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異世界の恋愛事情?
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「結構時間が掛かったわね」
まだ心臓が煩く鼓動を打つ俺に、バヨネッタさんが近付きながら話し掛けてきた。
「戦闘終わりの人間に、最初に掛ける言葉がそれですか?」
いつも通りのバヨネッタさんに、どこかで気が抜けて、息が抜けて、心臓が落ち着きを取り戻していく。と思ったら、バヨネッタさんが俺の顔面にその顔をぐっと近付けてきた。またぞろ心臓が煩く鐘を突く。
「あら? 私の為に戦ったハルアキ、格好良かったわよ」
間近から目を見てそんな事を言われた俺は、顔から火が出る程紅潮しているのが自分でも分かった。
「なーんて、言って欲しかったんでしょう? 私の事が大好きなハルアキくん?」
言ってニヤリと口角を上げるバヨネッタさん。
ぬわあああああ!! そうだよねえ。こう言う人だよねえ、バヨネッタさんは。
「性格悪過ぎません?」
「あら? 分体だったらこれくらいのワガママ許してくれると思うけど?」
今そのワードはズルい。俺はマジマジと俺の目を見詰めてくるバヨネッタさんから、プイッと顔を横に背けた。
「あら? それはどう言う態度なのかしら?」
視線を反らして少しでも落ち着こうとしたのに、バヨネッタさんが回り込んで俺の視界に入ってくる。だから更に身体ごと横を向く俺。それでも追ってくるバヨネッタさん。
「ああ、もう! ウイルス退治は終わったんだから、もうここに用はないでしょう? 戻りますよ!」
「仕方ないわね。今は魔王討伐で忙しいし、結婚式は魔王討伐の後かしら?」
「何を突飛な事を言っているんですか!?」
「冗談よ」
くーーーっ、完全に弄ばれている。いや、今までもバヨネッタさんには頭が上がらなかったけど、今回の一件で、完全に関係値が確定してしまった気がする。これ、逆転出来ないんじゃないか?
「もう! 行きますよ!」
どんな反応を示してもバヨネッタさんにからかわれると判断した俺は、さっさとサンドボックスから退出したのだった。
魔法科学研究所に戻ってくると、オルさんをはじめ、研究員全員が温かい視線をこちらに向けてきた。
「何ですか? 何なんですか? あれでしょう? データを取るんでしょう? さっさとしましょう!」
そんな研究員たちに、半ば逆ギレのような反応を示して、俺はさっさと定位置に据えられた椅子に腰掛ける。データを取る為に、心電図みたいな装置を貼り付けていくのだが、それをやる研究員もニヤニヤ笑っていて腹が立った。
「ハルアキくん」
「何ですかオルさん?」
「正確なデータを取りたいから、心穏やかにして貰えるかな?」
「出来るか!」
笑いに包まれる研究所。別にひと笑い取る為にキレたんじゃないよ。サンドボックスから出てきたバヨネッタさんまで笑っているし、何なんだよ、もう!
「ハルアキ! お姉ちゃんと婚約したって本当!?」
翌日、教室に着くなり、アネカネとミウラ嬢が駆け寄ってきてそんな事を口走るものだから、周囲からの奇異の視線が痛かった。
「それ、誰からの情報?」
「お姉ちゃんがDMで教えてくれたわ!」
この姉妹、DMでやり取りとかしているのか。
「それ、絶対からかわれているよ」
「ええ!? そんな訳ないわよ! ほら!」
とアネカネがスマホの画面を見せてくれたが、バヨネッタさんが俺と婚約したとのDMが確かに残っている。が、その後のアネカネのレスが凄い。何だこの返信の数。画面いっぱいでも収まらず、下に向かって何度もスワイプしてもしてもアネカネのレスばかり。途中でバヨネッタさんが返信しているが、その話題は既にアネカネのレスが通り過ぎた話題だ。温度差と言うか、スマホの熟練度の差が凄い。
「どうよ?」
何故誇っている? 何を誇っているんだ? そしてオルドランド語のキーボードなんて存在したのか。それともオルさん辺りが開発でもしたのかな? そっちが凄い気になるんだけど?
