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対分体(中編)
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「ここから反撃開始だ!」
俺は両手の斧をもう一度握り締め、『時間操作』タイプBで加速、分体へと迫る。
バゴンッ!!
分体へと右手の斧で攻撃しようとした瞬間、何か大きなものに挟まれた。
「!?」
何事か!? とクラクラしながらも直ぐ様その場からバッグステップで後退すると、それは巨大な手だった。分体の両手ではなく、大人の身体と同じくらい大きな両手が、中空に浮遊している。
「はっ! 何が反撃開始だ。俺が今まで本気で相手をしていたと思っていたのか?」
分体がそう我鳴ると、次々と分体の周囲に巨大な手が出現していく。総勢十本の手が出現したかと思えば、それぞれが剣や槍、斧や槌、鎌、鉄球など、巨大な武器を装備し始めた。
「マジかよ……」
思わず声が漏れ、自分が飲み込んだ唾の音にハッとする。
「さあ! ここからが本番だ!」
十本の手が俺へと迫る。速い! 剣を持った二本の手が、上段から袈裟懸けに俺を両断しようと迫る。それを後方にトンボ返りで躱すと、すかさずそこに巨大鉄球が飛んできて、俺はふっ飛ばされた。
「ぐふっ!?」
サンドボックスの床面を何度も跳ね飛ばされ、そのあまりの衝撃に息が詰まる。それでも止まない攻撃の連鎖。
刺股のような武器が俺の身体を床面に拘束したかと思ったら、上空からギロチンのような斧が降ってくる。
「舐めるな!」
俺は刺股を持つ手の指の付け根に向けて黒刃を伸ばし、その痛みで刺股が弛んだところで拘束から脱出。ギロチンのような斧の攻撃を躱す。
ブオンッ!
そこに槌が横薙ぎに振るわれる。盾を出してそれを防御するが、そのまま中空に吹き飛ばされ、宙を飛んでいるところを槍の投擲で攻撃される。
翼を出してなんとか回避するも、大鎌が後方から俺の命を刈り取ろうと振るわれた。
俺は更に『時間操作』タイプBで加速して床面に着地してその難を逃れると、「ふぅ」とやっと短く一息吐いて周囲を確認する。
俺の周囲は既に手に囲まれ、逃げ場は見当たらず、その向こうでは俺の分体が、『聖結界』で守られたバヨネッタさんの動向を窺っているのが分かった。あんな事ほざいておいて、まだバヨネッタさんの命を狙っているのか。抜け目のない奴だ。
しかしそんな両方に気を配っていて、お前に俺が倒せるのかな?
ジリジリと距離を詰める十本の手。俺の後方を取った剣を持つ手が、その巨大な剣を横薙ぎに振ってきた。
距離を取るように避ければ前方の大鎌が俺を襲い、宙に飛んで逃げれば鉄球や槍が飛んでくる。左右に避けても他の武器が襲ってくる。ならば! と俺はベタンとその場にうつ伏せになってこれを躱し、攻撃してきた巨大剣を持つ手に下から全力の蹴りを食らわせる。
吹き飛ばされる巨大な手。こっちだってパワーアップしているんだ。いちいち相手が巨体だからと怯んでいられない。
俺は直ぐ様身体を起こすと、前方の大鎌を持った手へと接近し、手刀を突き入れた。貫かれた手と大鎌が消滅し、こいつらが今の俺でも対処可能な事が理解出来れば、後の行動は早い。
俺は更に更に『時間操作』タイプBで加速して、両手に黒刃を生やして残る九本の手へと向かっていく。鉄球を躱し、槍を躱し、刺股を斬り捨て、剣をいなし、巨大な手をバラバラに斬り刻んでゆく。
最後の槌を持つ手を、その槌ごとバラバラに斬り刻んで一息吐いた俺が振り返ると、そこには真っ白い世界、とは真逆の、黒い手に覆われた光景に包まれていた。
