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植物?
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翌日。バヨネッタさんの病室に集まった俺たちは、各々鎮痛な面持ちで沈黙していた。
「バァ……、かあ」
アネカネが一言口にして、嘆息をこぼす。それに連れるように皆が嘆息した。
「タケダ、何故前世でバァを消滅させておかなかったの?」
とバヨネッタさんが半眼で武田さんを睨む。
「悪かったよ。自分では良くやったと思っていたんだ。まさか最後にそんな疫病をばら撒いていたとは気付かなかったんだ」
普段であれば反論するだろう武田さんも、今回ばかりは相当堪えているらしく、ただただ反省の姿勢だ。
「武田さんを責めても仕様がないですよ。バァのスキルからしたら、倒していようといまいと、疫病は残って向こうの世界を汚染していたでしょうから」
俺の一言でまたも部屋に沈黙が流れた。
「でも、まさかベナ草を狙ってくるとはねえ。僕らの生命線な訳だし、今まで狙われてこなかったのが不思議なくらいかも」
パジャンさんはあっけらかんとしていた。根が明るいからだろう。
「それで、疑っている訳ではないけど、実際にベナ草は疫病に汚染されているんだよね?」
パジャンさんが尋ねると、オルさんが眉間にシワを寄せて首肯を返す。
「ああ。ベナ草の研究は向こうとこっち、両方の世界の命題だからね、色々と調べていたんだ。そしてその細胞の中でウイルスに良く似たものが、ベナ草の寿命を縮めている事にも気付いていたんだけど、まさか本当にウイルスだったとはねえ」
「何で誰もその事に疑問を抱かなかったのよ?」
オルさんの言を聞いて、バヨネッタさんが呆れ声で尋ねた。
「人間にもテロメアと言う、寿命を司るものが存在するんです。これは回数券のようなもので、人間の細胞は分裂する毎にこの回数券を使用していき、これが尽きれば細胞が死ぬ。そんな感じです。我々はベナ草のウイルスもこのような存在だと思っていたんです。なにせベナ草自体には、このテロメアのようなものが存在しませんでしたから」
そうなのか。植物にもテロメアは存在する。樹木なんかは短くならないらしいけど。それ自体がないとなると、ベナ草が植物なのかどうかも怪しくなってきたな。いや、今はそれはいいか。
「それでなんで、そのウイルスがバァ由来の疫病ウイルスだって分かったの?」
パジャンさんの質問に頷き返して、オルさんが口を開く。
「それはハルアキくんの提供してくれた、乾燥ベナ草のお陰です。このベナ草の細胞には、バァのウイルスが存在しなかったのです」
「どう言う事?」
首を傾げるバヨネッタさん。
「バヨネッタ様、ハルアキくんが向こうの世界へ行き来出来るようになって最初の数ヶ月間を、ベルム島(ヌーサンス島)で誰にも会わずに過ごしていた事を憶えておいででしょうか?」
オルさんの言に首肯で返すバヨネッタさん。
「その頃にハルアキくんはベナ草を大量に手に入れ、乾燥させて保存しておいたのです」
はい。していました。
「つまり向こうの世界の誰も触っていないベナ草です。これを調べた結果、ウイルスが発見されなかったのです」
「成程」
腕組みして頷くバヨネッタさん。皆も感心している。いやあ、たまたまです。たまたま。
「あの侘しい日々にも、価値があったんだな」
タカシよ。つまらん事を言うなら出ていってくれないかなあ。
「あの周辺の生態系からして、渡り鳥も訪れる島です。鳥をキャリアに感染が広がったとは考え難い。やはりこのウイルスのキャリアは人だと考えるのが妥当でしょう。実際、僕の皮膚表面からも採取されましたし、研究所職員からも採取されました。これは向こうの世界出身や、向こうの世界に行った事のあるなし関係なく、です」
「それで、そのウイルスが人に感染する。と言う事はないのか?」
とゼラン仙者が尋ねると、オルさんは難しい顔になった。
「僕も専門ではないので何とも言えません。ウイルスの中には無毒だったものがいきなり有毒になったり、それまで感染しなかった、または発症しなかったはずの動物や人間にも症状が出るように変化するものも少なくありませんから。今のところはこのウイルスによって何かしら病気を発症すると言う事はありませんね」
今のところは、か。今後そうなる可能性はあるんだよなあ。
「今世のバァが、既に何かしら病原体をばら撒いている可能性はありますか?」
俺の質問に、オルさんの顔は考え込むような難しいものに変化した。
「どうかなあ。まだ今世の魔王が現れて二年と経っていないからねえ。こちらの世界で二年ならば、病原体もあっという間に世界中に広まるかも知れないけれど、交通網の発達していない向こうの世界では、世界的パンデミックになるにも、時間が掛かるからねえ」
そうか。ベナ草を枯らすウイルスが世界中に広まるのに、五十年掛かったくらいだものなあ。そんな一、二年でどうにかなるものじゃないか。
「それで、ハルアキくんの『清塩』は、そのウイルスに対して有効だったのですか?」
サルサルさんの質問に、オルさんは口角を上げて頷き返した。
「それはもう! 驚く程と言って良い程です! そもそもベナ草と『清塩』とのシナジーが高いので、ベナ草の葉を千切ってプランターにぶっ挿して、その上から『清塩』を振り掛けるだけで、立派なベナ草が生えてくるくらいです!」
何それ?
