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魂と肉体
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「しかし、こんな事まで教えてくれて良かったんですか?」
敵ながらジェランの身の心配をしてしまった。
「どうせお前らはここまでだ。ドミニクに勝つ事は無理だろう。お前らが負ければ俺たちの世界が樹立し、負けたお前らは永久生の世界で永遠の責苦を受け続けるのだ」
それはそうなる……のか?
「今更ながらドミニクが俺たちを『蘇生』させるってところはピンと来ないんですよねえ。アンゲルスタであれば、何かしらドミニクとの繋がりがあるのは理解出来ますけど、俺たちは現在は敵で、関係性としては対岸って感じですしね。永久生の世界になっているならともかく、今現在の俺たちは、死んだらそこまでなのでは?」
からくりが分からん。
「そうね。そもそも、生物は物質的な肉体だけで存在しているのではなく、魂と言うものが存在しているわ。生物の魂は、肉体が死ぬと朽ち果てて地に還るように、その魂も昇華して天に還ると言われているの」
説明をし始めたのはバヨネッタさんだ。魂ねえ。人は死ぬと二十一グラム軽くなるそうだ。それが魂の重さだと何かで見た記憶がある。
「つまり天国に行くって話ですか?」
「違うわ」
違うんだ。
「肉体が地に還るようにと言ったでしょう? 天に昇って世界に溶けて、その一部となるのよ。しかも肉体が朽ちるより速い速度でね」
そう言う感じなのか。
「それだと、益々『蘇生』が難しそうですね」
俺の言に首肯するバヨネッタさん。魂は魂として、百年とか千年とかそのままなのかと思っていたけど、肉体より先に魂が消えるのか。
「早ければ一日もすれば魂なんて残っていないわ」
そんなに早いのか。バヨネッタさんやゼラン仙者が、死者蘇生は無理だと言っていた理由がこれか。
「じゃあ、それこそドミニクはどうやって死者を蘇らせているんでしょう?」
「可能性としては、人造魂を死体に入れて、生き返ったように見せ掛けている場合ね」
「そんな事してもすぐバレるんじゃないですか?」
「それが意外とバレないのよ。記憶や性質は確かに魂や外界の影響を受けて、肉体から発露するものだけれど、結果としてその影響を受けた肉体に固着するのよ」
魂がハードで肉体がソフトなのか。俺がイメージしたのはレコードだ。魂は録音の出来るレコードプレイヤーで、肉体はレコード盤。外界からの刺激は魂と言う針によって記憶や性質が肉体に刻まれ、レコードプレイヤーが駄目になっても、別の人造魂でも再生可能なのだ。
「つまり良く出来た人造魂であれば、周囲にバレずに生前の人間と変わらない生活を送る事も可能だと?」
首肯するバヨネッタさん。ゼラン仙者を見ても、どうやらその線でドミニクを疑っているように見える。
「どうやら面白い話をしているみたいだが、ハズレだ」
ジェランが呆れたような視線でこちらを見ていた。
「ハズレですって? あなたにそれが言い切れるの?」
バヨネッタさんは持論を否定されて、少し感情的に反論したが、対するジェランはいやらしく口角を上げる。
「人造魂なんて面白そうな研究に、ボクが一枚噛まずに外から眺めているだけだと思うかい?」
成程、説得力が違う。この男に秘密にしてドミニクが人造魂を使っているとも考えられるが、だったらそもそも『搾取』なんてスキルを授けて、こんなところで非人道的な研究をさせている理由も謎になってくるな。
「じゃああなたは、ドミニクがどうやって死者を蘇らせているのか、しっかり説明出来るんですね?」
俺の問いにジェランは鷹揚に首肯した。それに対してバヨネッタさんとゼラン仙者の目が光る。
「その話、聞かせて貰おうじゃない」
バヨネッタさん、圧が凄いっス。研究者目線で気になるのは分かりますけど。
「魂のプールさ」
「魂のプール? ですか?」
何それ? 新しいワードが出てきて、思わず一同で首を傾げてしまった。
「このカロエルの塔には、魂を魂のまま貯蔵しておく為の施設があるんだ。それが魂のプールだ」
そうなんですか? と思わず一同でさっきの反対側に首を傾げてしまった。
「お前ら、正規ルートが封鎖されているから、この階に来るまで、外階段で上ってきたんだろ?」
その通りです。と俺は首肯する。
「長いと思わなかったか?」
思いました。
「外階段の始まる第三階層と、この第五階層の間にある第四階層が魂のプールだ。あそこには、アンゲルスタ信奉者か、このカロエルの塔で死んだ人間の魂が、自動的に貯蔵されるように設計され、ドミニクは任意にその魂のプールから、死者の魂を復活させる事が可能なのさ」
成程、ドミニクの『蘇生』は、このカロエルの塔あっての代物なのか。
「ドミニクは将来的にこの地球上の人間全てを、永久生の世界に住まわせるつもりなんでしょう? この塔一つで、地球上の人間全てを賄えるんですか?」
「いや、この戦いが終われば、新たに塔を建立する事になるだろう。もしかしたらお前らの魂は、永遠の責苦ではなくこちらに使われるかもな」
どう言う事?
