世界⇔異世界 THERE AND BACK!!

西順

文字の大きさ
上 下
464 / 639

意外な助っ人

しおりを挟む
「かーっはっはっはっ!!」


 愛竜であるゼストルスを駆るリットーさん。シンヤや勇者一行、ゼラン仙者は飛行雲で、パジャンさんはその羽根で空を飛び回り、人工天使たちを次々討ち落としていく。


 結果から言えば、『超時空操作』でトホウ山との転移扉を開く事は不可能だった。それでも全合一で感知出来る範囲であれば転移出来る事が分かったのは収穫だ。


 なので俺は一度日本へ転移門を開いて、武田さんとともに我が社に戻ると、武田さんが誰かに連絡を取っている間に、『超空間転移』が使える社員に頼んでパジャンへ。そこから転移魔法が使える人に頼んでトホウ山へ。そこから皆を回収してラズゥさんの呪符でパジャンの首都に戻り、『超空間転移』が使える社員に頼んで日本へ。そこから俺の転移門でここまで戻ってきた。戻ってきた時にはマルガンダを囲う結界は既に壊されていた。


 だがそれでもリットーさんやシンヤたちをマルガンダに迎えた価値はあった。『有頂天』を修得した彼らの力は、二次挑戦者たちとはやはり格が違っていた。当初はミカリー卿が人工天使たちを空から堕とし、それを二次挑戦者たちとイヤルガムが狩っていたのだが、どうやら出る幕はなくなったようだ。そんな彼らが今何をしているかと言うと、デーザン卿とマキシマ卿を追っている。


 結界が破壊されたマルガンダで人々が右往左往する中、その混乱に乗じてデーイッシュ派の二人の枢機卿は、首都マルガンダ内に入り込んだようだ。その捜索に彼らはあたっているのだ。と言っても奴らの行き先なんて誰にでも見当が付く。デウサリオンの聖伏殿だ。


 目立つサングリッター・スローンで聖伏殿に行けば、余計な混乱を招くだけだ。と俺は枢機卿二人の捜索には加わらず、人工天使たちから逃げ回るのに専念していた。


『ハルアキ様』


 そこにマチコさんから通信魔導具を通して連絡が入った。


『奴らが来ました。それも堂々と正面から』


 言われて、操縦室のモニターの一部を聖伏殿に変える。これはサングリッター・スローンに搭載されているドローンからの映像だ。すると、確かにそこには金糸の施された白いローブを着た二人の初老の男女が、部下を引き連れ聖伏殿前の広場を歩いている。しかも引き連れているのは、四対八枚の翼を携えた人工天使たちだ。翼の枚数が強さを表しているのなら、リットーさんやシンヤたちが相手をしている上空の天使たちより強い事になる。


 はあ。それにしても、こう堂々としていると言う事は、つまり、向こうには自分たちが悪行をしている自覚がない。自分たちこそが正義である。と言う事なのかな。


『止まりなさい』


 ミカリー卿が聖伏殿の前に立ち、二人の枢機卿を制止する。その声をドローンの集音マイクが拾っていた。


『これはこれは、ミカリー枢機卿ではありませんか。お噂は聞き及んでおりますよ。何でも元教皇であらせられるあなたが、氏素性も定かでない詐欺師に加担しておられるとか』


 俺の事かな? 確かにうちは両親とも会社員だし、家系図があるような家柄じゃあないけどね。


『民を騙しているのはそちらだろう? 人間を改造して偽天使を生み出すなんぞ、悪鬼魔族の所業だ』


 が、男の方、デーザン卿はそれを鼻で笑う。


『時代とは移り行くものなのです。人が真に楽園へとたどり着くには、人の身体のままではいられない。人を超える進化をしなければ到れないのですよ』


 そんなデーザン卿の言葉を、今度はミカリー卿が笑う。


『何がおかしい』


『いやなに、その出来損ないが人より優れた存在だと言うなら、何故人であるデーザン卿の下で働かされているのかと思ってね』


 ミカリー卿の言葉に眉間にシワを寄せるデーザン卿。


『契約ですよ。我々と天使たちの間に、上下関係がある訳ではありません』


『では何故、天使たちだけに戦わせているのかな?』


『役割分担ですよ。我々が作戦立案、天使たちがそれを実行する』


『人を超える存在だと言うのに、頭脳は人以下なのかい?』


 両手を握り締めてわなわなとするデーザン卿。


『ええい! 弱者の戯言にかかずらわっている暇はないのだ! 准天使どもよ! 小奴らを捻り潰せ!』


 人工天使たちに命令するデーザン卿だったが、『准天使どもよ』とか言っちゃったよこのおっさん。語るに落ちる。ってこう言うのを指すんだろうなあ。しかも動かない人工天使たち。その後にマキシマ卿が手を振ると、人工天使たちが動き出す。どうやら人工天使たちの生みの親は、デーザン卿ではなくマキシマ卿であるようだ。


 人工天使たちが一斉に二次挑戦者たち、そしてイヤルガムに襲い掛かる。が、


 ズダダダダダダダン…………ッッ!!