「どうよ? と言われてもなあ、…………あ、ほら、ここ」
「ここ?」
とDMのやり取りの途中の部分をアネカネに見せる。そこには、「冗談」と単語だけが記載されていた。きっとこのレスの多さに付き合い切れなくなったんだろうなあ。
「あわわわわ。ごめんなさい」
どうやらレスに夢中になり過ぎて、気付いていなかったらしい。どんだけ舞い上がっていたんだよ。
「じゃあ、私にもまだハルアキと結婚出来る可能性が残されているのね!」
とアネカネがこんな事を口走るものだから、更に教室が騒然となったのはしょうがない話だ。
「ほら、ホームルーム始めるぞ。席に着け」
そこで先生が教室に来たものだから、皆がモヤモヤを抱えたままホームルームの時間が過ぎていった。
「結婚ってどう言う事!?」
ホームルーム後の休み時間。早速クラスの女子たちが俺に尋ねてきた。
「二人ってそう言う関係だったの!?」
「いつから!? もしかして初日!?」
「お姉さんの話題も出ていたけど、もしかしてアネカネさんのお姉さんとも!?」
一般的な十代女子が恋愛の話題に飢えているのは理解しているつもりだったが、思った以上の盛り上がりっぷりで、それがアネカネのDMを思い起こさせて、思わず嘆息してしまった。
「ないないない。俺とアネカネはそう言う関係じゃないから」
「ええ、ハルアキひどい」
などと横の席のアネカネが、泣き真似をするがソレは無視だ。
「向こうの世界には、恋愛して結婚って言うのがあまりないんだよ。だから向こうの世界の人的には、男女の仲は即結婚になるんだ。だから俺たちの間に男女の関係はない。つまり付き合っていない」
と俺が向こうの世界の事情を説明するが、
「あら、そんな事もないわよ。普通に結婚前に仲を深めて結婚する男女だっているわ」
とアネカネから反論を言われてしまった。
「そうなの!?」
これに驚いた俺は、反対の席のミウラ嬢を見遣るが、彼女は首を横に振るうばかり。
「ミウラに聞いても分からないわよ。その子は貴族のお嬢様だもの。結婚は恋愛関係なく、お家の事情が優先される事がほとんどよ」
アネカネの説明にミウラ嬢が首肯する。成程。なまじ俺は異世界の庶民平民と付き合いがなかったから、そこら辺の感覚が貴族寄りになっていたのか。
「そんな訳だから、どう? 私は優良物件よ?」
アピールしてくるアネカネに、女子たちが黄色い声を上げる。どう? と言われてもな。
「恋愛対象として見れないのだが」
「それ、女の子に言っちゃいけないやつだから!!」
と女子から総ツッコミを入れられるのだった。
まだ心臓が煩く鼓動を打つ俺に、バヨネッタさんが近付きながら話し掛けてきた。
「戦闘終わりの人間に、最初に掛ける言葉がそれですか?」
いつも通りのバヨネッタさんに、どこかで気が抜けて、息が抜けて、心臓が落ち着きを取り戻していく。と思ったら、バヨネッタさんが俺の顔面にその顔をぐっと近付けてきた。またぞろ心臓が煩く鐘を突く。
「あら? 私の為に戦ったハルアキ、格好良かったわよ」
間近から目を見てそんな事を言われた俺は、顔から火が出る程紅潮しているのが自分でも分かった。
「なーんて、言って欲しかったんでしょう? 私の事が大好きなハルアキくん?」
言ってニヤリと口角を上げるバヨネッタさん。
ぬわあああああ!! そうだよねえ。こう言う人だよねえ、バヨネッタさんは。
「性格悪過ぎません?」
「あら? 分体だったらこれくらいのワガママ許してくれると思うけど?」
今そのワードはズルい。俺はマジマジと俺の目を見詰めてくるバヨネッタさんから、プイッと顔を横に背けた。
「あら? それはどう言う態度なのかしら?」
視線を反らして少しでも落ち着こうとしたのに、バヨネッタさんが回り込んで俺の視界に入ってくる。だから更に身体ごと横を向く俺。それでも追ってくるバヨネッタさん。
「ああ、もう! ウイルス退治は終わったんだから、もうここに用はないでしょう? 戻りますよ!」
「仕方ないわね。今は魔王討伐で忙しいし、結婚式は魔王討伐の後かしら?」
「何を突飛な事を言っているんですか!?」
「冗談よ」
くーーーっ、完全に弄ばれている。いや、今までもバヨネッタさんには頭が上がらなかったけど、今回の一件で、完全に関係値が確定してしまった気がする。これ、逆転出来ないんじゃないか?
