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「バヨネッタさん、実家帰れたんですね」
「元々帰ろうと思えばいつでも帰れたのよ。ただ居心地が悪くて戻らなかっただけ」
と顔を背けるバヨネッタさん。まあ、親殺しなんてしていたら、その理由を知られていても居場所はないか。
「それでも、帰られたんですね」
「そうよ」
俺はそれ以上は足を踏み込まないようにした。きっとバヨネッタさんの中で、葛藤があった上で、それでも必要があって帰ったのだろうから。
「ゴルードさんのところで、壊れた武器を新調したんですよね?」
「ああ、そっちね」
俺の言に、待ってました。とばかりにバヨネッタさんがにやりと口角を上げる。そして宝物庫から身長よりも長大な金色の鍵を取り出した。
いや、良く見れば、鍵の先端に銃口が見え、それが銃であると分かる。しかし銃身には鍵を思わせる板が三枚付けられ、銃床部分には丸くて大きな輪が付いている。見た目は鍵の印象が強い。そしてその輪の中にはいつの間にか黒い球体が。っ! 目が合った!
「何を驚いているの。リコピンよ」
ああ! バヨネッタさんのガイツクールか。バヨネッタさんも俺のアニンのように、サポートキャラを作っていたっけ。バヨネッタさんのそれは黒い巨大トマトだ。
『誰がサポートキャラだ』
あはは。悪かったよ。アニンはサポートキャラじゃなくてバディだったね。
『全く』
怒らせてしまったな。まあ、今は静かにしておこう。それよりもバヨネッタさんの銃だ。
「形は独特ですけど、トゥインクルステッキから、あまり変化があるようには見えませんけど?」
俺は首を傾げた。銃身の三枚板は放熱板だろう。あれで発射する熱光線の熱で銃身が歪むのを防ぐんだろう。銃床にある輪にしても、バヨネッタさんは銃に座って操作するから、銃床の形に制限はない。大きな鍵の形をした銃と言うのは、ファンタジーな世界出身のバヨネッタさんが持つ銃としてはありだ。でも、前のトゥインクルステッキからしたら、バージョンアップしているようには見えなかった。わざわざ自身の『黄金化』と『金剛』で作った金と炭素の合金で、ゴルードさんにこれを作らせたのか?
「ふふ。これの名はサングリッター・スローン」
「サングリッター・スローン……」
サングリッターはそのまま訳せば『太陽の輝き』。スローンは『玉座』だ。鍵なのに『玉座』? まあ、バヨネッタさんは座って操作するしなあ。
「言っておくけど、これは鍵よ。キーライフルと名付けたわ」
でしょうね。もったいぶるバヨネッタさんだが、見れば分かります。
「鍵は何の為にあると思う?」
「錠を開けたり閉めたりするものです。……え? と言う事はそれに対応する錠があると言う事ですか?」
俺の答えに満足いったのか、鷹揚に頷いたバヨネッタさんが、その鍵を何もない中空に挿し込む。すると鍵から中空に放射状に光が広がり、それが巨大な扉のように中空に固定される。
ガチャリ。
とバヨネッタさんが鍵をひねれば、その巨大な扉が左右に開き、中から異空間が現れる。続いてその中に収められていた黄金の物体が、ゆっくりと真っ白なサンドボックスへと出てきた。
それは、直方体をベースにした横に長い物体だった。長さ四十メートル、幅は八メートル、高さ十五メートルと言ったところか。見た目の印象を言えば、SFに出てくる拳銃を巨大化したような姿をしている。しかしそれもバヨネッタさんの趣味で装飾されているが。それが底面の四対の履帯によってゆっくり前進する様は、異様であり威容な印象だ。
「何ですかこれ? 前方上部に砲門が付いているって事は、大砲ですか?」
それにしては取り回しが大変だ。上部の巨大砲門は下部と一体化しているので、戦車なんかの砲塔と違って、360度動かせないどころか、上下にも動かせそうにない。底面に履帯が付いているので、辛うじて動く砲台としての役割を果たしているが、俺から見たら失敗作だ。
「これは飛空艇よ」
「…………え?」
思わず、バヨネッタさんとこの飛空艇と呼ばれた物体を見比べてしまった。これが飛空艇? これ、空を飛ぶの?
