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ケーキ切り分け問題
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「うん! 美味しいです!」
ミウラ嬢は、横に座る百香に鍋から取り上げて貰ったカニを、更に食べ易く殻を外して貰ってから口に運んだ。
「それは良かったです」
ウチでの引っ越し祝いパーティも、何だか凄い量のご馳走がリビングのテーブルに並んでいる。カニ鍋に高級牛肉のステーキ、ホットプレートでは焼肉が焼かれ、みんなで作った一口サイズのオードブルにサラダの盛り合わせ、百香が腕を振るったホットパイやほうれん草と卵のカレー炒めなど、テーブルに並べきれない程だ。
「なんでしょう、雰囲気もあるのでしょうか? より一層美味しい気がします」
そう言うものだろうか? ただ今日の料理は本当に美味しい。俺的には雰囲気より、素材の良さが決め手な気がするが。高級食材が多いからなあ。あのスーパー侮れん。
「分かる。こうやって床に座って食べるなんて普通ないから、何だか悪い事しているみたいでテンション上がるよね」
とはアネカネ。それに同意してうんうん頷くミウラ嬢。成程、リビングだから皆には床(絨毯あり)に座って貰ったが、確かに貴族のご令嬢の食べ方ではないな。
「それに、料理をしたのも久しぶりですし、士官学校での野営を思い出します」
ミウラ嬢、悪気はないんだろうけど、野営と同じにされるのは複雑だ。まあ、皆でワチャワチャしながら料理を作る楽しさはあったけど。
「ご馳走様でした」
なんだかんだでテーブルに並べられた料理は食べきった。育ち盛りの胃袋恐るべし。流石にアネカネが買ったお菓子にまでは手が伸びなかったが、もうお腹がパンパンで、一ミリも入りそうにない。
「この度はありがとうございました」
皆が人心地ついたところで、ミウラ嬢が俺に礼を述べる。一瞬、「何事?」と思ったが、ジャガラガの事かと思い直した。
「まあ、ティカを倒したのは俺ですから」
「ですが、これは本来オルドランドとジャガラガの間で解決すべき問題でした。日本は、地球はそれに巻き込まれただけです」
「どうでしょうね? グジーノの事を考えれば、アンゲルスタは自らこの問題を利用して、首を突っ込んできたと言って良いんじゃないですか?」
と小太郎くんは自らの意見を口にする。そうなんだよなあ。あいつら、絶妙に嫌なタイミングでこの問題に介入してきたんだよなあ。ある意味センスあったな。
「例えそうだとしても、ハルアキ様のご尽力なくば、我々オルドランドとジャガラガの戦争は避けられないものでした。重ね重ねありがとうございました」
言って今度は頭を下げるミウラ嬢。慣れないシチュエーションにこそばゆさもあるが、何だか心が暖かくなる。思えば今回の事で正面から礼を言われたのは初めてだ。なにせこの事が地球でバレれば、俺は一躍有名人になるとともに、自由な行動がかなり制限されるだろう事は明白だからなあ。
流石にそれは嫌だし、日本政府的にも、未成年を戦場に送り込んでいたとか、政治利用していたとかバレれば、現政権総辞職もあり得る。そうなると、次政権が俺に有利な政権になるとも限らない。今はこの政権が長く続いてくれた方が、俺にはありがたいのだ。
「ティカ殺害の賠償金に関しましては、こちらが支払いますので、おっしゃってください」
「ああ、それはオルドランド政府から聞いています。日本政府からも同様の申し入れがありました」
「じゃあ、日本とオルドランドで折半して、その賠償金をジャガラガに払う感じか?」
俺にそう尋ねてきたのはタカシだ。
「う~ん、それなんだけど……、もちろん両国にはそれ相応の金額を払って貰うけど、俺も払うつもり」
「なんで? 確かに殺したのはハルアキだけど、向こうが襲ってきたんだ。仕方なかっただろ? それを払えだなんて……」