 そんな人工天使たちの頭上からミカリー卿の魔法による巨大な氷柱が降り注ぎ、『闇命の鎧』を着込んだバンジョーさんのパイルバンカーが一度に何十本も現れて、氷柱でうごけない人工天使たちを貫いていく。


 だがこの程度では人工天使たちは止まらなかった。貫通した傷は瞬く間に回復し、氷柱は人工天使たちが全身から放つ熱光線によって溶かされてしまった。


『ふ、ふはははははは!! 我々の叡智の結晶である准天使に勝るはずがないのだ。そこを退くならば命だけは見逃してあげても良いですよ』


『ははは。それは無理だし、あなた方には出来ないな』


 言ってミカリー卿は魔導書のページをめくり、自身の後ろに、聖伏殿を囲うように結界を張ってみせた。その結界の中にはバンジョーさんやイヤルガム、二次挑戦者たちの姿もあった。


『それは……! 不壊ふえ結界か!』


「不壊結界?」


『ミカリー卿が使える最強の結界魔法です』


 思わず声に出してしまった俺に、通信魔導具越しにマチコさんが答えてくれた。


『使用者の耐久値の十倍の強度の結界を張る魔法です』


 耐久値の十倍の強度か。『不老』のスキル持ちであるミカリー卿の結界となると、壊す事は不可能だろうな。けど、


「なんでミカリー卿も結界の中に入らなかったんですか?」


『そう言う魔法なんです。使用者が中に入らない事が結界作動の条件なんです。だからこそ強度が保たれるんです』


 成程。


『不壊結界か。確かに結界自体は壊す事は不可能。しかしあなたはどうかな? いくら『不老』のスキル持ちとは言え、スキルはスキル。使用し続ければ魔力を消費し、いつかは魔力が尽きるだろう。そうなった時、不壊結界を維持出来ているかな?』


 確かにそうだ。これは助力する為に向かった方が良いか?


「待たせたな」


 とそこに開きっ放しにしていた転移門から、武田さんが戻ってきた。助っ人を連れて。それは俺が予想だにしなかった相手だった。


「L魔王っ!?」


 それは白金色のサラサラヘアーにコバルトブルーの瞳、黒いエナメルのワンピースを着て、頭には角の付いたキャスケットを被った美少女バーチャル動画配信者であり、本物の天使であるL魔王だ。人工天使相手に、本物の天使をぶつけようって事?

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~

結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は 気が付くと真っ白い空間にいた 自称神という男性によると 部下によるミスが原因だった 元の世界に戻れないので 異世界に行って生きる事を決めました! 異世界に行って、自由気ままに、生きていきます ~☆~☆~☆~☆~☆ 誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります! また、感想を頂けると大喜びします 気が向いたら書き込んでやって下さい ~☆~☆~☆~☆~☆ カクヨム・小説家になろうでも公開しています もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~> もし、よろしければ読んであげて下さい

2年ぶりに家を出たら異世界に飛ばされた件

後藤蓮
ファンタジー
生まれてから12年間、東京にすんでいた如月零は中学に上がってすぐに、親の転勤で北海道の中高一貫高に学校に転入した。 転入してから直ぐにその学校でいじめられていた一人の女の子を助けた零は、次のいじめのターゲットにされ、やがて引きこもってしまう。 それから2年が過ぎ、零はいじめっ子に復讐をするため学校に行くことを決断する。久しぶりに家を出る決断をして家を出たまでは良かったが、学校にたどり着く前に零は突如謎の光に包まれてしまい気づいた時には森の中に転移していた。 これから零はどうなってしまうのか........。 お気に入り・感想等よろしくお願いします!!

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

俺のスキルが無だった件

しょうわな人
ファンタジー
 会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。  攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。  気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。  偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。  若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。  いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。 【お知らせ】 カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

処理中です...