「もう! 行きますよ!」
どんな反応を示してもバヨネッタさんにからかわれると判断した俺は、さっさとサンドボックスから退出したのだった。
魔法科学研究所に戻ってくると、オルさんをはじめ、研究員全員が温かい視線をこちらに向けてきた。
「何ですか? 何なんですか? あれでしょう? データを取るんでしょう? さっさとしましょう!」
そんな研究員たちに、半ば逆ギレのような反応を示して、俺はさっさと定位置に据えられた椅子に腰掛ける。データを取る為に、心電図みたいな装置を貼り付けていくのだが、それをやる研究員もニヤニヤ笑っていて腹が立った。
「ハルアキくん」
「何ですかオルさん?」
「正確なデータを取りたいから、心穏やかにして貰えるかな?」
「出来るか!」
笑いに包まれる研究所。別にひと笑い取る為にキレたんじゃないよ。サンドボックスから出てきたバヨネッタさんまで笑っているし、何なんだよ、もう!
「ハルアキ! お姉ちゃんと婚約したって本当!?」
翌日、教室に着くなり、アネカネとミウラ嬢が駆け寄ってきてそんな事を口走るものだから、周囲からの奇異の視線が痛かった。
「それ、誰からの情報?」
「お姉ちゃんがDMで教えてくれたわ!」
この姉妹、DMでやり取りとかしているのか。
「それ、絶対からかわれているよ」
「ええ!? そんな訳ないわよ! ほら!」
とアネカネがスマホの画面を見せてくれたが、バヨネッタさんが俺と婚約したとのDMが確かに残っている。が、その後のアネカネのレスが凄い。何だこの返信の数。画面いっぱいでも収まらず、下に向かって何度もスワイプしてもしてもアネカネのレスばかり。途中でバヨネッタさんが返信しているが、その話題は既にアネカネのレスが通り過ぎた話題だ。温度差と言うか、スマホの熟練度の差が凄い。
「どうよ?」
何故誇っている? 何を誇っているんだ? そしてオルドランド語のキーボードなんて存在したのか。それともオルさん辺りが開発でもしたのかな? そっちが凄い気になるんだけど?
「どうよ? と言われてもなあ、…………あ、ほら、ここ」
「ここ?」
とDMのやり取りの途中の部分をアネカネに見せる。そこには、「冗談」と単語だけが記載されていた。きっとこのレスの多さに付き合い切れなくなったんだろうなあ。
「あわわわわ。ごめんなさい」
どうやらレスに夢中になり過ぎて、気付いていなかったらしい。どんだけ舞い上がっていたんだよ。
「じゃあ、私にもまだハルアキと結婚出来る可能性が残されているのね!」
とアネカネがこんな事を口走るものだから、更に教室が騒然となったのはしょうがない話だ。
「ほら、ホームルーム始めるぞ。席に着け」
そこで先生が教室に来たものだから、皆がモヤモヤを抱えたままホームルームの時間が過ぎていった。
「結婚ってどう言う事!?」
ホームルーム後の休み時間。早速クラスの女子たちが俺に尋ねてきた。
「二人ってそう言う関係だったの!?」
「いつから!? もしかして初日!?」
「お姉さんの話題も出ていたけど、もしかしてアネカネさんのお姉さんとも!?」
一般的な十代女子が恋愛の話題に飢えているのは理解しているつもりだったが、思った以上の盛り上がりっぷりで、それがアネカネのDMを思い起こさせて、思わず嘆息してしまった。
「ないないない。俺とアネカネはそう言う関係じゃないから」
「ええ、ハルアキひどい」
などと横の席のアネカネが、泣き真似をするがソレは無視だ。
「向こうの世界には、恋愛して結婚って言うのがあまりないんだよ。だから向こうの世界の人的には、男女の仲は即結婚になるんだ。だから俺たちの間に男女の関係はない。つまり付き合っていない」
と俺が向こうの世界の事情を説明するが、
「あら、そんな事もないわよ。普通に結婚前に仲を深めて結婚する男女だっているわ」
とアネカネから反論を言われてしまった。
「そうなの!?」
これに驚いた俺は、反対の席のミウラ嬢を見遣るが、彼女は首を横に振るうばかり。
「ミウラに聞いても分からないわよ。その子は貴族のお嬢様だもの。結婚は恋愛関係なく、お家の事情が優先される事がほとんどよ」
アネカネの説明にミウラ嬢が首肯する。成程。なまじ俺は異世界の庶民平民と付き合いがなかったから、そこら辺の感覚が貴族寄りになっていたのか。
「そんな訳だから、どう? 私は優良物件よ?」
アピールしてくるアネカネに、女子たちが黄色い声を上げる。どう? と言われてもな。
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