「魂が持つ魔力量やエネルギーと言うのは、それだけ膨大なのよ。ましてやここには魂のプールなんてものがあるらしいしね」
とバヨネッタさんの言。そうなのか。しかしそうなると、この地に生きる無辜の人々の魂も使われると言う事だ。それは許されるものじゃないだろう。
しかしカロエルの思惑が分からないな。何故魂のプールなんてものがあるこの塔を、この地に建てる事を許可したのか。いくらドミニクがプレイヤーキャラクターだとしても、優遇し過ぎじゃなかろうか。
「カロエルがこの地に隕石を落としたと言う事に、裏を感じるわね」
バヨネッタさんが邪推するのも分かる。ドミニクが上位存在のプレイヤーキャラクターだとしたら、その上位世界で運営である天使カロエルと接触し、意図的にこの地に隕石を落とし、アンゲルスタと言う国家の樹立を演出した。なんて事も考えてしまう。でもそれをして、天使カロエルに何の利があるんだ? いや、今それを語ってもただの妄想の域を出ないか。もう少し建設的な話をしよう。
「この塔、壊せないんですよね?」
バヨネッタさんが首肯する。う~ん、となると、ランドロックやらティカやらが復活している可能性が……、いや、ティカはともかくランドロックは肉体が消滅しているんだった。
「もしかして『複製』のスキル持ちがいるのか」
「それか『復元』でしょうね。魂を自由に出来るのなら、魂から肉体を『復元』する事も可能でしょうから」
とバヨネッタさん。それに対してジェランが鷹揚に頷いてみせる。どうやらバヨネッタさんの方が当たりらしい。
「これは、上階に行ったら、今までの敵が全員集合しているパターンですかね?」
「…………」
皆して黙らないで。はあ、気が重くなる。ドミニクだけでも相手するの面倒臭そうなのに、倒したそばから復活する軍隊を相手にするとか、考えただけで辟易するな。
敵ながらジェランの身の心配をしてしまった。
「どうせお前らはここまでだ。ドミニクに勝つ事は無理だろう。お前らが負ければ俺たちの世界が樹立し、負けたお前らは永久生の世界で永遠の責苦を受け続けるのだ」
それはそうなる……のか?
「今更ながらドミニクが俺たちを『蘇生』させるってところはピンと来ないんですよねえ。アンゲルスタであれば、何かしらドミニクとの繋がりがあるのは理解出来ますけど、俺たちは現在は敵で、関係性としては対岸って感じですしね。永久生の世界になっているならともかく、今現在の俺たちは、死んだらそこまでなのでは?」
からくりが分からん。
「そうね。そもそも、生物は物質的な肉体だけで存在しているのではなく、魂と言うものが存在しているわ。生物の魂は、肉体が死ぬと朽ち果てて地に還るように、その魂も昇華して天に還ると言われているの」
説明をし始めたのはバヨネッタさんだ。魂ねえ。人は死ぬと二十一グラム軽くなるそうだ。それが魂の重さだと何かで見た記憶がある。
「つまり天国に行くって話ですか?」
「違うわ」
違うんだ。
「肉体が地に還るようにと言ったでしょう? 天に昇って世界に溶けて、その一部となるのよ。しかも肉体が朽ちるより速い速度でね」
そう言う感じなのか。
「それだと、益々『蘇生』が難しそうですね」
俺の言に首肯するバヨネッタさん。魂は魂として、百年とか千年とかそのままなのかと思っていたけど、肉体より先に魂が消えるのか。
「早ければ一日もすれば魂なんて残っていないわ」
そんなに早いのか。バヨネッタさんやゼラン仙者が、死者蘇生は無理だと言っていた理由がこれか。
「じゃあ、それこそドミニクはどうやって死者を蘇らせているんでしょう?」
「可能性としては、人造魂を死体に入れて、生き返ったように見せ掛けている場合ね」
「そんな事してもすぐバレるんじゃないですか?」
「それが意外とバレないのよ。記憶や性質は確かに魂や外界の影響を受けて、肉体から発露するものだけれど、結果としてその影響を受けた肉体に固着するのよ」
魂がハードで肉体がソフトなのか。俺がイメージしたのはレコードだ。魂は録音の出来るレコードプレイヤーで、肉体はレコード盤。外界からの刺激は魂と言う針によって記憶や性質が肉体に刻まれ、レコードプレイヤーが駄目になっても、別の人造魂でも再生可能なのだ。
「つまり良く出来た人造魂であれば、周囲にバレずに生前の人間と変わらない生活を送る事も可能だと?」
