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傲慢(前編)
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「さて、話を聞こうか、トモノリ」
俺たちはどっしり腰を落ち着けて、トモノリがこれから行おうと考えている計画に耳を傾ける。
「とりあえず現行の地球には一旦滅んで貰う」
「いや、お前が滅べよ」
思わず本音が出てしまった。でもタカシもシンヤもうんうん頷いているから良いよね?
「まあ、落ち着けよ」
「初っ端のアクセルが強過ぎて、俺たち既に置いてきぼりなのだが?」
「ええ? そうかなあ?」
頭を掻きながら明後日を向くトモノリ。仕草があざと過ぎて殴りたい。
「導入に結論を持ってくるのは、論文なんかだと普通だけど?」
「浅野さん、話を引っ掻き回さないでくれるかな? トモノリも頷くな。俺たちが馬鹿みたいじゃないか」
「や~い、馬鹿三人組~」
本気で殴ってやろうかと思った瞬間、トモノリの後ろからあのメイドさんが現れた。その殺気に手が止まる。
「気にするなよ。ただのじゃれ合いだから」
トモノリはそれを振り返る事なく制する。
「そうでしたか。それは申し訳ありません。それと魔王様、お客様から頂いた、お稲荷さん? とやらをお出ししてもよろしいでしょうか?」
「おお! 良いね! 待ってたよ!」
喜ぶトモノリの前に、お稲荷さんが二個置かれる。俺たち三人の前にも同様にだ。
「…………ちょっと、少なくない? もう少しなかったっけ?」
トモノリがお稲荷さん二個を前にしてぐずった。確かに、俺が渡した数からしたら、もっと場に供されてもおかしくない。
「これは魔王様が頂いたお土産ですから、他の魔王様の分はきちんと分けさせて頂きました」
そう言われてはトモノリとしても言い返せないようだ。ただ恨めしそうにメイドさんを見上げている。
「いや、お稲荷さんの話は良いんだよ。何だよ? 結論として地球には滅んで貰うって?」
思わずタカシがツッコミを入れる。気持ちは分かるぞタカシ。メイドさんに睨まれて「ひいっ」と悲鳴を上げなければもっと格好良かった。
「クラウンベル、もう下がって良いぞ」
名を呼ばれたメイドさんは、「かしこまりました」と一礼してまたこの空間から消えてしまった。
「へえ、今のがクラウンベルか」
「流石に知っていたか」
「ああ。魔王軍六魔将の一人だろう?」
「え? 魔王軍ってそんなベタなのいるの?」
タカシのツッコミよ。まあ、言いたい事は分かる。
「どちらか言うと、仏教の四天王とか十二神将に近いけどな」
「魔王軍では昔からある役職だよね」
とトモノリの言をシンヤが補足する。まあ、トモノリと身体を共有しているらしい他の魔王の中に、ノブナガがいるくらいだしな。そうなんだ。と言われれば、そうですか。としか返せない。何故、六魔将の一人がメイドさんをしているのかはスルーの方で。
「で、話を戻して、とりあえずって事は、地球滅ぼすのが結論じゃないんだろう?」
俺は手ずからお稲荷さんを頬張りながら、トモノリに尋ねる。
「まあな。そこが始まりだな」
とトモノリもお稲荷さんを一つ口にしながら返してきた。それにしても大事そうにチビチビ食べている。お稲荷さんはそうやって食べるものじゃないと思う。
「始まり、ねえ」
言って俺は最後となる二個目のお稲荷さんを頬張りながら、魔大陸から見られる穏やかな海に目を向けた。
「なあ、さっきも言ったけど、三人だってこの世界に不満はあるだろう?」
「つまり、トモノリは一旦地球を滅ぼして、誰もが不満を抱かない地球に作り変えようって気なのか?」
「ああ」
本気かよ!? 俺は思わず海からぐるんとトモノリの方を振り返ってしまった。それはトモノリとしても余程面白かったのか、俺を見てにんまり笑いやがった。
「なんだよ?」
「いや、それだけハルアキを慌てさせられたなら、この話をして成功だったな」
なんだそりゃ!?
「ああ、分かる。ハルアキってなんか悟り開いてる? ってくらい動じない時あるよな」
とタカシがこれに便乗する。
「確かに。ハルアキって、平穏が一番。みたいなところあるよね」
更に便乗するシンヤ。
「そのくせやる事が一番無鉄砲で無茶苦茶だったりするから恐いわよねえ」
〆る浅野。それに三人がうんうん頷いている。俺は友達たちの中でどんなイメージを持たれているんだ?
「こうやって四苦八苦しているのを見るのが愉悦」
声を合わせて言うな。まるで分からん。
「まあ、良いや。話を続けてくれ。どうせ、碌でもない話だろうけど」
「ひでえな。確かに碌でもない話だけどな」
とトモノリは自重しながら俺たちを見渡し、話し始めた。
「何て事ない話さ。アンゲルスタに魂のプールがあっただろう?」
俺とシンヤが頷く。
「あれの改良版を作るんだ。そこに地球人全員の魂をぶち込んで、全てを平らに均す」
トモノリのやりたい事が見えてきた。こいつは、地球人類がこれまで築き上げてきた過去の歴史を全てをなかった事にして、これからよーいドンでスタートさせようってつもりなのだ。
「それはそれは、貧困にあえいでいる人々から神と崇められる図と、既得権益を持っている奴ら全員が悪鬼羅刹の如く怒り狂う図が容易に想像しうるな」
俺の言にシンヤが首肯する。タカシは良く分かっていないようだし、浅野はだんまりだ。これを見てトモノリは首を左右に振るった。
「普通な想像だな」
まあ、普通の人間だからな。
「当然個人の努力は加算される」
「加算される、とは?」
シンヤの問いに、トモノリが一つ頷いて話を続けた。
俺たちはどっしり腰を落ち着けて、トモノリがこれから行おうと考えている計画に耳を傾ける。
「とりあえず現行の地球には一旦滅んで貰う」
「いや、お前が滅べよ」
思わず本音が出てしまった。でもタカシもシンヤもうんうん頷いているから良いよね?
