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とりあえず俺は『聖結界』を展開して、自分の身を守る。今回俺はほとんど魔力がないので、戦力外だ。現在ヤスさんとラズゥさんがグッドマンに向かって火炎弾を撃ちまくっているが、その尽くがグッドマンの火炎弾で相殺されている。
そしてこれによって空中に足止めされているグッドマンの後ろから、跳躍したゴウマオさんが拳を振るう。が、それは空中を跳んだグッドマンによって軽々躱されてしまった。
「くっ、まるで奴だけ地上にいるかのようだ」
攻撃が失敗に終わったゴウマオさんが、前庭に着地しながら上空のグッドマンを睨む。
「ah-ha それで攻撃しているつもりでスカ? 攻撃トハ、こうやるのデス!」
言ってグッドマンが杖を掲げると、その先端の魔石が輝き、炎の竜巻が現れる。アンゲルスタのドミニクも振るっていた火災旋風だ。それらが五つ、俺たちの眼前に現れた。
そしてそれが迫るより先に前に出るシンヤ。腰に差していたもう一つの刀、キュリエリーヴを抜き放ち、眼前の火災旋風を一閃の元に霧散させる。魔法の大敵である神鎮鉄で造られているキュリエリーヴだからこそ出来る芸当だ。
「hahaha! 流石は勇者ト褒めてあげまショウ! 多少は歯応えガなくテハ、拍子抜けデスからネエ」
グッドマンの顔が不敵に歪む。これだけの面子を前にしても、負けるとは露程も思っていないのだろう。さて、ここからどのように事態が展開するのやら。
「何を高みの見物を決め込んでいるんだ」
俺が『聖結界』の中で事態を静観していたら、ゼラン仙者に白い目で見られた。
「仕様がないじゃないですか。俺、『清塩』を出すのに魔力を使い過ぎて、何にも出来ないんですよ」
そんな、残念なものを見るような目を向けて嘆息されましても。
「言うて、ゼラン仙者もパジャンさんも戦闘に参加していないでしょ」
ゼラン仙者、パジャンさん、リットーさんは、未だ静観の構えを崩していない。
「私は戦闘向きじゃない。と以前から言っているだろう」
ゼラン仙者の戦闘向きじゃないは、他の人からしたら十分戦闘向きなんだよなあ。
「僕はもう少し事態が進展してからかなあ。ここで手出ししたら、あの子たちの成長に繋がらないし」
さいですか。リットーさんもパジャンさんと同様なのか、手に螺旋槍を握って、いつでも参戦出来るように準備だけはしている。でも飛竜のゼストルスを『空間庫』から出していないので、それ程危急と感じていないのかも知れない。
「あれで六魔将なんですよね?」
「そうだな。今もシンヤたちの攻撃を、事もなげにいなしているからな」
そうなのだ。グッドマンは強いのだ。見上げるとそれぞれ飛行雲に乗ったシンヤたち勇者パーティの攻撃を、時に躱し、時に相殺し、その隙に魔法で攻撃までしてくるのだ。それも手数が多い。火に風に水、三属性か? いや、
「もしかして四元素全て使えるのか?」
「ふむ。流石にハルアキも気付いたか。そうだ。『鑑定』によると奴のスキルは『四元素』と出ている」
「いや、それヤバいんじゃないですか!?」
思わず声がひっくり返ってしまった。四元素、地水風火は、こちらの世界でも共通で四元素と呼ばれている。そしてそれは単純に土、水、風、火を表している訳ではない。
地球においても四元素は、それこそ古代ギリシア時代から使われている。中二病な人間ならば一度は通った基礎知識である。が、それが現代科学において見直されている事はあまり知られていないかも知れない。
土は固体、水は液体、風は気体にそれぞれ対応している。これまでの時代、これら上記の三つの相は判明していたが、火に対応する相が見付からず、四元素理論は破綻した理論だと言われてきた。が、近年になって火に相当する相が見付かったのだ。見付かったと言う表現が妥当かどうかは分からないが。その相がプラズマだ。気体を更に高温に熱するとこのプラズマになる。この事から、このプラズマを四元素の火と呼ぶ者もいる。
まあ、何を言いたいのかと言えば、四元素とはただ地水風火に対応しているだけでなく、この四つの相に対応していると言う事。つまりそれは、物理的化学的にどのような現象でも生み出せる事を示唆している。少なくとも俺の声がひっくり返るくらいにはヤバい事態だ。