「バァ……、かあ」
アネカネが一言口にして、嘆息をこぼす。それに連れるように皆が嘆息した。
「タケダ、何故前世でバァを消滅させておかなかったの?」
とバヨネッタさんが半眼で武田さんを睨む。
「悪かったよ。自分では良くやったと思っていたんだ。まさか最後にそんな疫病をばら撒いていたとは気付かなかったんだ」
普段であれば反論するだろう武田さんも、今回ばかりは相当堪えているらしく、ただただ反省の姿勢だ。
「武田さんを責めても仕様がないですよ。バァのスキルからしたら、倒していようといまいと、疫病は残って向こうの世界を汚染していたでしょうから」
俺の一言でまたも部屋に沈黙が流れた。
「でも、まさかベナ草を狙ってくるとはねえ。僕らの生命線な訳だし、今まで狙われてこなかったのが不思議なくらいかも」
パジャンさんはあっけらかんとしていた。根が明るいからだろう。
「それで、疑っている訳ではないけど、実際にベナ草は疫病に汚染されているんだよね?」
パジャンさんが尋ねると、オルさんが眉間にシワを寄せて首肯を返す。
「ああ。ベナ草の研究は向こうとこっち、両方の世界の命題だからね、色々と調べていたんだ。そしてその細胞の中でウイルスに良く似たものが、ベナ草の寿命を縮めている事にも気付いていたんだけど、まさか本当にウイルスだったとはねえ」
「何で誰もその事に疑問を抱かなかったのよ?」
オルさんの言を聞いて、バヨネッタさんが呆れ声で尋ねた。
「人間にもテロメアと言う、寿命を司るものが存在するんです。これは回数券のようなもので、人間の細胞は分裂する毎にこの回数券を使用していき、これが尽きれば細胞が死ぬ。そんな感じです。我々はベナ草のウイルスもこのような存在だと思っていたんです。なにせベナ草自体には、このテロメアのようなものが存在しませんでしたから」
そうなのか。植物にもテロメアは存在する。樹木なんかは短くならないらしいけど。それ自体がないとなると、ベナ草が植物なのかどうかも怪しくなってきたな。いや、今はそれはいいか。
「それでなんで、そのウイルスがバァ由来の疫病ウイルスだって分かったの?」
パジャンさんの質問に頷き返して、オルさんが口を開く。
「それはハルアキくんの提供してくれた、乾燥ベナ草のお陰です。このベナ草の細胞には、バァのウイルスが存在しなかったのです」
「どう言う事?」
首を傾げるバヨネッタさん。
「バヨネッタ様、ハルアキくんが向こうの世界へ行き来出来るようになって最初の数ヶ月間を、ベルム島(ヌーサンス島)で誰にも会わずに過ごしていた事を憶えておいででしょうか?」
オルさんの言に首肯で返すバヨネッタさん。
「その頃にハルアキくんはベナ草を大量に手に入れ、乾燥させて保存しておいたのです」
はい。していました。
「つまり向こうの世界の誰も触っていないベナ草です。これを調べた結果、ウイルスが発見されなかったのです」
「成程」
腕組みして頷くバヨネッタさん。皆も感心している。いやあ、たまたまです。たまたま。
「あの侘しい日々にも、価値があったんだな」
タカシよ。つまらん事を言うなら出ていってくれないかなあ。
「あの周辺の生態系からして、渡り鳥も訪れる島です。鳥をキャリアに感染が広がったとは考え難い。やはりこのウイルスのキャリアは人だと考えるのが妥当でしょう。実際、僕の皮膚表面からも採取されましたし、研究所職員からも採取されました。これは向こうの世界出身や、向こうの世界に行った事のあるなし関係なく、です」
「それで、そのウイルスが人に感染する。と言う事はないのか?」
とゼラン仙者が尋ねると、オルさんは難しい顔になった。
「僕も専門ではないので何とも言えません。ウイルスの中には無毒だったものがいきなり有毒になったり、それまで感染しなかった、または発症しなかったはずの動物や人間にも症状が出るように変化するものも少なくありませんから。今のところはこのウイルスによって何かしら病気を発症すると言う事はありませんね」
今のところは、か。今後そうなる可能性はあるんだよなあ。
「今世のバァが、既に何かしら病原体をばら撒いている可能性はありますか?」
俺の質問に、オルさんの顔は考え込むような難しいものに変化した。
「どうかなあ。まだ今世の魔王が現れて二年と経っていないからねえ。こちらの世界で二年ならば、病原体もあっという間に世界中に広まるかも知れないけれど、交通網の発達していない向こうの世界では、世界的パンデミックになるにも、時間が掛かるからねえ」
そうか。ベナ草を枯らすウイルスが世界中に広まるのに、五十年掛かったくらいだものなあ。そんな一、二年でどうにかなるものじゃないか。
「それで、ハルアキくんの『清塩』は、そのウイルスに対して有効だったのですか?」
サルサルさんの質問に、オルさんは口角を上げて頷き返した。
「それはもう! 驚く程と言って良い程です! そもそもベナ草と『清塩』とのシナジーが高いので、ベナ草の葉を千切ってプランターにぶっ挿して、その上から『清塩』を振り掛けるだけで、立派なベナ草が生えてくるくらいです!」
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