「お前はもっと周りに気を配った方が良かったんじゃないか?」
分体の、人を嘲る声が響く。成程ね。俺が巨手の相手にこまねいていた間に、こいつはどんどんと巨手を生産していっていたって訳ね。
「さあ、お終いだ」
分体の腕が前に突き出され、その命令に従うかのように、数多の巨手が俺に向かって一斉に襲い掛かってくる。
「はあ? 舐めるなよ! 分体風情が!!」
吠える俺に呼応するように、全身に五つある坩堝から魔力が迸るのを感じる。そしてその魔力を俺は全て電撃に変換した。
間近で雷が落ちたかのような稲光に轟音。紫電が蜘蛛の巣のように網目状に広がり、俺を覆う巨手全てに電撃を食らわせた。この電撃に巨手全てを消滅させる程の威力はない。しかし、この手が人間と同じような理屈で動いているのは、先程の戦闘で手が刺股を弛めた事で理解していた。ならば電撃で痺れさせて動かなくさせる事は可能だ。
思惑通り電撃で痺れた数多の巨手は、ただ中空に留まるだけで俺に攻撃してこない。それを俺は身体から無数の黒刃を伸ばして斬り刻む。
「策士策に溺れたか?」
巨手が消滅していく中、俺は口角を上げてあえて挑発的に分体を煽る。
「こいつ……!」
兜の向こうであっても、奴が怒りに紅潮しているのが分かった。元々二倍のウイルスを体内に含んでいるんだ。冷静なのがおかしい。
「俺を舐めるなと言っているんだ!」
更に巨手を出現させようとする分体。やはり正常な判断が出来なくなっているようだな。攻撃がワンパターンになっているぞ。
俺は電撃を身にまとい、奴が巨手を動かすより速く奴に接近し、その首を黒刃で刈り取ろうとした。
が、それは叶わず、分体に近付いた俺は、床面に張られた黒い蜘蛛の巣にその動きを封じられていたのだ。
「!? これは!?」
「…………ふう。危ねえ。先に罠を張っておいて正確だったな。無闇に敵に突っ込んでくるなんて、馬鹿じゃねえのお前?」
くっ、あの大量の巨手を出現させていた時に、既に罠を張っていたのか。
俺は両手の斧をもう一度握り締め、『時間操作』タイプBで加速、分体へと迫る。
バゴンッ!!
分体へと右手の斧で攻撃しようとした瞬間、何か大きなものに挟まれた。
「!?」
何事か!? とクラクラしながらも直ぐ様その場からバッグステップで後退すると、それは巨大な手だった。分体の両手ではなく、大人の身体と同じくらい大きな両手が、中空に浮遊している。
「はっ! 何が反撃開始だ。俺が今まで本気で相手をしていたと思っていたのか?」
分体がそう我鳴ると、次々と分体の周囲に巨大な手が出現していく。総勢十本の手が出現したかと思えば、それぞれが剣や槍、斧や槌、鎌、鉄球など、巨大な武器を装備し始めた。
「マジかよ……」
思わず声が漏れ、自分が飲み込んだ唾の音にハッとする。
「さあ! ここからが本番だ!」
十本の手が俺へと迫る。速い! 剣を持った二本の手が、上段から袈裟懸けに俺を両断しようと迫る。それを後方にトンボ返りで躱すと、すかさずそこに巨大鉄球が飛んできて、俺はふっ飛ばされた。
「ぐふっ!?」
サンドボックスの床面を何度も跳ね飛ばされ、そのあまりの衝撃に息が詰まる。それでも止まない攻撃の連鎖。
刺股のような武器が俺の身体を床面に拘束したかと思ったら、上空からギロチンのような斧が降ってくる。
「舐めるな!」
俺は刺股を持つ手の指の付け根に向けて黒刃を伸ばし、その痛みで刺股が弛んだところで拘束から脱出。ギロチンのような斧の攻撃を躱す。
ブオンッ!