「まあ、落ち着けよ」
「初っ端のアクセルが強過ぎて、俺たち既に置いてきぼりなのだが?」
「ええ? そうかなあ?」
頭を掻きながら明後日を向くトモノリ。仕草があざと過ぎて殴りたい。
「導入に結論を持ってくるのは、論文なんかだと普通だけど?」
「浅野さん、話を引っ掻き回さないでくれるかな? トモノリも頷くな。俺たちが馬鹿みたいじゃないか」
「や~い、馬鹿三人組~」
本気で殴ってやろうかと思った瞬間、トモノリの後ろからあのメイドさんが現れた。その殺気に手が止まる。
「気にするなよ。ただのじゃれ合いだから」
トモノリはそれを振り返る事なく制する。
「そうでしたか。それは申し訳ありません。それと魔王様、お客様から頂いた、お稲荷さん? とやらをお出ししてもよろしいでしょうか?」
「おお! 良いね! 待ってたよ!」
喜ぶトモノリの前に、お稲荷さんが二個置かれる。俺たち三人の前にも同様にだ。
「…………ちょっと、少なくない? もう少しなかったっけ?」
トモノリがお稲荷さん二個を前にしてぐずった。確かに、俺が渡した数からしたら、もっと場に供されてもおかしくない。
「これは魔王様が頂いたお土産ですから、他の魔王様の分はきちんと分けさせて頂きました」
そう言われてはトモノリとしても言い返せないようだ。ただ恨めしそうにメイドさんを見上げている。
「いや、お稲荷さんの話は良いんだよ。何だよ? 結論として地球には滅んで貰うって?」
思わずタカシがツッコミを入れる。気持ちは分かるぞタカシ。メイドさんに睨まれて「ひいっ」と悲鳴を上げなければもっと格好良かった。
「クラウンベル、もう下がって良いぞ」
名を呼ばれたメイドさんは、「かしこまりました」と一礼してまたこの空間から消えてしまった。
「へえ、今のがクラウンベルか」
「流石に知っていたか」
「ああ。魔王軍六魔将の一人だろう?」
「え? 魔王軍ってそんなベタなのいるの?」
タカシのツッコミよ。まあ、言いたい事は分かる。
「どちらか言うと、仏教の四天王とか十二神将に近いけどな」
「魔王軍では昔からある役職だよね」
とトモノリの言をシンヤが補足する。まあ、トモノリと身体を共有しているらしい他の魔王の中に、ノブナガがいるくらいだしな。そうなんだ。と言われれば、そうですか。としか返せない。何故、六魔将の一人がメイドさんをしているのかはスルーの方で。
「で、話を戻して、とりあえずって事は、地球滅ぼすのが結論じゃないんだろう?」
俺は手ずからお稲荷さんを頬張りながら、トモノリに尋ねる。
「まあな。そこが始まりだな」
とトモノリもお稲荷さんを一つ口にしながら返してきた。それにしても大事そうにチビチビ食べている。お稲荷さんはそうやって食べるものじゃないと思う。
「始まり、ねえ」
言って俺は最後となる二個目のお稲荷さんを頬張りながら、魔大陸から見られる穏やかな海に目を向けた。
「なあ、さっきも言ったけど、三人だってこの世界に不満はあるだろう?」
「つまり、トモノリは一旦地球を滅ぼして、誰もが不満を抱かない地球に作り変えようって気なのか?」
「ああ」
本気かよ!? 俺は思わず海からぐるんとトモノリの方を振り返ってしまった。それはトモノリとしても余程面白かったのか、俺を見てにんまり笑いやがった。
「なんだよ?」
「いや、それだけハルアキを慌てさせられたなら、この話をして成功だったな」
なんだそりゃ!?
「ああ、分かる。ハルアキってなんか悟り開いてる? ってくらい動じない時あるよな」
とタカシがこれに便乗する。
「確かに。ハルアキって、平穏が一番。みたいなところあるよね」
更に便乗するシンヤ。
「そのくせやる事が一番無鉄砲で無茶苦茶だったりするから恐いわよねえ」
〆る浅野。それに三人がうんうん頷いている。俺は友達たちの中でどんなイメージを持たれているんだ?
「こうやって四苦八苦しているのを見るのが愉悦」
声を合わせて言うな。まるで分からん。
「まあ、良いや。話を続けてくれ。どうせ、碌でもない話だろうけど」
「ひでえな。確かに碌でもない話だけどな」
とトモノリは自重しながら俺たちを見渡し、話し始めた。
「何て事ない話さ。アンゲルスタに魂のプールがあっただろう?」
俺とシンヤが頷く。
「あれの改良版を作るんだ。そこに地球人全員の魂をぶち込んで、全てを平らに均す」
トモノリのやりたい事が見えてきた。こいつは、地球人類がこれまで築き上げてきた過去の歴史を全てをなかった事にして、これからよーいドンでスタートさせようってつもりなのだ。
「それはそれは、貧困にあえいでいる人々から神と崇められる図と、既得権益を持っている奴ら全員が悪鬼羅刹の如く怒り狂う図が容易に想像しうるな」
俺の言にシンヤが首肯する。タカシは良く分かっていないようだし、浅野はだんまりだ。これを見てトモノリは首を左右に振るった。
「普通な想像だな」
まあ、普通の人間だからな。
「当然個人の努力は加算される」
「加算される、とは?」
シンヤの問いに、トモノリが一つ頷いて話を続けた。
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