「hahaha! 私をたった四人デ止められるとデモ?」
「止めるんじゃない。倒すんだよ」
とすれ違いざまにシンヤが霊王剣を横に薙ぐが、グッドマンはタタンと二段ジャンプでそれを躱してしまう。正に空中に足場があるかのような動きだ。
「あの動き……」
口元に手を当てながら独り言を漏らすゼラン仙者。
「何か心当たりがあるんですか?」
俺の質問に、目をグッドマンに向けたまま、ゼラン仙者は質問で返してきた。
「ハルアキは奴の侵入をどう感じた?」
どう感じた? 俺は突然の侵入に驚いたくらいだが、ゼラン仙者は違う感想を持ったと言う事か。いや待て。突然の侵入? 襲撃でなく? ここは聖域だぞ。周囲には結界が張り巡らされており、指定されたルートを通らなければ、侵入なんて不可能のはずだ。俺の場合は『聖結界』のお陰で結界素通り出来たけど。
「確かに。『侵入』となると話が違ってきますね。スキルでしょうか? それとも魔導具?」
「奴が持っているスキルは、私の『鑑定』では『四元素』のみだ。高度な隠蔽機能のある魔導具を持っている可能性はあるが、隠蔽や侵入が可能な魔導具を持っているなら、そのまま身を隠していれば良かったはずだ」
確かに。
「それに、奴の態度には元々姿を隠す気がなかったように見受けられた」
ああ、そうかも。ラズゥさんの簡易転移扉を攻撃した時も、なんか普通に結界を通り抜けてその場にいたような?
「つまり奴にとって、この聖域の結界は結界の機能を果たしていなかったのだ。それこそハルアキの『聖結界』がそうであるようにな」
「へ? あいつは魔族ですよ? それなのに『聖結界』を使ったとでも?」
「自称魔族だがな。つまり外部から魔石を移植したんだろう?」
「ん? はい」
良く分からず返事をする俺に、ゼラン仙者が嘆息し、説明してくれた。
「魔石にも種類がある。四元素のようなポピュラーなものから、雷や氷のような少しレアなもの。光や闇のような更にレアなもの。そして魔石の中には、聖属性の魔石もあるのだ」
え?
「聖属性の魔石、ですか?」
俺の返しにゼラン仙者は首肯で返してくれた。そうか。聖属性の魔石もあるのか。え? あいつ自称魔族のくせに聖属性なの?
そしてこれによって空中に足止めされているグッドマンの後ろから、跳躍したゴウマオさんが拳を振るう。が、それは空中を跳んだグッドマンによって軽々躱されてしまった。
「くっ、まるで奴だけ地上にいるかのようだ」
攻撃が失敗に終わったゴウマオさんが、前庭に着地しながら上空のグッドマンを睨む。
「ah-ha それで攻撃しているつもりでスカ? 攻撃トハ、こうやるのデス!」
言ってグッドマンが杖を掲げると、その先端の魔石が輝き、炎の竜巻が現れる。アンゲルスタのドミニクも振るっていた火災旋風だ。それらが五つ、俺たちの眼前に現れた。
そしてそれが迫るより先に前に出るシンヤ。腰に差していたもう一つの刀、キュリエリーヴを抜き放ち、眼前の火災旋風を一閃の元に霧散させる。魔法の大敵である神鎮鉄で造られているキュリエリーヴだからこそ出来る芸当だ。
「hahaha! 流石は勇者ト褒めてあげまショウ! 多少は歯応えガなくテハ、拍子抜けデスからネエ」
グッドマンの顔が不敵に歪む。これだけの面子を前にしても、負けるとは露程も思っていないのだろう。さて、ここからどのように事態が展開するのやら。
「何を高みの見物を決め込んでいるんだ」
俺が『聖結界』の中で事態を静観していたら、ゼラン仙者に白い目で見られた。
「仕様がないじゃないですか。俺、『清塩』を出すのに魔力を使い過ぎて、何にも出来ないんですよ」
そんな、残念なものを見るような目を向けて嘆息されましても。
「言うて、ゼラン仙者もパジャンさんも戦闘に参加していないでしょ」
ゼラン仙者、パジャンさん、リットーさんは、未だ静観の構えを崩していない。
「私は戦闘向きじゃない。と以前から言っているだろう」
ゼラン仙者の戦闘向きじゃないは、他の人からしたら十分戦闘向きなんだよなあ。
「僕はもう少し事態が進展してからかなあ。ここで手出ししたら、あの子たちの成長に繋がらないし」
