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純粋種
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三月一日━━。日本。魔法科学研究所。俺の眼前では複数のモニターが壁一面を埋め尽くし、浅野から持ち込まれたサンドボックス内の映像を各モニターに映し出している。
映し出しているのはベナ草だ。それが様々な環境、森の中や草原、山地、寒冷地、熱帯などで育てられていた。現在、魔法科学研究所ではベナ草の生育実験が行われており、サンドボックスによって内部空間は分けられ、様々な環境が再現されている。人の近付かない環境でしか育たないベナ草が、サンドボックスによって再現された自然環境下ですくすくと育っていた。
育てられているベナ草は二種類に分けられ、その後、それらは様々な環境下、条件下で育てられている。
二種類のベナ草とは、まず一種類目は異世界で採取された普通のベナ草だ。バァによって疫病に冒されている為、生長能力、繁殖能力ともに低くなっている。自然環境下では代を重ねる程にその量、また、その薬効ともに減少するのがこの実験で判明しており、ではどのような環境下であれば生育が可能なのか、現在様々な環境実験を行っている。
もう一種類が、俺が生成した『清塩』の効果で、バァの疫病が取り払われたベナ草だ。こちらは人が寄り付かない自然環境であれば、順調に育つ事が確認されており、ではどれだけの『清塩』が生育に適量であるのか、『清塩』を溶かしたポーションではどうか、ハイポーションではどうか、環境での違いなど、生育具合や繁殖量などの実験が行われている。
そして、この二種類とは別に、新たに別のベナ草が先日この研究所にもたらされた。まあ、持ってきたのは俺なんだけど。
尸解仙法のガチャによって手に入れたベナ草。たまたまガチャで手に入ったものだったが、バァによって汚染されていない世界で唯一の生の純粋なベナ草であり、この生育には慎重に慎重を重ねる必要があった為に、俺は安易に『空間庫』から取り出す事をせず、日本に戻ってきてからオルさんに、このベナ草をどうしたものか。と相談した。
研究所にあるオルさんの研究室でこの話をしたら、オルさんが固まった。思考停止である。その後、
「うおおおおおおおおおッ!!」
と雄叫びを上げたと思ったら、各所に連絡を入れ、魔法科学研究所は厳戒態勢へと移行したのだ。
まず研究所は立ち入り禁止となり、研究員は一ヶ所に集められ、頭から爪先まで殺菌除菌滅菌の上、浄化魔法を何度も掛けられ、更に俺の『清浄星』で強化された『清塩』を溶かしたポーションでも洗浄されていった。その後、全研究員が全身をすっぽり覆う防護服を着させられ、研究所も隅から隅まで殺菌除菌滅菌、浄化魔法に塩ポーションでの洗浄。その上俺の『聖結界』まで発動しての超厳戒態勢だ。病原菌一つ、ウイルス一つ研究所に入れさせない状態にしてから、オルさんの指示で純粋なベナ草を『空間庫』から取り出すと、オルさんは素早くそれをサンドボックスの中に隔離した。
「ここまでやりますか」
「当然だよ。世界に一つしかないんだからね」
オルさんを始め、研究員たちはキラキラした目で純粋なベナ草から目を逸らさなかった。
そしてタカシの件を片付けてから、俺は再度研究所にやって来たのだ。
「どうです?」
入口で殺菌除菌滅菌されて、浄化魔法に塩ポーションによる洗浄を済ませて防護服を着た俺は、俺の『聖結界』から普通の『結界』に変わった、それでも厳戒態勢を敷いたままの魔法科学研究所内で、新しいベナ草をモニターで観察しているオルさんに尋ねた。
「動きはないね」
でしょうね。一日二日では、何か起こるとは思えない。
「ハルアキくんの『清塩』を振り掛けたベナ草なら、もうとっくに株分けがなされているんだけどねえ。この純粋種は生育が遅いのかも知れない」
「そうなんですね」
「ああ。だが株分けがされないうちに、『清塩』を振り掛けたり、塩ポーションを振り掛けたりは出来ないからねえ、数日は経過観察になるかな」
何事も結果が出るには時間が掛かると言う事だろう。
「それで、俺が頼んでいた件なんですけど」
「分かっているよ。そっちも忘れていないよ」
とオルさんは一息吐くと、デスクの引き出しから指輪と丸くて平たいアルミ缶を取り出した。
「これですか」
俺は渡された指輪を手に持って検める。指輪は金属製で、宝石などが嵌め込まれる台座部分に、中央に穴の空いた丸い蓋が付いている。蓋を開けると中身はピンクのクリームだ。丸いアルミ缶の中身も同じピンクのクリームで、指輪のクリームが減れば追加出来るようになっている。
「しかし、夢幻香をそんな事に使用するなんてねえ」
そう。このピンクのクリームは夢幻香をクリーム状にしたものだ。純粋種のベナ草とともに夢幻香の素材である『夢先草』と『惑いの高木』をこの研究所に持ち込み、夢幻香を作って貰ったのだが、一つのモニターを見ると、その二つが既にサンドボックスの一角で育てられていた。
「まあ、自白剤らしいですからねえ。あれ、これって所持しているだけで逮捕ものかな?」
「どうかな。今後の世界情勢によるかもねえ。スキルは良くても、こう言った品物は今後禁止されるかも知れないねえ」
使い方次第なところはあるけど、こう言うところから規制されていく気はするなあ。今は防護服を着ているので、指輪の嵌め心地とか、夢幻香のクリームに火を点す事も出来ない為、俺は手の中で指輪を転がすしかなかった。とそこに、
