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円運動(前編)

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「ガッパだ」


 改めて『有頂天』などの使い心地を確かめる為に、俺たちはパジャンさんの『絶結界』の中へとやって来ていた。それとともにゼラン仙者に紹介されたのが、このガッパさんだ。


 筋肉質の身体を、青いカンフー服に無理矢理押し込んだガッパさんは、黒に近い青髪なれど、その頭頂部は見事なつるっパゲと言う、いわゆる脳天禿げである。ガッパと言うよりカッパだな。


 それで何故このガッパさんを紹介されたかと言うと、彼が五閘拳の達人であるかららしい。


「普段は第七門の守護者をしている」


 との事。トホウ山は麓から山頂まで十二の門が行く手を塞ぎ、その守護者を倒さなければ先に進めないシステムになっている。まあ、俺とバヨネッタさんは『聖結界』を使って無理矢理押し通ったし、ムーシェンにも侵入されたけど。そしてガッパさんはその第七門の守護者だそうだ。


「ハルアキ、今、自分よりも弱いやつに習うのか。とか思わなかったか?」


「思っていませんよ。失敬な」


 半眼になるゴウマオさんに対して、こちらも半眼で返す。


「ガッパさんは全ての五閘拳を使える稀有な存在だ。教えるのも上手いから、すぐに使えるようになるだろう」


 成程。


「よろしくお願いします」


「ああ、よろしく」


 俺はガッパさんと握手を交わした。


「まずは五閘拳の説明から入るか」


 と何も知らない俺を気遣って、腕組みしたガッパさんが五閘拳の説明から始めてくれた。


「五閘拳とは、スキルや魔導具に頼らずに火や水などの様々な事象を起こし、攻撃として相手に叩き込む武術だ」


 へえ。


「火や水? 重力だけじゃないんですか?」


「そうだ。五閘拳には火、水、風、地、光、闇など、様々な型が存在する」


「五つじゃないんですね」


「五閘拳の五は身体の坩堝の数だ」


 ああ、そっちか。そう言えば閘は閘門……水門を意味する閘だったな。


「なので五閘拳を扱うには、坩堝の開放が出来ている事が第一条件となる。これがなされていなければ、いくら型を真似ようと、事象は起こらないのだ」


 俺はガッパさんに、理解した。と首肯する。


「それぞれの型で扱う事象、これによって必要な予備動作が変わる」


「予備動作、ですか?」


 俺のオウム返しに首肯するガッパさん。


「例えば、火拳の場合、坩堝をギュッと収縮させるように動かし、同時に身体を縮め、それを解放するようにバッと開くような動作をしなければ、火が発動しない」


 はあ? 口で言われてもちょっと分からないな。俺は首を傾げる。


「では、実演してみよう。『全合一』で俺の体内の動きを良く見ておくように」


 との事なので、俺は全身の感覚を研ぎ澄ませる。すると前に立つガッパさんの魔力の流れが良く分かった。『有頂天』のお陰かも知れないが、前より明確に見えている気がする。


「では」


 俺が『全合一』を使ったのを感じ取ったガッパさんが、身体を大きく使って緩やかな円運動を始める。リットーさんが俺に『全合一』を仕込む時にやらせた、太極拳のような動きだ。それを一通りやり終えると、


「ハッ!!」


 耳をつんざく大声とともに、ガッパさんが全身を縮こめる。するとガッパさんの体内外の魔力が、丹田にある第一坩堝に一気に集められ、坩堝内で撹拌するように回転が起こる。ここまでならいつもの坩堝の使い方だ。だが俺は目を見開いた。何と坩堝自体が握り潰されるように収縮されされたからだ。


「ハアッ!!」


 そして坩堝に集められた魔力が、右拳の突きの動きに連動して、収縮した坩堝を解放するように、一気に体内を通って右拳から放出された。


 ボウッ!!


 煌々と眩しい炎熱が、ガッパさんの右拳から放出された。魔力が炎に変換されたのだ。


「おお~~!」


 思わず歓声を上げてしまった。これに気を良くしたのか、ガッパさんは次々と火拳を繰り出す。そうして見ていて分かったのは、収縮は、坩堝をきっちり収縮させれば良いのであって、身体の動きは最小限でも良いらしいと言う事だ。


 それはそうだよな。いちいち炎を出すのに身体を縮こめていたら、隙が大き過ぎて使えない。目の前のガッパさんも、なんなら手をギュッと握る動作で炎を出している。


 だがやはり身体の動きも連動しているのだろう。大きく身体全体を使って収縮させた方が、放出される炎の規模が大きい。


「どうだ?」


「型がどのようなものか、理解出来ました」


 俺の答えに満足したのか、ガッパさんは鷹揚に首肯する。


「同じ事を俺がすれば、重拳が扱えるんですか?」


「いや、これはあくまで火拳の動きだ。ハルアキがこれから覚えるのはまた別だ。違う予備動作が必要になる」


 そうか。型によって予備動作が違ってくるんだっけ。


「重拳の予備動作って難しいんですかね?」


「いや、動作自体は簡単だ。まあ、今のを見ていて理解したなら分かるだろうが、威力を出すのは大変になる」


 まあ、それはそうか。俺は首肯した。


「では、重拳の説明に入ろう」


 言ってガッパさんはまたも太極拳のような動きを始める。あれって毎回する必要があるのか?


 と思っていたら違った。太極拳の動きが段々と速度を上げていき、それにともなって第一坩堝も回転を始めた。ぐるぐると地面に対して水平に回転する丹田の第一坩堝。


 坩堝の回転が速度を増していく程に、俺は自分の身体が重くなっていっているのを感じていた。ガッパさんを中心に、ズンと上から重い物で圧を掛けられているような、または身体全部が重くなったような、まさに重力を感じる。


「ハッ!!」


 そして高速の太極拳のように身体を振り回していたガッパさんが、その右掌を地面に向かって突き付けると、


 バギョッ!!


 と言う何かを無理矢理押し潰すような音とともに、地面が直径十メートル程凹み、亀裂が四方八方にと放射状に広がった。


 おお、凄い。


「分かったか?」


 汗を拭いながら俺へ問い掛けるガッパさん。


「はい。重拳の予備動作は、円運動ですね?」


「そうだ。円運動は大きく速く、回数が多い方が良い」


 大きく速く、そして回数か。中々使い所の難しそうな型だ。これなら火拳の方が使い勝手が良さそうに思える。


「重拳の動きは五閘拳の基本の型にも取り入れられているからな。覚える事自体は難しくないが、その分威力を上げるのが難しい型なんだ」


 とゴウマオさんが説明してくれた。ああ、型の前の太極拳みたいな動きは、五閘拳の基本の型だったのか。ならリットーさんも重拳使えるのか? とリットーさんを見遣ると、驚いた顔をして滅茶こっちをガン見していた。あっれー? もしかして使えないの?

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