そこに槌が横薙ぎに振るわれる。盾を出してそれを防御するが、そのまま中空に吹き飛ばされ、宙を飛んでいるところを槍の投擲で攻撃される。
翼を出してなんとか回避するも、大鎌が後方から俺の命を刈り取ろうと振るわれた。
俺は更に『時間操作』タイプBで加速して床面に着地してその難を逃れると、「ふぅ」とやっと短く一息吐いて周囲を確認する。
俺の周囲は既に手に囲まれ、逃げ場は見当たらず、その向こうでは俺の分体が、『聖結界』で守られたバヨネッタさんの動向を窺っているのが分かった。あんな事ほざいておいて、まだバヨネッタさんの命を狙っているのか。抜け目のない奴だ。
しかしそんな両方に気を配っていて、お前に俺が倒せるのかな?
ジリジリと距離を詰める十本の手。俺の後方を取った剣を持つ手が、その巨大な剣を横薙ぎに振ってきた。
距離を取るように避ければ前方の大鎌が俺を襲い、宙に飛んで逃げれば鉄球や槍が飛んでくる。左右に避けても他の武器が襲ってくる。ならば! と俺はベタンとその場にうつ伏せになってこれを躱し、攻撃してきた巨大剣を持つ手に下から全力の蹴りを食らわせる。
吹き飛ばされる巨大な手。こっちだってパワーアップしているんだ。いちいち相手が巨体だからと怯んでいられない。
俺は直ぐ様身体を起こすと、前方の大鎌を持った手へと接近し、手刀を突き入れた。貫かれた手と大鎌が消滅し、こいつらが今の俺でも対処可能な事が理解出来れば、後の行動は早い。
俺は更に更に『時間操作』タイプBで加速して、両手に黒刃を生やして残る九本の手へと向かっていく。鉄球を躱し、槍を躱し、刺股を斬り捨て、剣をいなし、巨大な手をバラバラに斬り刻んでゆく。
最後の槌を持つ手を、その槌ごとバラバラに斬り刻んで一息吐いた俺が振り返ると、そこには真っ白い世界、とは真逆の、黒い手に覆われた光景に包まれていた。
「お前はもっと周りに気を配った方が良かったんじゃないか?」
分体の、人を嘲る声が響く。成程ね。俺が巨手の相手にこまねいていた間に、こいつはどんどんと巨手を生産していっていたって訳ね。
「さあ、お終いだ」
分体の腕が前に突き出され、その命令に従うかのように、数多の巨手が俺に向かって一斉に襲い掛かってくる。
「はあ? 舐めるなよ! 分体風情が!!」
吠える俺に呼応するように、全身に五つある坩堝から魔力が迸るのを感じる。そしてその魔力を俺は全て電撃に変換した。
間近で雷が落ちたかのような稲光に轟音。紫電が蜘蛛の巣のように網目状に広がり、俺を覆う巨手全てに電撃を食らわせた。この電撃に巨手全てを消滅させる程の威力はない。しかし、この手が人間と同じような理屈で動いているのは、先程の戦闘で手が刺股を弛めた事で理解していた。ならば電撃で痺れさせて動かなくさせる事は可能だ。
思惑通り電撃で痺れた数多の巨手は、ただ中空に留まるだけで俺に攻撃してこない。それを俺は身体から無数の黒刃を伸ばして斬り刻む。
「策士策に溺れたか?」
巨手が消滅していく中、俺は口角を上げてあえて挑発的に分体を煽る。
「こいつ……!」
兜の向こうであっても、奴が怒りに紅潮しているのが分かった。元々二倍のウイルスを体内に含んでいるんだ。冷静なのがおかしい。
「俺を舐めるなと言っているんだ!」
更に巨手を出現させようとする分体。やはり正常な判断が出来なくなっているようだな。攻撃がワンパターンになっているぞ。
俺は電撃を身にまとい、奴が巨手を動かすより速く奴に接近し、その首を黒刃で刈り取ろうとした。
が、それは叶わず、分体に近付いた俺は、床面に張られた黒い蜘蛛の巣にその動きを封じられていたのだ。
「!? これは!?」
「…………ふう。危ねえ。先に罠を張っておいて正確だったな。無闇に敵に突っ込んでくるなんて、馬鹿じゃねえのお前?」
くっ、あの大量の巨手を出現させていた時に、既に罠を張っていたのか。
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