「いつまでそこで呆けているつもり? 乗るわよ」
バヨネッタさんがそう言って側面に鍵を当てると、その部分が扉となって上から下へと降りてくる。扉内面は階段となっており、それを上り飛空艇内部へ入っていくバヨネッタさんの後を、俺は慌てて追い掛けた。
左右側面は部屋になっているらしく、中央通路を通り下部前面部へと進む。扉を開けると思った以上に広い船室、恐らく操縦室へと出た。ここで飛空艇を操縦するのだろう。
船室の前面には十脚の座席があり、その後ろに一脚ある。その最後尾の座席がバヨネッタさんの席かと思ったら、バヨネッタさんはその更に後ろにある床面の穴の前で止まると、その穴に鍵を挿し込んだ。
ガチャリ。
と一回転する鍵。それに連動して、床面から一際豪華な椅子がせり上がってきた。黄金に輝くその椅子は、長時間の航行でも疲れないようなゆったりとした造りでありながら、この飛空艇の長が座るに相応しい意匠が施されていた。船室の最後尾にあるその椅子に、当然のように腰を降ろすバヨネッタさん。すると周りにテーブルがせり上がってきて、これから空のクルージングでもするかのようだ。
「ハルアキも座りなさい。このサングリッター・スローンの性能を見せてあげるわ」
まさにスローン━━『玉座』だな。と内心で苦笑を浮かべながら、俺が前方の十席へと歩いてくと、
「何でそっちに行くのよ。あなたの席はそこよ」
とバヨネッタさんの前にある一席を指差された。どうやら俺の席は初めから決まっていたようだ。
ふう。と嘆息を漏らしながら席に着くと、その座り心地の良さと、バヨネッタさんの時同様にテーブルがせり上がってきて、もう何に驚けば良いのやら。それ以前に、魔王との決戦用にここまでのものを用意していた事実に、先程重拳を見せて得意になっていた自分を恥じる。
「リコピン」
『はい、マスター』
俺が着席した事を確認したバヨネッタさんの指示に、リコピンが反応する。成程、リコピンが操縦するのか。などと思っていると、周囲が全面モニターとなり、外の景色を映し出す。そして揺れもなくゆっくりと、サングリッター・スローンは浮上を開始した。
「元々帰ろうと思えばいつでも帰れたのよ。ただ居心地が悪くて戻らなかっただけ」
と顔を背けるバヨネッタさん。まあ、親殺しなんてしていたら、その理由を知られていても居場所はないか。
「それでも、帰られたんですね」
「そうよ」
俺はそれ以上は足を踏み込まないようにした。きっとバヨネッタさんの中で、葛藤があった上で、それでも必要があって帰ったのだろうから。
「ゴルードさんのところで、壊れた武器を新調したんですよね?」
「ああ、そっちね」
俺の言に、待ってました。とばかりにバヨネッタさんがにやりと口角を上げる。そして宝物庫から身長よりも長大な金色の鍵を取り出した。
いや、良く見れば、鍵の先端に銃口が見え、それが銃であると分かる。しかし銃身には鍵を思わせる板が三枚付けられ、銃床部分には丸くて大きな輪が付いている。見た目は鍵の印象が強い。そしてその輪の中にはいつの間にか黒い球体が。っ! 目が合った!
「何を驚いているの。リコピンよ」
ああ! バヨネッタさんのガイツクールか。バヨネッタさんも俺のアニンのように、サポートキャラを作っていたっけ。バヨネッタさんのそれは黒い巨大トマトだ。
『誰がサポートキャラだ』
あはは。悪かったよ。アニンはサポートキャラじゃなくてバディだったね。
『全く』
怒らせてしまったな。まあ、今は静かにしておこう。それよりもバヨネッタさんの銃だ。
「形は独特ですけど、トゥインクルステッキから、あまり変化があるようには見えませんけど?」
俺は首を傾げた。銃身の三枚板は放熱板だろう。あれで発射する熱光線の熱で銃身が歪むのを防ぐんだろう。銃床にある輪にしても、バヨネッタさんは銃に座って操作するから、銃床の形に制限はない。大きな鍵の形をした銃と言うのは、ファンタジーな世界出身のバヨネッタさんが持つ銃としてはありだ。でも、前のトゥインクルステッキからしたら、バージョンアップしているようには見えなかった。わざわざ自身の『黄金化』と『金剛』で作った金と炭素の合金で、ゴルードさんにこれを作らせたのか?