「バヨネッタさんからDMがきました。研究所の入口で止められて、おかんむりのようです」
「すぐに所員を向かわせるよ」
俺とオルさんは二人して嘆息するのだった。
映し出しているのはベナ草だ。それが様々な環境、森の中や草原、山地、寒冷地、熱帯などで育てられていた。現在、魔法科学研究所ではベナ草の生育実験が行われており、サンドボックスによって内部空間は分けられ、様々な環境が再現されている。人の近付かない環境でしか育たないベナ草が、サンドボックスによって再現された自然環境下ですくすくと育っていた。
育てられているベナ草は二種類に分けられ、その後、それらは様々な環境下、条件下で育てられている。
二種類のベナ草とは、まず一種類目は異世界で採取された普通のベナ草だ。バァによって疫病に冒されている為、生長能力、繁殖能力ともに低くなっている。自然環境下では代を重ねる程にその量、また、その薬効ともに減少するのがこの実験で判明しており、ではどのような環境下であれば生育が可能なのか、現在様々な環境実験を行っている。
もう一種類が、俺が生成した『清塩』の効果で、バァの疫病が取り払われたベナ草だ。こちらは人が寄り付かない自然環境であれば、順調に育つ事が確認されており、ではどれだけの『清塩』が生育に適量であるのか、『清塩』を溶かしたポーションではどうか、ハイポーションではどうか、環境での違いなど、生育具合や繁殖量などの実験が行われている。
そして、この二種類とは別に、新たに別のベナ草が先日この研究所にもたらされた。まあ、持ってきたのは俺なんだけど。
尸解仙法のガチャによって手に入れたベナ草。たまたまガチャで手に入ったものだったが、バァによって汚染されていない世界で唯一の生の純粋なベナ草であり、この生育には慎重に慎重を重ねる必要があった為に、俺は安易に『空間庫』から取り出す事をせず、日本に戻ってきてからオルさんに、このベナ草をどうしたものか。と相談した。
研究所にあるオルさんの研究室でこの話をしたら、オルさんが固まった。思考停止である。その後、
「うおおおおおおおおおッ!!」
と雄叫びを上げたと思ったら、各所に連絡を入れ、魔法科学研究所は厳戒態勢へと移行したのだ。
まず研究所は立ち入り禁止となり、研究員は一ヶ所に集められ、頭から爪先まで殺菌除菌滅菌の上、浄化魔法を何度も掛けられ、更に俺の『清浄星』で強化された『清塩』を溶かしたポーションでも洗浄されていった。その後、全研究員が全身をすっぽり覆う防護服を着させられ、研究所も隅から隅まで殺菌除菌滅菌、浄化魔法に塩ポーションでの洗浄。その上俺の『聖結界』まで発動しての超厳戒態勢だ。病原菌一つ、ウイルス一つ研究所に入れさせない状態にしてから、オルさんの指示で純粋なベナ草を『空間庫』から取り出すと、オルさんは素早くそれをサンドボックスの中に隔離した。
「ここまでやりますか」
「当然だよ。世界に一つしかないんだからね」
オルさんを始め、研究員たちはキラキラした目で純粋なベナ草から目を逸らさなかった。
そしてタカシの件を片付けてから、俺は再度研究所にやって来たのだ。
「どうです?」
入口で殺菌除菌滅菌されて、浄化魔法に塩ポーションによる洗浄を済ませて防護服を着た俺は、俺の『聖結界』から普通の『結界』に変わった、それでも厳戒態勢を敷いたままの魔法科学研究所内で、新しいベナ草をモニターで観察しているオルさんに尋ねた。
「動きはないね」
でしょうね。一日二日では、何か起こるとは思えない。
「ハルアキくんの『清塩』を振り掛けたベナ草なら、もうとっくに株分けがなされているんだけどねえ。この純粋種は生育が遅いのかも知れない」
「そうなんですね」
「ああ。だが株分けがされないうちに、『清塩』を振り掛けたり、塩ポーションを振り掛けたりは出来ないからねえ、数日は経過観察になるかな」
何事も結果が出るには時間が掛かると言う事だろう。
「それで、俺が頼んでいた件なんですけど」
「分かっているよ。そっちも忘れていないよ」
とオルさんは一息吐くと、デスクの引き出しから指輪と丸くて平たいアルミ缶を取り出した。
「これですか」
俺は渡された指輪を手に持って検める。指輪は金属製で、宝石などが嵌め込まれる台座部分に、中央に穴の空いた丸い蓋が付いている。蓋を開けると中身はピンクのクリームだ。丸いアルミ缶の中身も同じピンクのクリームで、指輪のクリームが減れば追加出来るようになっている。
「しかし、夢幻香をそんな事に使用するなんてねえ」
そう。このピンクのクリームは夢幻香をクリーム状にしたものだ。純粋種のベナ草とともに夢幻香の素材である『夢先草』と『惑いの高木』をこの研究所に持ち込み、夢幻香を作って貰ったのだが、一つのモニターを見ると、その二つが既にサンドボックスの一角で育てられていた。
「まあ、自白剤らしいですからねえ。あれ、これって所持しているだけで逮捕ものかな?」
「どうかな。今後の世界情勢によるかもねえ。スキルは良くても、こう言った品物は今後禁止されるかも知れないねえ」
使い方次第なところはあるけど、こう言うところから規制されていく気はするなあ。今は防護服を着ているので、指輪の嵌め心地とか、夢幻香のクリームに火を点す事も出来ない為、俺は手の中で指輪を転がすしかなかった。とそこに、
「バヨネッタさんからDMがきました。研究所の入口で止められて、おかんむりのようです」
「すぐに所員を向かわせるよ」
俺とオルさんは二人して嘆息するのだった。
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