「でもさタカシ、向こうの気持ちになってみろよ。君主の婚約者の賠償金は確かに払われたけれど、殺したやつは一銭も払っていないと分かったら、何かモヤッとするだろ?」
それは皆も思うところだったのだろう。俺の一言に場が静まり返ってしまった。
「まあ気にするなよ。ありがたい事に、俺には払えるだけの金があるからな」
「賠償金っていくらなんだ?」
突っ込んで聞いてくるねえタカシ。俺は指を三本立てて見せる。
「三億円!?」
驚くタカシに対して、俺は首を横に振るう。もっと上だ。
「え、じゃあ三十億円!?」
「惜しいな。三十億エランだ」
「三十億エランって、三百億円だろ!? ウソ、人ひとりの賠償金かよそれ!?」
「だからこそ、国が負担しようとしているのですよ。これは非公式な交渉です。向こうもそうそう払えはしないと吹っ掛けてきた金額です。それが直ぐ様支払われるような事があれば、ジャガラガはどう思うでしょう? その金額や迅速な対応に、オルドランドや日本は侮れないと考えるはずです。そうなれば、今後ジャガラガとの交渉がやりやすくなるのです」
タカシにミウラ嬢が説明してくれた。誠意を見せると言うのも事実だし、そう言う裏工作的な面があるのも事実だ。
「まあ、そこに一商会のトップが、自腹を切って賠償金を払ってきたとなれば、未だ地球との貿易交渉のなされていないジャガラガ市場は、クドウ商会の独壇場になり得る訳だ」
小太郎くん、嫌な言い回ししないで欲しいな。
「俺としては、今後のプラスの面を考えるより、マイナスにならないように立ち回るってだけだよ」
何故か皆が白目でこちらを見てくるのだが、何故だろうか?
「なんだか甘い物が食べたくなってきました」
とミウラ嬢の意見に、女子たちが首肯する。
「まだ食べるの!?」
「甘い物は別腹なのよ」
言って百香は冷蔵庫にケーキを取りに行く。凄えな女子の胃袋恐るべし。
「でさ、トモノリの事なんだけど……」
と今度はタカシが真剣な顔をしてこちらに話を振ってきた。
ミウラ嬢は、横に座る百香に鍋から取り上げて貰ったカニを、更に食べ易く殻を外して貰ってから口に運んだ。
「それは良かったです」
ウチでの引っ越し祝いパーティも、何だか凄い量のご馳走がリビングのテーブルに並んでいる。カニ鍋に高級牛肉のステーキ、ホットプレートでは焼肉が焼かれ、みんなで作った一口サイズのオードブルにサラダの盛り合わせ、百香が腕を振るったホットパイやほうれん草と卵のカレー炒めなど、テーブルに並べきれない程だ。
「なんでしょう、雰囲気もあるのでしょうか? より一層美味しい気がします」
そう言うものだろうか? ただ今日の料理は本当に美味しい。俺的には雰囲気より、素材の良さが決め手な気がするが。高級食材が多いからなあ。あのスーパー侮れん。
「分かる。こうやって床に座って食べるなんて普通ないから、何だか悪い事しているみたいでテンション上がるよね」
とはアネカネ。それに同意してうんうん頷くミウラ嬢。成程、リビングだから皆には床(絨毯あり)に座って貰ったが、確かに貴族のご令嬢の食べ方ではないな。
「それに、料理をしたのも久しぶりですし、士官学校での野営を思い出します」
ミウラ嬢、悪気はないんだろうけど、野営と同じにされるのは複雑だ。まあ、皆でワチャワチャしながら料理を作る楽しさはあったけど。
「ご馳走様でした」
なんだかんだでテーブルに並べられた料理は食べきった。育ち盛りの胃袋恐るべし。流石にアネカネが買ったお菓子にまでは手が伸びなかったが、もうお腹がパンパンで、一ミリも入りそうにない。
「この度はありがとうございました」
皆が人心地ついたところで、ミウラ嬢が俺に礼を述べる。一瞬、「何事?」と思ったが、ジャガラガの事かと思い直した。
「まあ、ティカを倒したのは俺ですから」
「ですが、これは本来オルドランドとジャガラガの間で解決すべき問題でした。日本は、地球はそれに巻き込まれただけです」