さいですか。リットーさんもパジャンさんと同様なのか、手に螺旋槍を握って、いつでも参戦出来るように準備だけはしている。でも飛竜のゼストルスを『空間庫』から出していないので、それ程危急と感じていないのかも知れない。
「あれで六魔将なんですよね?」
「そうだな。今もシンヤたちの攻撃を、事もなげにいなしているからな」
そうなのだ。グッドマンは強いのだ。見上げるとそれぞれ飛行雲に乗ったシンヤたち勇者パーティの攻撃を、時に躱し、時に相殺し、その隙に魔法で攻撃までしてくるのだ。それも手数が多い。火に風に水、三属性か? いや、
「もしかして四元素全て使えるのか?」
「ふむ。流石にハルアキも気付いたか。そうだ。『鑑定』によると奴のスキルは『四元素』と出ている」
「いや、それヤバいんじゃないですか!?」
思わず声がひっくり返ってしまった。四元素、地水風火は、こちらの世界でも共通で四元素と呼ばれている。そしてそれは単純に土、水、風、火を表している訳ではない。
地球においても四元素は、それこそ古代ギリシア時代から使われている。中二病な人間ならば一度は通った基礎知識である。が、それが現代科学において見直されている事はあまり知られていないかも知れない。
土は固体、水は液体、風は気体にそれぞれ対応している。これまでの時代、これら上記の三つの相は判明していたが、火に対応する相が見付からず、四元素理論は破綻した理論だと言われてきた。が、近年になって火に相当する相が見付かったのだ。見付かったと言う表現が妥当かどうかは分からないが。その相がプラズマだ。気体を更に高温に熱するとこのプラズマになる。この事から、このプラズマを四元素の火と呼ぶ者もいる。
まあ、何を言いたいのかと言えば、四元素とはただ地水風火に対応しているだけでなく、この四つの相に対応していると言う事。つまりそれは、物理的化学的にどのような現象でも生み出せる事を示唆している。少なくとも俺の声がひっくり返るくらいにはヤバい事態だ。
「hahaha! 私をたった四人デ止められるとデモ?」
「止めるんじゃない。倒すんだよ」
とすれ違いざまにシンヤが霊王剣を横に薙ぐが、グッドマンはタタンと二段ジャンプでそれを躱してしまう。正に空中に足場があるかのような動きだ。
「あの動き……」
口元に手を当てながら独り言を漏らすゼラン仙者。
「何か心当たりがあるんですか?」
俺の質問に、目をグッドマンに向けたまま、ゼラン仙者は質問で返してきた。
「ハルアキは奴の侵入をどう感じた?」
どう感じた? 俺は突然の侵入に驚いたくらいだが、ゼラン仙者は違う感想を持ったと言う事か。いや待て。突然の侵入? 襲撃でなく? ここは聖域だぞ。周囲には結界が張り巡らされており、指定されたルートを通らなければ、侵入なんて不可能のはずだ。俺の場合は『聖結界』のお陰で結界素通り出来たけど。
「確かに。『侵入』となると話が違ってきますね。スキルでしょうか? それとも魔導具?」
「奴が持っているスキルは、私の『鑑定』では『四元素』のみだ。高度な隠蔽機能のある魔導具を持っている可能性はあるが、隠蔽や侵入が可能な魔導具を持っているなら、そのまま身を隠していれば良かったはずだ」
確かに。
「それに、奴の態度には元々姿を隠す気がなかったように見受けられた」
ああ、そうかも。ラズゥさんの簡易転移扉を攻撃した時も、なんか普通に結界を通り抜けてその場にいたような?
「つまり奴にとって、この聖域の結界は結界の機能を果たしていなかったのだ。それこそハルアキの『聖結界』がそうであるようにな」
「へ? あいつは魔族ですよ? それなのに『聖結界』を使ったとでも?」
「自称魔族だがな。つまり外部から魔石を移植したんだろう?」
「ん? はい」
良く分からず返事をする俺に、ゼラン仙者が嘆息し、説明してくれた。
「魔石にも種類がある。四元素のようなポピュラーなものから、雷や氷のような少しレアなもの。光や闇のような更にレアなもの。そして魔石の中には、聖属性の魔石もあるのだ」
え?
「聖属性の魔石、ですか?」
俺の返しにゼラン仙者は首肯で返してくれた。そうか。聖属性の魔石もあるのか。え? あいつ自称魔族のくせに聖属性なの?
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