある」


「良し!」


「良っしゃあ!」


 バヨネッタさんと同時にデムレイさんも喜んでいた。まあ、この人も遺跡ハンターだからなあ。


「じゃあこの翠玉の像は、私が見付けたのだから、私が貰うわね」


 それが当たり前のように、キーライフルに乗って祭壇まで進み出るバヨネッタ。


「気を付けろよバヨネッタ。どんな罠が仕掛けられているか、分からないんだからな」


「え?」


 武田さんが注意した時には、バヨネッタさんは既に祭壇からエメラルドの像を取り上げていた。そして同時に、目が眩む程の光に部屋が満たされる。それが数秒間続き、収まったと思って目を開けると、俺は一人で知らない場所にいた。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~

結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は 気が付くと真っ白い空間にいた 自称神という男性によると 部下によるミスが原因だった 元の世界に戻れないので 異世界に行って生きる事を決めました! 異世界に行って、自由気ままに、生きていきます ~☆~☆~☆~☆~☆ 誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります! また、感想を頂けると大喜びします 気が向いたら書き込んでやって下さい ~☆~☆~☆~☆~☆ カクヨム・小説家になろうでも公開しています もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~> もし、よろしければ読んであげて下さい

2年ぶりに家を出たら異世界に飛ばされた件

後藤蓮
ファンタジー
生まれてから12年間、東京にすんでいた如月零は中学に上がってすぐに、親の転勤で北海道の中高一貫高に学校に転入した。 転入してから直ぐにその学校でいじめられていた一人の女の子を助けた零は、次のいじめのターゲットにされ、やがて引きこもってしまう。 それから2年が過ぎ、零はいじめっ子に復讐をするため学校に行くことを決断する。久しぶりに家を出る決断をして家を出たまでは良かったが、学校にたどり着く前に零は突如謎の光に包まれてしまい気づいた時には森の中に転移していた。 これから零はどうなってしまうのか........。 お気に入り・感想等よろしくお願いします!!

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

俺のスキルが無だった件

しょうわな人
ファンタジー
 会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。  攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。  気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。  偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。  若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。  いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。 【お知らせ】 カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

処理中です...