「どうでしょうね? グジーノの事を考えれば、アンゲルスタは自らこの問題を利用して、首を突っ込んできたと言って良いんじゃないですか?」
と小太郎くんは自らの意見を口にする。そうなんだよなあ。あいつら、絶妙に嫌なタイミングでこの問題に介入してきたんだよなあ。ある意味センスあったな。
「例えそうだとしても、ハルアキ様のご尽力なくば、我々オルドランドとジャガラガの戦争は避けられないものでした。重ね重ねありがとうございました」
言って今度は頭を下げるミウラ嬢。慣れないシチュエーションにこそばゆさもあるが、何だか心が暖かくなる。思えば今回の事で正面から礼を言われたのは初めてだ。なにせこの事が地球でバレれば、俺は一躍有名人になるとともに、自由な行動がかなり制限されるだろう事は明白だからなあ。
流石にそれは嫌だし、日本政府的にも、未成年を戦場に送り込んでいたとか、政治利用していたとかバレれば、現政権総辞職もあり得る。そうなると、次政権が俺に有利な政権になるとも限らない。今はこの政権が長く続いてくれた方が、俺にはありがたいのだ。
「ティカ殺害の賠償金に関しましては、こちらが支払いますので、おっしゃってください」
「ああ、それはオルドランド政府から聞いています。日本政府からも同様の申し入れがありました」
「じゃあ、日本とオルドランドで折半して、その賠償金をジャガラガに払う感じか?」
俺にそう尋ねてきたのはタカシだ。
「う~ん、それなんだけど……、もちろん両国にはそれ相応の金額を払って貰うけど、俺も払うつもり」
「なんで? 確かに殺したのはハルアキだけど、向こうが襲ってきたんだ。仕方なかっただろ? それを払えだなんて……」
「でもさタカシ、向こうの気持ちになってみろよ。君主の婚約者の賠償金は確かに払われたけれど、殺したやつは一銭も払っていないと分かったら、何かモヤッとするだろ?」
それは皆も思うところだったのだろう。俺の一言に場が静まり返ってしまった。
「まあ気にするなよ。ありがたい事に、俺には払えるだけの金があるからな」
「賠償金っていくらなんだ?」
突っ込んで聞いてくるねえタカシ。俺は指を三本立てて見せる。
「三億円!?」
驚くタカシに対して、俺は首を横に振るう。もっと上だ。
「え、じゃあ三十億円!?」
「惜しいな。三十億エランだ」
「三十億エランって、三百億円だろ!? ウソ、人ひとりの賠償金かよそれ!?」
「だからこそ、国が負担しようとしているのですよ。これは非公式な交渉です。向こうもそうそう払えはしないと吹っ掛けてきた金額です。それが直ぐ様支払われるような事があれば、ジャガラガはどう思うでしょう? その金額や迅速な対応に、オルドランドや日本は侮れないと考えるはずです。そうなれば、今後ジャガラガとの交渉がやりやすくなるのです」
タカシにミウラ嬢が説明してくれた。誠意を見せると言うのも事実だし、そう言う裏工作的な面があるのも事実だ。
「まあ、そこに一商会のトップが、自腹を切って賠償金を払ってきたとなれば、未だ地球との貿易交渉のなされていないジャガラガ市場は、クドウ商会の独壇場になり得る訳だ」
小太郎くん、嫌な言い回ししないで欲しいな。
「俺としては、今後のプラスの面を考えるより、マイナスにならないように立ち回るってだけだよ」
何故か皆が白目でこちらを見てくるのだが、何故だろうか?
「なんだか甘い物が食べたくなってきました」
とミウラ嬢の意見に、女子たちが首肯する。
「まだ食べるの!?」
「甘い物は別腹なのよ」
言って百香は冷蔵庫にケーキを取りに行く。凄えな女子の胃袋恐るべし。
「でさ、トモノリの事なんだけど……」
と今度はタカシが真剣な顔をしてこちらに話を振ってきた。
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