「ふふ。これの名はサングリッター・スローン」
「サングリッター・スローン……」
サングリッターはそのまま訳せば『太陽の輝き』。スローンは『玉座』だ。鍵なのに『玉座』? まあ、バヨネッタさんは座って操作するしなあ。
「言っておくけど、これは鍵よ。キーライフルと名付けたわ」
でしょうね。もったいぶるバヨネッタさんだが、見れば分かります。
「鍵は何の為にあると思う?」
「錠を開けたり閉めたりするものです。……え? と言う事はそれに対応する錠があると言う事ですか?」
俺の答えに満足いったのか、鷹揚に頷いたバヨネッタさんが、その鍵を何もない中空に挿し込む。すると鍵から中空に放射状に光が広がり、それが巨大な扉のように中空に固定される。
ガチャリ。
とバヨネッタさんが鍵をひねれば、その巨大な扉が左右に開き、中から異空間が現れる。続いてその中に収められていた黄金の物体が、ゆっくりと真っ白なサンドボックスへと出てきた。
それは、直方体をベースにした横に長い物体だった。長さ四十メートル、幅は八メートル、高さ十五メートルと言ったところか。見た目の印象を言えば、SFに出てくる拳銃を巨大化したような姿をしている。しかしそれもバヨネッタさんの趣味で装飾されているが。それが底面の四対の履帯によってゆっくり前進する様は、異様であり威容な印象だ。
「何ですかこれ? 前方上部に砲門が付いているって事は、大砲ですか?」
それにしては取り回しが大変だ。上部の巨大砲門は下部と一体化しているので、戦車なんかの砲塔と違って、360度動かせないどころか、上下にも動かせそうにない。底面に履帯が付いているので、辛うじて動く砲台としての役割を果たしているが、俺から見たら失敗作だ。
「これは飛空艇よ」
「…………え?」
思わず、バヨネッタさんとこの飛空艇と呼ばれた物体を見比べてしまった。これが飛空艇? これ、空を飛ぶの?
「いつまでそこで呆けているつもり? 乗るわよ」
バヨネッタさんがそう言って側面に鍵を当てると、その部分が扉となって上から下へと降りてくる。扉内面は階段となっており、それを上り飛空艇内部へ入っていくバヨネッタさんの後を、俺は慌てて追い掛けた。
左右側面は部屋になっているらしく、中央通路を通り下部前面部へと進む。扉を開けると思った以上に広い船室、恐らく操縦室へと出た。ここで飛空艇を操縦するのだろう。
船室の前面には十脚の座席があり、その後ろに一脚ある。その最後尾の座席がバヨネッタさんの席かと思ったら、バヨネッタさんはその更に後ろにある床面の穴の前で止まると、その穴に鍵を挿し込んだ。
ガチャリ。
と一回転する鍵。それに連動して、床面から一際豪華な椅子がせり上がってきた。黄金に輝くその椅子は、長時間の航行でも疲れないようなゆったりとした造りでありながら、この飛空艇の長が座るに相応しい意匠が施されていた。船室の最後尾にあるその椅子に、当然のように腰を降ろすバヨネッタさん。すると周りにテーブルがせり上がってきて、これから空のクルージングでもするかのようだ。
「ハルアキも座りなさい。このサングリッター・スローンの性能を見せてあげるわ」
まさにスローン━━『玉座』だな。と内心で苦笑を浮かべながら、俺が前方の十席へと歩いてくと、
「何でそっちに行くのよ。あなたの席はそこよ」
とバヨネッタさんの前にある一席を指差された。どうやら俺の席は初めから決まっていたようだ。
ふう。と嘆息を漏らしながら席に着くと、その座り心地の良さと、バヨネッタさんの時同様にテーブルがせり上がってきて、もう何に驚けば良いのやら。それ以前に、魔王との決戦用にここまでのものを用意していた事実に、先程重拳を見せて得意になっていた自分を恥じる。
「リコピン」
『はい、マスター』
俺が着席した事を確認したバヨネッタさんの指示に、リコピンが反応する。成程、リコピンが操縦するのか。などと思っていると、周囲が全面モニターとなり、外の景色を映し出す。そして揺れもなくゆっくりと、サングリッター・スローンは浮上を開始した。
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