首肯するバヨネッタさん。ゼラン仙者を見ても、どうやらその線でドミニクを疑っているように見える。
「どうやら面白い話をしているみたいだが、ハズレだ」
ジェランが呆れたような視線でこちらを見ていた。
「ハズレですって? あなたにそれが言い切れるの?」
バヨネッタさんは持論を否定されて、少し感情的に反論したが、対するジェランはいやらしく口角を上げる。
「人造魂なんて面白そうな研究に、ボクが一枚噛まずに外から眺めているだけだと思うかい?」
成程、説得力が違う。この男に秘密にしてドミニクが人造魂を使っているとも考えられるが、だったらそもそも『搾取』なんてスキルを授けて、こんなところで非人道的な研究をさせている理由も謎になってくるな。
「じゃああなたは、ドミニクがどうやって死者を蘇らせているのか、しっかり説明出来るんですね?」
俺の問いにジェランは鷹揚に首肯した。それに対してバヨネッタさんとゼラン仙者の目が光る。
「その話、聞かせて貰おうじゃない」
バヨネッタさん、圧が凄いっス。研究者目線で気になるのは分かりますけど。
「魂のプールさ」
「魂のプール? ですか?」
何それ? 新しいワードが出てきて、思わず一同で首を傾げてしまった。
「このカロエルの塔には、魂を魂のまま貯蔵しておく為の施設があるんだ。それが魂のプールだ」
そうなんですか? と思わず一同でさっきの反対側に首を傾げてしまった。
「お前ら、正規ルートが封鎖されているから、この階に来るまで、外階段で上ってきたんだろ?」
その通りです。と俺は首肯する。
「長いと思わなかったか?」
思いました。
「外階段の始まる第三階層と、この第五階層の間にある第四階層が魂のプールだ。あそこには、アンゲルスタ信奉者か、このカロエルの塔で死んだ人間の魂が、自動的に貯蔵されるように設計され、ドミニクは任意にその魂のプールから、死者の魂を復活させる事が可能なのさ」
成程、ドミニクの『蘇生』は、このカロエルの塔あっての代物なのか。
「ドミニクは将来的にこの地球上の人間全てを、永久生の世界に住まわせるつもりなんでしょう? この塔一つで、地球上の人間全てを賄えるんですか?」
「いや、この戦いが終われば、新たに塔を建立する事になるだろう。もしかしたらお前らの魂は、永遠の責苦ではなくこちらに使われるかもな」
どう言う事?
「魂が持つ魔力量やエネルギーと言うのは、それだけ膨大なのよ。ましてやここには魂のプールなんてものがあるらしいしね」
とバヨネッタさんの言。そうなのか。しかしそうなると、この地に生きる無辜の人々の魂も使われると言う事だ。それは許されるものじゃないだろう。
しかしカロエルの思惑が分からないな。何故魂のプールなんてものがあるこの塔を、この地に建てる事を許可したのか。いくらドミニクがプレイヤーキャラクターだとしても、優遇し過ぎじゃなかろうか。
「カロエルがこの地に隕石を落としたと言う事に、裏を感じるわね」
バヨネッタさんが邪推するのも分かる。ドミニクが上位存在のプレイヤーキャラクターだとしたら、その上位世界で運営である天使カロエルと接触し、意図的にこの地に隕石を落とし、アンゲルスタと言う国家の樹立を演出した。なんて事も考えてしまう。でもそれをして、天使カロエルに何の利があるんだ? いや、今それを語ってもただの妄想の域を出ないか。もう少し建設的な話をしよう。
「この塔、壊せないんですよね?」
バヨネッタさんが首肯する。う~ん、となると、ランドロックやらティカやらが復活している可能性が……、いや、ティカはともかくランドロックは肉体が消滅しているんだった。
「もしかして『複製』のスキル持ちがいるのか」
「それか『復元』でしょうね。魂を自由に出来るのなら、魂から肉体を『復元』する事も可能でしょうから」
とバヨネッタさん。それに対してジェランが鷹揚に頷いてみせる。どうやらバヨネッタさんの方が当たりらしい。
「これは、上階に行ったら、今までの敵が全員集合しているパターンですかね?」
「…………」
皆して黙らないで。はあ、気が重くなる。ドミニクだけでも相手するの面倒臭そうなのに、倒したそばから復活する軍隊を相手にするとか、考えただけで辟易するな。
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